大気環境の情報館

ヤマト運輸株式会社

未来のまちづくりを視野に、より持続可能な輸送のあり方を追求。

地域に密着したネットワークを全国に保有し、「クロネコヤマト」のブランドで宅急便事業を展開するヤマト運輸。多くの車両を使って物流を担う企業の責務として、大気汚染や地球温暖化を防止するための様々な取り組みを積極的に推進しています。路面電車を使ったモーダルシフトや運転を「見える化」する車載システムの導入など、その先進的でユニークな取り組みは、業界を超えて注目されています。

できるだけ車両を「使わない」工夫。

――現在、何台の車両をお持ちですか?


お話を伺ったCSR推進部
環境推進課長の秋山佳子さん

約4万4千台です。それら車両からの大気汚染物質やCO2の排出量を削減するために、3つの戦略を立てて取り組んでいます。1つめは、できるだけ車両を「使わない」。2つめは、「使うならエコ」な車両。そして3つめは、徹底して「使い方」にこだわる戦略です。まず「使わない」戦略では、台車や新スリーター(リヤカー付き電動自転車)でのエコ集配の拡大に力を入れています。一部に軽自動車を使う以外は車両を全く使わず集配を行うサテライトセンターは、市街地や住宅密集地域を中心に出店が進み、すでに1,000店を超えました。また車両を使用する場合でも、荷物を載せた車両を路線バスのように決まったルート・時間で走らせ、各バス停ポイントに着いたら、そこからお届け先までは台車などで運ぶという「バス停方式」を推進するなど、エリアに応じて集配方法を工夫することで、車両台数の削減を図っています。

――2011年5月には京都で、路面電車を活用した宅急便の輸送も開始されました。


トラックの替わりに嵐電の車両
を活用して荷物を輸送。

京福電鉄様の路面電車「嵐電」の毎朝・夕に各1両を当社が貸し切り、西院車庫ら沿線の駅(嵐山駅と嵐電嵯峨駅など5駅)まで荷物を運んでいます。これまで荷物の仕分けターミナル間の輸送に鉄道を使うモーダルシフト(★1)はありましたが、ターミナルから営業所まではトラック輸送が一般的でした。ここを路面電車に切り替えるアイデア、「ミニモーダルシフト」とも言えるこの取り組みは、他社にはないものです。荷物が到着した駅からはもちろん、車両を使わず新スリーターや電気自動車で配達しています。京都は京都議定書が採択された地であり、世界に誇る観光地でもあります。できるだけ車両を走らせず、環境にやさしいまちづくりを推進していくには何ができるか、当社と京福電鉄様、そして京都市の三者が協力して実現した、まさにWin-Win-Winの環境事例だと自負しています。

★1 モーダルシフト:輸送・交通手段の転換を図ること。一般的には、トラックや航空機による貨物輸送を、より環境負荷の少ない鉄道や船舶に代替すること

環境にやさしい、電気自動車の導入。

――モーダルシフトは効果があるといっても、車両がゼロにならない限り、大気汚染や地球温暖化は進んでしまいます。

そうですね。そこで、2つめの「使うならエコ」という戦略を立てました。当社では、できるだけ車両を使わないことを追求する一方で、必要な車両についてはハイブリッド車などの低公害車へのシフトを進めています。2010年度で低公害車の全車両比は30.8%まで伸びました。また、営業所からの距離が近い地域では台車や新スリーターを使っていますが、400mから800m程度の範囲は低燃費でCO2、NOx、PM排出量の削減に効果的な軽自動車を積極的に活用しています。

――電気自動車の実証実験も実施されていますね。


実証走行試験車の電気自動車。
積載重量はガソリン車とほぼ同等。

2010年10月より東京・羽田地区、2011年1月より仙台市で三菱自動車様とともに軽商用電気自動車の集配実証走行試験を実施してきました。結果、宅配事業に軽商用電気自動車は対応できると判断し、同社の電気自動車「MINICAB-MiEV(ミニキャブ・ミーブ)」を100台発注しました。今後、羽田や京都など全国主要都市に導入を予定しています。この取り組みを追い風に、運送業界全体に環境にやさしい次世代型の車両が普及していくことを期待しています。

運転の「見える化」で安全とエコを強化。

――3つめの、徹底して「使い方」にこだわる、 とはどのような戦略ですか?

