大気環境の情報館

福岡県北九州市

環境未来都市が提案する 人が、自然が、輝くまちづくり。

2011年12月、北九州市は国家戦略プロジェクト「環境未来都市」構想でモデル都市に選ばれました。これまでにも「環境首都」を目指し、産学官民挙げて一歩先行く環境施策に意欲的に取り組んできた北九州市。地球に人にやさしい交通戦略やスマートコミュニティの実証、途上国への環境貢献といった同市の先進的な取り組みから、都市のあるべき未来像の一つが見えてきます。

環境、超高齢化対応、国際環境ビジネス復興支援

公害克服、ものづくり技術、環境国際協力を活かして。

――まず、「環境未来都市」構想とは?

国の新成長戦略に位置づけられた国家戦略プロジェクトの一つです。環境や超高齢化対応の問題で戦略的な取り組みを行うモデル都市を選定し、国が財政・制度面で支援することによって、世界に類のない成功事例を創出。それを国内外に普及展開することで、地域の活性化や国全体の持続可能な経済社会の実現を目指す取り組みです。昨年6月に募集があり、北九州市は「北九州市環境未来都市」と名付けたアイデアを提案しました。そして、北海道下川町や神奈川県横浜市、岩手県釜石市など他の10の地域とともに「環境未来都市」に選ばれたのです。

――どのようなアイデアを提案したのですか?

北九州市には、公害を克服した経験やものづくりの技術、環境国際協力の実績など多くの財産があります。それらを活用することで、子どもから高齢者まですべての世代が地域を中心とした絆で結ばれ、自分の役割を持って輝いているまちを目指すことが「北九州環境未来都市」のコンセプトです。これを実現するために、「環境」「超高齢化対応」「復興支援と国際環境ビジネス」の3分野で様々な取り組みを推進していきます。

市民参加型のスマートコミュニティを創造。

――中でも、スマートコミュニティ創造事業には注目が集まっていますね。

日本近代産業発祥の地である八幡東区東田地区の工業跡地(120ヘクタール)がスマートコミュニティ実証実験の場です。スマートコミュニティの核は、スマートグリッド(ITを活用して電力需給の最適化を図る電線網)です。地域内のすべての電力需要家(家庭やオフィスなど)に次世代の電力メーターであるスマートメーターを設置し、地域全体のエネルギー需給を把握しながら効率的に電力を利用してもらうなど、市民に自主的に取り組みに参加してもらう仕組みを構築しているのが特徴です。コジェネ発電や環境共生マンション、カーシェアリングなど数多くの環境施策をこの地区では実施しており、すでに標準地区比20%のCO2を削減しています。この地区での実証実験の成果を市全体に広げ、2050年にはCO2排出を市内で2005年比50%まで削減するのが目標です。


八幡東区東田地区のスマートコミュニティ構想では、地域節電所が電力需要家にエネルギーの最適配分を行っている。

公共交通機関の有効活用と次世代自動車の導入。

――大気汚染に関連する「交通」においては、どのような施策を展開していますか?

北九州市では、既存の公共交通機関を有効活用する施策を盛り込んだ「北九州市環境首都総合交通戦略」を平成20年12月に策定しました。これに基づき、レンタサイクルやカーシェアリングの普及、エコドライブの推進、低公害車の普及、パーク&ライド(最寄り駅までマイカー、そこからは公共交通機関を利用)の促進などを実践してきました。バス路線のない地区で住民と交通事業者、市が役割分担し、マイクロバスやジャンボタクシーなどを運行する「おでかけ交通事業」などにも取り組んでいます。今後は、主要な交通機関(筑豊電気鉄道や幹線バス路線など)の高機能化をはじめ、自転車利用環境のさらなる向上、学校・企業・住民に対し公共交通利用促進のため意識啓発を行うモビリティ・マネジメントの推進なども強化していきます。

――電気自動車など低公害車、次世代自動車の普及にも努めていますね。


電気自動車やプラグインハイブリッド自動車など
次世代自動車を積極的に公用車に導入している。

そうですね。北九州市自ら積極的に使用していく方向で、平成25年度までに次世代自動車を公用車に50台導入する予定です。さらに、地域住民の方々に自動車環境問題の現状や環境保全の大切さを知っていただくために、電気自動車の試乗などが体験できる「エコカーフェア」や、小学生を対象としたEV教室も開催しています。それと同時に、電気自動車の充電装置の整備も進めています。

