イベント情報

平成12年11月8日 福岡市

とき

平成12年11月8日(水)


会場

アクロス福岡イベントホール

ぜん息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などの炎症に悩まされている人は日本中で約4000万人。今や国民病とも呼ばれるが、その原因や治療法など、私たちはわからない部分もまだまだ多い。長年にわたり、アレルギーに関する知識の普及と治療法の研究に力を注いでいる石川哮先生の、講演の一部を紹介する。

平成12年11月8日 福岡市

何らかのアレルギー症状をもっている人は今や3人に1人

日本で現在、何らかのアレルギー症状をもっている人はだいたい全人口の3分の1。その数の多さから国民病とも言われています。しかし、アレルギーが本当はどういうものかおわかりでなかったり、誤解をされている方もいらっしゃいます。

アレルギーは免疫反応

コショウが鼻に入るとくしゃみが出るのは、生体が防御するための異物を体外に出そうとするからです。これは、三叉神経が直接コショウという刺激物質によって刺激され、起こる単純な反応です。一方、花粉やダニなどの抗原(アレルギーの原因物質)が入ってきた場合には、それに対抗するために体内で免疫反応が起こり、抗体が作られます。はしかやおたふくかぜなどの予防注射が、この免疫反応を利用したものであることはご存じでしょう。

アレルギー症状とは、この免疫反応の一種、つまり本来は体を防御しようとして起こっているものなのです。くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状は、身体に有害なものを入れないようにする体の働きです。問題は、花粉やダニといったそれほど有害ではないものに対して過剰に反応してしまうことにあります。10人に 2~3人ほどの割合で、それらのものに過敏に反応してIgE(アイ・ジー・イー)という抗体を作りやすい体質の人がおり、このような体質のことをアトピー素因と呼んでいます。


文明の発展とともに増加

アレルギーにはまた、文明病という側面もあります。文明の発達につれて、日本ではアレルギーに悩む人の数は増えてきました。例えばアルミサッシの家は、人間だけでなく抗原であるダニにとっても快適な環境です。家の構造が外気とうまく遮断することができると、その温度・湿度がダニの増殖を誘い、その結果としてダニアレルギーが増えることにもなります。今の季節なら暖房器具の温風がホコリを吹き上げたり、こたつの中がダニの温床となっていることもあります。またペットを飼う人が増えると、その毛やフケが抗原となって鼻炎やぜん息を起こしたり、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させることもあります。

なお、近ごろ問題になっているシックハウス症候群というものがありますが、これはシックハウス症候群という全体で一つの疾患なのではありません。原因物質それぞれについてよく調べる必要があり、はっきりしたことはまだわかっていませんが、このなかにアレルギーによって起こるものもあります。いずれにしろこれも、文明の発展によるものと言えましょう。


信頼できる医師に相談を

アレルギー治療の第一歩は、病院で検査をして原因物質(アレルゲン)を突き止めたら、その抗原をなるべく遠ざけることです。しかし抗原がスギ花粉だとしても、外出しないわけにはいかない人も大勢いるでしょう。ペットが原因でも、だからといってペットを捨てることはできません。具体的にどうするかは、一人ひとりの場合についてよく考える必要があります。アレルギー治療ではいわゆるオーダーメードテラピーが非常に重要になってくるのです。

だからまず、医者と仲良くしてください(笑)。ぜん息のお子さんを病院に連れて行こうとしたら、それだけでお子さんが安心して症状が治まってしまった、という話はよくあります。アレルギーにはメンタルな部分の影響も大きいので、医師と患者さんの信頼関係はとても大切です。注射などで抗原を少量ずつ体内に入れていき、抗体を作りにくくする免疫療法という治療法がありますが、これは長期間続ける必要があるうえ、やり方によってはこわい部分もあります。また、ぜん息の治療には水泳療法が効果があることがわかっていますが、これも専門医の正しい指導のもとで行う必要があります。まずは信頼できるアレルギー専門医に相談をしてください。


社会全体で取り組むことが大切

アレルギー症状は、アトピーという遺伝的な素因と、抗原などの環境因子とが重なったときに起こります。ただし遺伝とはいっても、人によって背が高いとか顔が丸いというのと同じ程度のものですから、遺伝という言葉をそんなにこわがることはありません。

それよりも、例えばぜん息のお子さんをおもちなら、まめに部屋の掃除をする、じゅうたんをフローリングにかえる、食生活に気を配る、親御さんがたばこをやめるなど、してあげられることはたくさんあります。また、お子さんが発作を起こしやすい季節や時間帯がいつかを観察して、医師と相談をすることも親御さんの大切な役目です。

同時にこれは行政や研究機関、公健協会のような団体、アレルギーについて情報を報道するマスコミなど、社会全体が一緒に取り組むべき問題でもあります。アレルギーを環境問題のなかでとらえ、一人ひとりが考えていくという姿勢が大切です。

(平成13年1月31日付 朝日新聞・九州版より転載)

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