小児ぜん息Q&A
環境再生保全機構(旧公健協会)では、小児ぜん息について、「お母さんのためのぜん息Q&A改訂検討委員会」(座長:西牟田敏之=にしむたとしゆき=国立療養所下志津病院院長)を設け、平成12年3月に改訂いたしました。ここで紹介するQ&Aは、この改訂検討委員会の検討結果を踏まえて掲載しています。なお、小児ぜん息の基礎知識もぜひご覧ください。
- ぜん息の仕組みについて
- 発作について
- ぜん息発作ではどのような症状が認められますか?
- ぜん息発作の程度は、どのように見極めるのでしょうか?
- ぜん息発作の程度をピークフローメーターで表すのはどうしてですか?
- ぜん息発作がひどくなると、どのような状態になるのでしょうか?
- 夜中にこどもがゼーゼーしながら眠っていますが、起こして薬を飲ませたほうがよいのでしょうか。
そのままそっとしておいたほうがよいでのしょうか? - 発作が起きた時、頓服薬を飲ませてから病院へ連れて行くほうがよいのでしょうか、処置をするのだから飲ませないで行くほうがよいのか迷うのですが?
- 発作が起きた時、はくことが多いのですが、薬を飲んではいてしまった時は、どうしたらよいでしょうか?
- 気道過敏性について
ぜん息の仕組みについて
ぜん息の病気の仕組みはどのようになっていますか?
気管支の周囲は平滑筋に取り囲まれ、その内側を粘膜が覆っていて、さらに内側が空気の通る管になっています。発作が起こると平滑筋が収縮し、粘膜もむくむので気管支の内腔がせまくなり、さらに粘膜から分泌されたタンが内腔をふさぐため、空気の出入りが悪くなり、呼吸が苦しくなります。したがって、発作が起こった時には気管支を広げる薬(気管支拡張薬)が用いられます。
最近では、ぜん息はアレルギー反応によって起こる気管支の炎症と考えられ、発作のない時でも炎症がくすぶっていることがわかってきました。しばしば発作が起こる人では、いったん発作が治まったように思える時でも気管支の炎症が改善していないので、常に発作が起こりやすい状態にあります。このような場合には、原因となるアレルギーの原因物質を避けたり、アレルギー炎症を治める治療薬を継続したり、運動鍛練を取り入れて改善をはかることが大切です。
ぜん息の重症度はどのように判定するのですか?
現在の症状に合わせて、的確な発作予防治療を行うために、最近の発作の起こり具合によって重症度を判定することになりました。年に数回軽い発作が起こる程度のものを間欠型といい、月のうち、何回も症状があるものを持続型といいます。持続型は、月に2、3回症状がある程度の軽症持続型から、毎日せきやゼーゼーがあり、週に1〜2回強い発作になって日常生活が障害されるような重症持続型まであります。間欠型は軽症、軽症持続型は軽症から中等症、中等症持続型は中等症、重症持続型は重症と考えてよいでしょう。
治療前の臨床症状に基づく発作型分類と治療ステップ
表に示したように、発作型が判断されると、その程度によって治療ステップが提示されていて長期管理薬が決まります。長期管理薬によって症状がコントロールされると、発作型が軽くなったと思いがちですが、実際には薬によって症状が抑えられているので、重症度は今の治療ステップに相当する発作型ということになります。例えば、中等症持続型の治療ステップ3の薬で症状が起こらなくなっていても、重症度は治療ステップに相当する中等症持続型と判断します。発作型 症状ならびに頻度 治療ステップ 間欠型 ・年に数回、季節性に咳嗽、軽度ぜん鳴が出現する
・時に呼吸困難を伴うこともあるが、β2刺激薬の頓用で短期間で症状は改善し持続しないステップ1 軽症持続型 ・咳嗽、軽度ぜん鳴が1回/月以上、1回/週未満
・時に呼吸困難を伴うが持続は短く、日常生活が障害されることは少ないステップ2 中等症持続型 ・咳嗽、軽度ぜん鳴が1回/週以上、毎日は持続しない
・時に中・大発作となり日常生活が障害されることがあるステップ3 重症持続型1 ・咳嗽、軽度ぜん鳴が毎日持続する
・週に1〜2回、中・大発作となり日常生活や睡眠が障害されるステップ4-1 重症持続型2 ・重症持続型1に相当する治療を行っていても症状が持続する
・しばしば夜間の中・大発作で時間外受診し、入退院を繰り返し、日常生活が制限されるステップ4-2 (日本小児アレルギー学会作成「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2002」より)
発作について
ぜん息発作ではどのような症状が認められますか?
