大気環境の情報館

自然通風型の電気集塵システムについて

財団法人 日本品質保証機構


研究目的

大都市域の交差点や幹線道路沿道における浮遊粒子状物質(SPM)による大気汚染の状況は依然深刻な状況にあり、特にディーゼル排気粒子(DEP)については発ガン性、気管支ぜん息等の健康影響が懸念され、対策強化が急務となっている。SPM・DEP問題への対策は、広域的な観点で行われる自動車交通対策及び自動車単体からの排出制御が基本と考えられるが、局地的で高濃度な大気汚染状況を早急に改善するためには、これらに加え、各地域の局地汚染に対応した沿道排ガス浄化装置による排ガス浄化対策の導入の検討が必要である。

本調査は、大都市の交差点や幹線道路沿道においてDEPを除去するための沿道排ガス浄化技術の有効性を評価し、新たな装置の開発に向けた適用性について検討し、大都市域におけるSPM・DEP対策の効果的な推進に資する事を目的とする。

平成15年度の研究目標

試作沿道浄化装置の改良性能向上、浄化装置性能の実フィールド評価及び対策効果評価シミュレーションの実施

研究成果

  1. 試作浄化装置の性能向上及び試験
    1. (1)流入風速約1m/sの条件において、集じん効率約80%を確認した。
    2. (2)試験装置に吸収剤を付加することによって、試験装置内でNO2濃度が増加しないことを確認した。
  2. 浄化装置性能のフィールドにおける評価試験
    1. (1)自然通風条件において、周囲風速の約40%の風を試験装置内に流入していることを確認した。
    2. (2)流入風速約1m/sの自然通風条件において、集じん効率70%以上を確認した。
    3. (3)試験装置にハニカム式吸収剤を付加することによって、試験装置近傍のNO2濃度が周囲濃度よりも増加しないことを確認した。
    4. (4)ナノ粒子に対しても約50~80%以上の集じん効率が得られていることを確認した。
    5. (5)試験装置循環水の成分分析結果からも、SPMが除去されていることを確認した。
    6. (6)循環水の有害物質は排水基準値(川崎市)以下であることを確認した。
  3. 浄化装置による対策効果の評価シミュレーション
    1. (1)設定した条件の範囲では、浄化装置を中央分離帯及び風下側歩道に設置することにより、歩道からの距離が10m~50mの範囲において、全発生源に対して4~30%程度の除去効果が見込めることを確認した。
    2. (2)除去効果の主たる範囲は、風向によらず浄化装置配置延長程度と思われる。
    3. (3)除去率70%の浄化装置は除去率60%の装置に対して、1.2倍程度の効果となっている。つまり、装置の除去率を1.2倍上げた場合、風上側の発生源に対して1.2倍程度の除去効果が期待できる。
    4. (4)中央分離帯の除去装置の2段重ねは、1段の場合のほぼ倍の効果が期待できる。

評価結果

当初の研究目標は達成されつつあるとされ、装置が実際に用いられる多様な通風条件下での検討、通過自動車の風圧の利用等による集塵効率の向上、他の研究成果の活用によるNOxとの同時低減の可能性の検討等について指摘があった。

また、ナノ粒子も除去されていることに注目し、更に観測データを蓄積していただきたい等の意見も出された。

対処方針

本調査研究では、典型的な条件下で浄化装置の仕様を検討し、全体的な性能についてはフィールド試験で評価している。したがって、多様な通風条件下での検討や通過自動車の風圧利用等の検討は、フィールド試験で得られる様々なデータを条件別に解析しながら進めることを考えている。NOxとの同時低減は、通風性とNOx除去率のバランスを見ながら、様々な材料を試す予定である。また、今後も観測データの蓄積に努めていきたいと考えている。

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