大気環境の情報館

土壌を用いた大気浄化システムについて

大阪府


研究目的

大阪府では、2010年度までに二酸化窒素(NO2)と浮遊粒子状物質(SPM)の大気環境基準を達成することを目標とした「大阪府自動車排出窒素酸化物及び自動車排出粒子状物質総量削減計画」を2003年7月に策定し、できる限り早期に環境基準の達成を図り、局地汚染地域を解消することとしている。

このような局地汚染地域においては、交通量や道路周辺状況など地域の実情に応じた効果的な沿道環境改善方策を導入する必要がある。

そこで、1994年度に大阪中央環状線内で「土壌を用いた大気浄化システム」の沿道実験プラントを設置して基礎的な調査を行い、1997年2月には、実用規模施設を道路沿道の緑地帯とトンネル換気塔敷地内に設置し、窒素酸化物(NOx)やディーゼル排気微粒子(DEP)等の粒子状物質(PM)の浄化能力等に関する実証調査を進めてきた。

本調査は、これまでの研究成果を踏まえ、長期にわたる運用方法について検討するとともに、「土壌を用いた大気浄化システム」の実用性について総合評価を行い、新たな局地汚染対策技術として確立することで、自動車交通の集中する交差点などの局地汚染地域対策の推進に資するものである。

平成15年度の研究目標

SPM等除去効果調査、浄化性能の持続性等の調査及びシステムの長期耐久性等の調査

研究成果

  1. システムの性能評価
    これまでの10年間の調査研究の結果、以下のとおり成果が得られ、土壌を用いた大気浄化システムは、局地汚染対策技術として有効であることが明らかとなった。
    1. (1)適切な維持管理を行うことで、長期的に自動車排出ガス中の大気汚染物質を高効率で処理できた。
      1. 1)窒素酸化物(NOx)については、処理前ガスをオゾン処理して全て二酸化窒素に酸化し、土壌中の水分を保持することで、低濃度の沿道排出ガスから高濃度のトンネル排出ガスまで、高い除去効果を長期間維持することができた。また、沿道型については、冬季の昼間のみ等の間欠運転を行っても、高い除去効果を維持できた。
      2. 2)粒子状物質(PM)については、土壌のフィルター構造により、低濃度の沿道排出ガスから高濃度のトンネル排出ガスまで、高い除去効果を長期間維持することができた。また、どの粒径でも除去率が高く、近年問題視されている微小粒子についても高い除去効果があった。
    2. (2)7年間運用しても窒素化合物が土壌に蓄積しなかったことから、土壌の入れ替えを行う必要がなかった。
      1. 1)硝酸性窒素や亜硝酸性窒素の過度の蓄積が無く、高い除去効果を維持できた。
      2. 2)空気の通り道ができたり、土壌水分が低下した場合、一時的に窒素化合物が蓄積する場合があったが、土壌を撹拌して土壌水分を維持することで窒素酸化物の除去性能を回復できた。
    3. (3)土壌層には植栽することで、人の立ち入りを制限し、部分的な圧密の変動や空気の通り道の発生を抑えることができた他、蓄積した窒素化合物も吸収できることから、高い除去効果を7年間維持することができた。
    4. (4)費用対浄化効果では、トンネル排出ガスのような高濃度ガスを処理するほうが高くなるが、低濃度の沿道排出ガスでも、高濃度の季節・時間帯を選択することで高くできる。
    5. (5)オゾン発生器等の施設維持費や電気代等の維持管理費が高いことから、効率的な維持管理手法を検討する必要がある。
  2. システムの運転管理手法
    大気汚染物質の高い除去効果を維持するためには、適切な運転管理が不可欠であることから、これまでの調査結果を踏まえ、運転管理指針を作成した。

評価結果

窒素酸化物のみならず浮遊粒子状物質に対しても削減効果が確認されたこと、運用方法を含め実用性がある程度確認できたことなどは、評価できる。

一方、実験方法とその整理の仕方については、気象条件やNOx濃度条件を考慮するなどの点で工夫が不足していた、土壌層を形成するための用地の確保、オゾンの使用に関する条件については十分検討する必要がある、今後の展開として土壌の水分保持やオゾン発生施設管理等のマニュアルの作成をしてほしいとの意見が出された。

対処方針

ご指摘の点については、NOx除去効果を維持するためには重要であるため、運転管理マニュアル(2003年度報告書:5.2システムの運転管理手法、資料53~57)として、一般的な管理方法については取りまとめを行った。しかし、詳細な土壌水分、オゾン濃度等の管理は、システムを設置する条件により異なるため、他機関で実施されている実験結果も踏まえ各種条件に対応したマニュアルを作成すれば、より適切な運転管理が実施できるものと考えている。

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