アレルギー性鼻炎を合併している人では、ぜん息発作の前に鼻汁、くしゃみ、鼻づまりなどの鼻炎症状から始まることがあります。多くは、せきから始まり、のどから胸の上のほうに痛いような息苦しいような感じがして、息を速くはく時に、ヒューとかゼーという音を意識するようになります。
発作が強くなれば、タンがらみのせきが目立つようになり、ぜん鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)が周囲の人にも聞こえるようになり、それに伴って陥没呼吸がはっきりしてきます。年長児では肩呼吸をするようになり、発作がもっと強くなれば、苦しくて横になっていられないので、座った姿勢になります(起坐呼吸)。発作程度の見極めについては、次の「ぜん息発作の程度は、どのように見極めるのでしょうか?」の答えを参照してください。
ぜん息発作の程度は、どのように見極めるのでしょうか?
ぜん息発作は、その程度によって小発作、中発作、大発作に分かれますが、大発作がさらに進むと、呼吸がとてもしづらくなってゼーゼー、ヒューヒューは小さくなり、意識が低下するなど生命が危険な状態になります。この状態を呼吸不全といいます。発作の程度は、下表のように呼吸の状態、呼吸困難感、生活の状態、意識の状態を参考に判定しますが、すべてがそろう必要はありません。家庭ではぜん鳴の大きさ、陥没呼吸の程度、起坐呼吸の有無、呼吸困難感と生活の状態が主要な観察点になります。乳幼児では呼吸数の増加、ピークフロー(PEF)が吹ける年齢であればPEFの低下が、客観的な指標として参考になります。(「ぜん息発作の程度をピークフローメーターで表すのはどうしてですか?」参照)
発作程度の判定基準(※1)小発作 中発作 大発作 呼吸不全 呼吸の状態 ぜん鳴 軽度 明らか 著明 減少または消失 陥没呼吸 なし〜軽度 明らか 著明 著明 呼気延長 なし あり 明らか(※2) 著明 起座呼吸 なし 横になれる あり あり チアノーゼ なし なし あり 顕著 呼吸数 軽度増加 増加 増加 不定 覚醒時における小児の正常呼吸数の目安(毎分)
〜2か月:<60 2〜12か月:<50
1〜5歳:<40 6〜8歳:<30呼吸困難感 安静時 なし あり 著明 著明 歩行時 軽度 著明 歩行困難 歩行不能 生活の状態 会話 普通 やや困難 とぎれとぎれ 不能 食事 やや低下 困難 不能 不能 睡眠 眠れる 時々目を覚ます 障害される 障害される 意識障害 興奮状況 正 やや興奮 興奮 錯乱 意識低下 なし なし ややあり あり PEF
(ピークフロー値)吸入前 >60% 30〜60% <30% 測定不能 吸入後 >80% 50〜80% <50% 測定不能 Spo2(※3) 大気中 ≧96% 92〜95% ≦91% <91% Paco2(※4) <41mmHg <41mmHg 41〜60mmHg >60mmHg ※1 判定のためにいくつかのパラメータがあるが、全部を満足する必要はない。
※2 多呼吸の時には判定しにくいが、大発作時には呼気相は吸気相の2倍以上延長している。
※3 パルスオキシメーターを使い測定した動脈血の酸素飽和度。血液中の酸素を調べる。
※4 動脈血中の炭酸ガスの濃度。上昇すると呼吸が困難になる。注)発作程度が強くなると、乳児では肩呼吸ではなくシーソー呼吸を呈するようになる。呼気、吸気時に胸部と腹部の膨らみと陥没がシーソーのように逆の動きになるが、意識的に腹式呼吸を行っている場合はこれに該当しない。
ぜん息発作の程度をピークフローメーターで表すのはどうしてですか?
熱があれば体温計で測定して39℃と表すように、呼吸状態をピークフローメーターで測定した値で表すことができます。呼吸機能を詳しく測定するには病院にある機械が必要ですが、ピークフローメーターは簡単な器具で、また、発作の状態をよく反映するので、家庭で用いるのに適しています。
ピークフローの測定は、慣れれば5歳くらいから可能ですが、吹き方がうまくないと値が低くなったり、また、吹き込み口を舌でふさいで、吹く圧力が高まった時に舌を外して一気に吹く(トゥーという音がする)と高い値が出てしまうので、正しく吹くことが必要です。
ピークフロー値は、発作の時に低下します。身長予測式や、具合のよい時期の平均値から求めた自己最良値を基準にして、80〜60%の時は小発作、60〜30%の時は中発作、30%以下の時は大発作域にあると判断し、それぞれの発作状態にあった対処をすることができます。
ぜん息発作がひどくなると、どのような状態になるのでしょうか?
