食物アレルギーの子どものための 食事の基礎知識
2.原因食物別 除去のポイント その他(そば、落花生(ピーナッツ)、ナッツ類、甲殻類・軟体類・貝類、大豆、魚類、肉類、ごま、魚卵、果物・野菜、米、ゼラチン)
そば
- アナフィラキシーを起こしやすい食品なので、注意が必要です。
- そばのタンパク質は、熱に強く、水に溶けやすい性質を持っているため、そばをゆでる蒸気を吸ったり、そばと同じ釜でゆでたうどんを食べても症状が出る場合があります。
- 空気中を漂うそば粉やそば殻枕からの粉じんを吸い込んで、症状が出ることもあります。
- 思いがけないところに使われていますので表示を確認しましょう。
クレープやそばボーロなど菓子類の材料/こしょう など
落花生(ピーナッツ)
- アナフィラキシーを起こしやすい食品なので、注意が必要です。
- ローストするとアレルゲン性が増します。
- ピーナッツオイルを含むローションを皮膚に塗るのは避けましょう。
- ピーナッツは本来「豆科」であり、ピーナッツアレルギーであることを理由として「ナッツ類」を除去する必要はありません。
ナッツ類
- 最近になって患者数が増えています。
- アナフィラキシーを起こしやすい食物なので注意が必要です。
- 本来ナッツ類としてひとくくりにすることはできず、個々にアレルギーの有無を確認します。
- ナッツ間の関係性は、次のペア以外は低く、ナッツ類としてまとめて除去する必要は通常ありません。クルミとペカンは同じクルミ科、カシューナッツとピスタチオは同じウルシ科で関係が強いです。
- 洋菓子などに使用されていることが多く、粉末状にされて外観からは含まれていることがわからない場合があるので注意が必要です。
甲殻類・軟体類・貝類
- えびで症状が出る場合には、その半数以上でかにでも症状が出ます。
- えびで症状が出る場合でも、軟体類や貝類で症状が出ることはまれです。血液検査、負荷試験で詳しく調べましょう。
- じゃこやのりに交ざっているえびなどで、症状が出ることはまれです。
大豆
- 大豆を使用した食品(納豆、豆腐、豆乳など)は、個人により食べられるものが異なります。また出る症状にも個人差があることを踏まえ、主治医と相談して必要以上の除去を避けるようにします。
- 大豆アレルギーでも、多くの場合、ほかの豆類は食べられます。
- 大豆タンパク質が醸造過程で分解されるしょうゆやみそは、多くの場合食べることができます。
しょうゆやみそも除去する必要がある場合は、米や雑穀からつくられる代替調味料を利用することもできます。
- 大豆油は精製されタンパク質はほとんど残っていないので、多くの場合に使用可能です。
- 花粉との交差反応性により花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)が発生した場合、大豆(特に豆乳)ではアナフィラキシーショックなど重篤な全身症状を呈することがあります。
食品表示を読むときの注意(わかりにくい表示)
大豆は表示が推奨されていますが、義務ではありません。表示されない場合もあることを知っておきましょう。
含まれる大豆タンパク質が微量であるため、多くの大豆アレルギーの人が使用できるもの
しょうゆ、みそ、大豆油
レシチン、レシチン(大豆由来):
乳化剤ですが、大豆由来と明記されていないこともあります。卵黄由来のレシチンはレシチン(卵由来)と表示されるので、区別が可能です。
魚類
- すべての魚が食べられない場合、ビタミンDが不足し、カルシウムの吸収が悪くなります。卵黄やきくらげ、干ししいたけ、アレルギー用ミルクなどで補いましょう。
- すべての魚が食べられないことはまれです。多くの場合、食べることができる魚を見つけられます。血液検査の結果だけで除去せずに、医師に相談しましょう。
- かつおぶし、煮干しなどによるだしは、ほとんどの場合、使用できます。使用できないときには昆布、干ししいたけ、肉などのだしを利用しましょう。
- 缶詰やビン詰の魚では症状が出ない場合が多いので、医師に相談しましょう。
- 鮮度の落ちた魚にできたヒスタミンによるヒスタミン中毒は、アレルギーと紛らわしい症状を起こします。家庭での再冷凍は避けましょう。
- 魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は、アレルギーの炎症を抑えるのに役立つといわれています。
肉類
- アレルギーであってもエキス(だし)は摂取できる場合が多いため、医師に確認しましょう。
- 牛肉の除去によるヘム鉄の不足に注意しましょう。ヘム鉄を多く含む赤身の魚で補います。
ごま
- 症状の出やすさは、「すりごま・練りごま」のほうが出やすく、出にくいのは > 「粒ごま」です。
- ごま油は使用可能な場合が多いので、医師に確認しましょう。
魚卵
- 魚卵アレルギーの95%はイクラアレルギーです。
- 塩漬けされている場合が多い魚卵は、そもそも低年齢児には勧められません。
果物・野菜
- 果物、野菜によるアレルギーで多く見られるのは、口の中が腫れたりかゆくなるなど口腔(こうくう)内にだけ症状を起こす「口腔アレルギー症候群」(注1)です。
もも、キウイフルーツ、りんご、メロンなどで起こりやすいとされています。
- 口腔アレルギー症候群の原因となる多くの果物・野菜は、加熱によりアレルギー症状を起こさなくなります。そのため調理したものは多くの場合、食べられます(例:りんごアレルギーでも、焼きりんごやアップルパイは食べられる)。ただし、微量の摂取や加熱をしても、アナフィラキシーを起こすタイプの人がいます。頻度の高い原因果物は、もも、キウイフルーツ、バナナなどです。
- 口腔アレルギー症候群(OAS)とは別に即時型症状もあります。なかにはアナフィラキシーを起こすこともあります。例:豆乳(カバノキ科花粉と交差)やセロリ、スパイス(ヨモギ花粉と交差)
- 多くの症例が花粉症を合併します。このような場合「花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)」と呼びます。一部の果物や野菜は、花粉との間に交差反応性(注2)があるからです。
- 原因食物を除去しても、食べられる果物や野菜をとることで栄養面の代替ができます。
食物アレルギーと紛らわしい反応を起こすことがあります。
野菜、芋類、果物中の薬理活性物質(下表参照)により、アレルギー様の症状がでることがありますが、通常の食物アレルギーと区別する必要があります
野菜、芋類、果物中の薬理活性物質の例
- ヒスタミン
- ほうれん草、トマト、とうもろこし など
- セロトニン
- トマト、バナナ、キウイフルーツ、パイナップル など
- アセチルコリン
- なす、トマト、たけのこ、さといも、やまといも、クワイ など
- ニコチン
- じゃがいも、トマト など
- サリチル酸化合物
- トマト、きゅうり、じゃがいも、いちご、りんご など
そのほか、山いも皮付近にあるシュウ酸カルシウムの針状の結晶が、口の周りや手にささって皮膚を刺激し、かゆみを起こすことがあります。この場合、山いもアレルギーと区別する必要があります。
米
- 米によるアレルギーはまれです。
- 除去が必要な場合、超高圧処理により低アレルゲン化した米などの使用が可能です。
ゼラチン
- 三種混合ワクチンやMMR(麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチン)にゼラチンが安定剤として含まれていたときに、ワクチン接種後やグミなどのゼラチンを含む食品を食べたときに症状が出ることがしばしばありましたが、ワクチンの安定剤として使用されなくなってからゼラチンアレルギーはほとんどなくなりました。
- お菓子の原材料、ハム、ソーセージなどのつなぎとして用いられるので注意しましょう。
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