これはいわゆる、「エコドライブ」の推進です。当社ではセールスドライバー(SD)を対象に、エコドライブ研修や、安全指導長による定期的な添乗指導など、安全で環境にやさしい運転の指導に全力で取り組んでいます。これに加えて、2010年3月より、他社にはない画期的なシステムの導入を開始しました。それが、NEC様をパートナーに開発した、独自の車載システム「See-T Navi(シーティーナビ)」です。これは、今までアナログで確認していたSDの運転操作を「データ化=見える化」し、SDの安全運転・エコドライブを支援するものです。急発進や急ハンドル、バック回数など、その日のすべての運転操作がデータとして導き出されます。SD用ソフトには、運転日報の出力など日常業務のほか、車載機で収集したデータの閲覧機能が用意されています。

――毎日の運転操作がデータ化され、あなたは何回バックして、急発進が想定より何回多くて、などという行動がすべて記録に残るわけですね。


今後、集配車全車両にSee – T Naviを
搭載予定。危険エリアにさしかかると
音声アナウンスが流れる。

最終的には、点数が出てきて、その日の安全運転がランク付けされます。環境得点も出てきます。SDにとっては窮屈で恐ろしいもののように感じられるかもしれませんが、これは叱るための道具ではなく、90点ならすごいね、75点ならバック回数を減らせば改善できるね、などと褒めて伸ばす、運転を支援するための道具として導入を決定しました。これまで気づかなかった個人の小さな癖も見えてきて、より安全で環境にやさしい運転につながっています。また、従来は地図に書き込んでいた「安全集配ルートマップ」を電子化し、搭載しています。危険エリアや走行禁止エリアなどを営業所で事前に登録することができ、その箇所に車両がさしかかると注意を喚起する音声アナウンスが車内に流れます。このSee-T Naviは、大型車を除く全集配車両約3万2000台に順次搭載していきます。

――このような取り組みで、たとえばCO2排出量はどれだけ削減できているのでしょうか?

車両からのCO2排出量推移(ヤマト運輸)

宅急便1個当たりの原単位CO2排出量は着実に減少しており、2003年9月の「ヤマト運輸 地球温暖化防止目標」で掲げた2002年度比30%削減は、2010年度に無事達成することができました。荷物の量が増え、事業が拡大しているなか、原単位の排出量が減っている事実は、車両を使わない手法や低公害車の使用などの努力が確実に実を結んでいる証しだと考えています。

環境にやさしいまちづくりに参画したい。

――3つの戦略の他、子どもたちへの環境教育を出前授業で行う「クロネコヤマト環境教室」の実施など、数々のユニークな取り組みにチャレンジされています。今後、環境の視点で取り組んでいく試みは?

当社は2019年に創業100周年を迎えます。そのとき、「一番身近で一番愛される企業」であるために、先に述べた「嵐電」の事例のように、持続可能なまちづくりに参画していければと考えています。当社は地域密着型の企業です。当社の持っている全国を網羅するネットワーク、きめ細かなサービス、最先端の技術、愛情と責任感あふれる人材は、より環境にやさしい、そこで暮らす人々がわがまちを誇れるようなまちづくりに、もっとお役に立てるはずです。すでにお声をかけていただいているプロジェクトもいくつかあり、その数が将来さらに増えていくよう、私たちもどんどん新しいアイデアを出していくつもりです。


  • 会社名:ヤマト運輸株式会社(YAMATO TRANSPORT CO., LTD.)
  • 所在地:東京都中央区銀座
  • 事業内容:宅急便・クロネコメール便を中心とした一般消費者・企業向け小口貨物輸送サービス事業
  • HP:http://www.kuronekoyamato.co.jp/
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