技術や人材が行き交うまちへ。

――「環境未来都市」への重要な取り組みのひとつに、途上国への環境貢献が挙がっています。

北九州市の国際環境協力には30年以上の歴史があります。これまでも(財)北九州国際技術協力協会(KITA)と「アジア低炭素化センター」を核に、途上国技術者を受け入れる国際研修の実施や、経験豊かな技術者の現地派遣、国内外の関係機関と協働調査など、様々な取り組みを実施してきました。例えば、インドネシアのスラバヤ市での生ごみ堆肥化事業では、北九州市内の企業が開発した生ごみ堆肥化の技術を移転することで、生ごみの発生量が20%以上も削減されました。革新的な案件をもっと開拓するために、今後は技術移転のキーパーソンの育成にも力を入れていきます。国際研修のプログラムも増やし、さらに広い地域を対象に研修の受け入や専門家の派遣を推進していきます。国境を超えて、多様な人材、技術が活発に行き交うまちになればいいなと思っています。

――上下水道のインフラや技術を海外へ輸出する「水ビジネス」にも力を入れているそうですね。


プノンペンで現地の人々に配水処理技術の
技術指導を行う北九州市職員(左から2人目)。
(写真:北九州市水道局提供)

長年にわたる技術協力で、アジアを中心とする海外で高い信頼を築くことができました。その成果の一部が近年、ビジネスとしても花開いています。例えば、カンボジアの首都プノンペン市への技術協力では、現地に職員を延べ26人派遣し、水道施設を維持管理できる人材育成と技術協力を行った結果、水道施設の維持管理の質を判断する漏水率(浄水場から蛇口までの間に漏水する率)は72%から8%(2006年)へ劇的に改善されました。これは北九州市とほぼ同じレベルです。この成果は世界的に注目され、“プノンペンの奇跡”と言われています。現在、ベトナムのハイフォン市や中国の大連市などでも水ビジネスが進行しています。

――環境未来都市の取り組みの成果もビジネスとして海外へ?

スマートコミュニティ創造事業の実証で生まれた製品やエネルギーマネジメントシステムをパッケージ化するなどして、アジアを中心とする海外へビジネス展開していくことを考えています。民間企業の持つ優秀な技術力と北九州市の持つ事業管理ノウハウをパッケージ化し、海外ネットワークを活用して官民一体となって、環境ビジネスを推進していきます。また、エネルギーマネジメントやリサイクルなどのノウハウは、東日本大震災の被災地の復興にも貢献できると考えており、すでに岩手県釜石市が八幡東区東田地区の実証実験をもとにスマートコミュニティの導入を検討しています。

取り組み成功の鍵は「地域の力」。

――環境未来都市の実現には何が必要だと考えていますか?

それぞれの取り組みが「自立的」に展開していくことではないでしょうか。それを可能にするのが「地域の力」です。例えば、「地域が一体となって元気な高齢者と健やかな子どもをつくる」→「高齢者や子どもを含めた多世代が一体となって、豊かな環境をつくる」→「その成功経験をもとに、コミュニティビジネスにつなげる」→「コミュニティビジネスでの利益を地域づくりに活用する」→「地域の力が強まり、さらによい地域づくりが進む」→「地域が一体となって元気な高齢者と健やかな子どもをつくる」というサイクルが描ければ、それぞれの取り組みは自ずと自立的に発展していくと考えています。すでに「まちの森プロジェクト(環境首都100万本植樹)」など、地域の力を活用した取り組みはいくつも生まれています。環境未来都市への様々な取り組みが、関わる人も含め相互に統合されることで、都市の魅力や価値が高まり、北九州市が「誰もが暮らしたいまち」、「誰もが活力あるまち」に進化していくことを目指しています。


2022年までに100万本の緑を増やす「まちの森プロジェクト(環境首都100万本植樹)」は、
世代を超えた「地域の力」が活かされている取り組みのひとつ。

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