ぜん息発作がひどくなると、気道が極端にせまくなり、空気中の酸素が十分吸えなくなり、肺の中の炭酸ガスをはき出すことができません。次のような状態になったら非常に危険で、救急車で病院に向かってください。- 苦しい状態のままで、急に呼吸音やぜん鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)が弱くなる。呼吸が楽になって呼吸音やぜん鳴が軽くなった状態とは違い、窒息に近い状態である。
- 唇だけでなく全身にチアノーゼ(青紫色)を認める。
- 興奮状態になったり、逆に意識が落ちて眠りがちになったり、呼びかけに応えず、痛みに反応しなくなる。
- 意識障害が進めば、尿や便を漏らすようになる。
夜中にこどもがゼーゼーしながら眠っていますが、起こして薬を飲ませたほうがよいのでしょうか。そのままそっとしておいたほうがよいでのしょうか?
ゼーゼーしていても、眠っていることができる時にはわざわざ起こさなくてもよいと思います。発作が強くなれば目覚めて苦しいと訴えるようになりますので、目が覚めてから頓服薬を飲ませても遅くはありません。ゼーゼーしていても程度が軽ければ、そのまま朝まで目覚めずに眠れると思います。ただ、毎日のように夜間にゼーゼーするようでしたら就寝前に予防的に気管支拡張薬を服用したり、最近は貼付薬(皮膚に貼る薬)で、症状を抑えることもできます。なお、このような症状が長引く時は、コントロールが不十分と考えられ、予防治療を強化する必要がありますので、主治医に相談してください。
発作が起きた時、頓服薬を飲ませてから病院へ連れて行くほうがよいのでしょうか、処置をするのだから飲ませないで行くほうがよいのか迷うのですが?
どちらでもよいと思いますが、本人が苦しそうでしたら頓服薬を飲ませたり、自宅に吸入器がある場合は、発作止めを吸入してから病院に連れてきてください。そして、来院時にどのような薬を使ったかを医師、看護師に話してください。
発作が起きた時、はくことが多いのですが、薬を飲んではいてしまった時は、どうしたらよいでしょうか?
まず、薬を飲んで30分以上たっていれば薬の追加はいりません。30分以内で、はいたものの中に薬がそのままの状態で確認できれば、薬をもう一度飲ませます。薬の確認ができない場合は、改めて薬を飲ませないで、医療機関で吸入等の適切な治療を受けて発作を改善させてください。
気道過敏性について
気道過敏性とは何ですか。重症度と関係がありますか?
ぜん息児はチリダニ、カビ、猫上皮、花粉などのアレルギーを引き起こす原因となる抗原(アレルゲン)以外のさまざまな刺激にも反応し、ぜん息症状を引き起こします。例えばたばこ、線香、花火の煙、冷たく乾いた空気、急激な運動、健康な人には影響しないような低濃度の化学物質刺激(ヒスタミン、メサコリン、アセチルコリン等)がよく知られています。
このように、気管支の反応性が高まった状態を気道過敏性といいます。重症の人ほど気道過敏性が高まっており、弱い刺激でも発作になりやすいことになります。
気道過敏性の測定法にはどのような検査があるのでしょうか?
気道過敏性の検査には、運動負荷試験と吸入誘発試験があります。いずれも前後で肺機能検査を実施するもので、肺機能検査ができない発作状態や乳幼児には実施が困難です。
1.運動負荷試験
トレッドミルやエルゴメーターで一定量の運動を負荷した前後で、スパイロメーターを用いて肺機能を測定し、1秒量やピークフローが前値より一定以上の低下を示した時に気道過敏性陽性とします。自由走(一定の距離を全力疾走)の前後でも同様に測定して判定できます。2.吸入誘発試験
一定の濃度で希釈したヒスタミン、メサコリン、アセチルコリンを非常に低い濃度から次第に濃度を高めて吸入していき、肺機能測定で1秒量やピークフローが前値の20%以上の低下をもたらした濃度を気道過敏性の吸入閾値とする標準法があります。同様に希釈した薬剤を時間ごとに吸入させ、呼吸抵抗を連続的に記録するオッシレーション法(アストグラフ)があります。いずれも気道過敏性を定量的に表現できます。
気道過敏性を改善させる方法はありますか?
ぜん息児が発作を起こした後の1〜2週間は気道過敏の状態が悪化し、煙や冷気や運動などの刺激に反応しやすくなり、発作を起こしやすい状態が続きます。長い間、発作のない状態を維持することによって、気道過敏性の改善がもたらされます。次の事柄に気をつけましょう。- 発作を起こさないように、環境を整備してアレルゲンとの接触を少なくすること。
- 薬によって発作をコントロールすること。
- 積極的に鍛練を実施することで、自律神経のバランスを改善し、さまざまな刺激への反応を低下させ、運動による発作を起こしにくくすること。
※「ぜん息などの情報館」では、一部固有名詞に関して「ぜん息」、一般名称は喘息(ぜんそく)と表記しています。
