大気環境の情報館

大気環境基準

大気汚染に関する環境基準は、環境基本法第16条で「人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準」として設定されたもので、工場や事業所に対する排出基準とは異なり、環境汚染の改善目標値です。

従来型の大気汚染物質としては、二酸化硫黄、二酸化窒素、一酸化炭素、浮遊粒子状物質光化学オキシダントの5物質について基準が設定されています。

大気汚染物質の大気環境基準

物質 環境上の条件 測定方法
二酸化硫黄(SO2) 1時間値の1日平均値が0.04ppm以下であり、かつ、1時間値が0.1ppm以下であること。 溶液導電率法又は紫外線蛍光法
一酸化炭素(CO) 1時間値の1日平均値が10ppm以下であり、かつ、1時間値の8時間平均値が20ppm以下であること。 非分散型赤外分析計を用いる方法
浮遊粒子状物質(SPM) 1時間値の1日平均値が0.10mg/m3以下であり、かつ、1時間値が0.20mg/m3以下であること。 濾過捕集による重量濃度測定法又はこの方法によって測定された重量濃度と直線的な関係を有する量が得られる光散乱法、圧電天びん法若しくはベータ線吸収法
二酸化窒素(NO2) 1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内又はそれ以下であること。 ザルツマン試薬を用いる吸光光度法又はオゾンを用いる光学発光法。
光化学 オキシダント 1時間値が0.06ppm以下であること。 中性ヨウ化カリウム溶液を用いる吸光光度法または電量法、紫外線吸収法又はエチレンを用いる化学発光法。

備考

  1. 浮遊粒子状物質(SPM)とは、大気中に浮遊する粒子状物質であって、その直径が10ìm以下のものをいう。
  2. 光化学オキシダントとは、オゾンパーオキシアセチルナイトレートその他の光化学反応により生成される酸化性物質(中性ヨウ化カリウム溶液からヨウ素を遊離するものに限り、二酸化窒素を除く。)をいう。
    (資料)環境省

また、1996(平成8)年の大気汚染防止法の改正において有害大気汚染物質対策が追加されたことに伴い、ベンゼントリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの大気環境基準が、2001年(平成13年)には、ジクロロメタンの大気環境基準が定められました。
一方、ダイオキシン類について、焼却炉等からの排出が社会的に問題となり、1999(平成11)年7月には、議員立法により「ダイオキシン類対策特別措置法」が制定されました。ダイオキシン類による環境の汚染の防止及びその除去等を図っていくことになり、2000(平成12)年1月から施行されました。
同法に基づき、耐用一日摂取量(生涯にわたって継続的に摂取したとしても健康に影響を及ぼすおそれがない、一日当りの摂取量)がTEQで体重1kg当り4pg(pgは、1兆分の1グラム)と定められ、さらに、大気汚染に関する環境基準(人の健康を保護する上で維持されることが望ましい、環境中の濃度条件についての基準)が、年間平均値0.6 pg-TEQ/m3以下と定められました。
(TEQは、ダイオキシン類の中でも、毒性が強い2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(TCDD)の毒性に換算した値ということです。)
また、同法に基づく廃棄物焼却炉等の特定施設については、ダイオキシン類の排出総量を平成14年度において平成9年度比で約9割削減という目標に向けて、排出基準が設定されました。
2009年には微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準が設定され、大気汚染の常時監視が始められています。

ベンゼン等の環境基準

物質 環境上の条件 測定方法
ヘンゼン 1年平均値が0.003mg/m3以下であること。 キャニスター若しくは捕集管により採取した試料をガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法又はこれと同等以上の性能を有すると認められる方法。
トリクロロ エチレン 1年平均値が0.2mg/m3以下であること キャニスター若しくは捕集管により採取した試料をガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法又はこれと同等以上の性能を有すると認められる方法。
テトラクロロ エチレン 1年平均値が0.2mg/m3以下であること キャニスター若しくは捕集管により採取した試料をガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法又はこれと同等以上の性能を有すると認められる方法。
ジクロロメタン 1年平均値が0.15mg/m3以下であること キャニスター若しくは捕集管により採取した試料をガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法又はこれと同等以上の性能を有すると認められる方法。
微小粒子状物質 1年平均値が15μg/m3以下でり、かつ、1日平均値が35μg/m3以下であること。 微小粒子状物質による大気の汚染の状況を的確に把握することができると認められる場所において、濾過捕集による質量濃度測定方法又はこの方法によって測定された質量濃度と等価な値が得られると認められる自動測定機による方法。

備考

微小粒子状物質とは、大気中に浮遊する粒子状物質であって、粒径が2.5μmの粒子を50%の割合で分離できる分粒装置を用いて、より粒径の大きい粒子を除去した後に採取される粒子をいう。

このページの先頭へ