成人ぜん息の基礎知識 健康な人と変わらない日常生活を送れるようになること

実践編ぜん息をコントロールする

悪化因子の対策

日常生活の改善

ぜん息の発作、悪化を防ぐ対策には、すべての患者さんに共通する対策と、患者さんそれぞれの要因に合った対策を併せて行っていく必要があります。日常の中で、どんなときにぜん息が悪化したか、発作が出たかを振り返り、自分に合った対策をしていきましょう。

ここがポイント!

  • 喫煙者は必ず禁煙を。
  • 感染症や肥満は、とくに成人ぜん息を悪化させる原因です。

共通する対策

喫煙、受動喫煙

喫煙は呼吸機能を低下させ、ぜん息を悪化させます。さらに、喫煙によって吸入ステロイド薬の効きが悪くなることがわかっています。
妊娠中に喫煙することで、生まれてくる子どもにぜん息やアレルギーが発症しやすいことが証明されています。また、生まれてきた子どもの6~10歳時点でのぜん息やアトピー性皮膚炎の頻度や重症度を増加させることもわかっています。
他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙も、自分が喫煙するのと同じくらいぜん息に悪影響を及ぼします。

<対策>
  • ニコチンガムやニコチンパッチ、禁煙外来の活用などで、昔に比べて比較的楽に禁煙できる時代になっています。喫煙者の方は、ただちに禁煙を
  • 受動喫煙を避けるため喫煙所には近づかず、家族に喫煙者がいたら禁煙をお願いする

感染症

カゼやインフルエンザ、肺炎など呼吸器の感染症は、ぜん息を悪化させる大きな要因です。

<対策>
  • 外に出るときはマスクをする
  • 外から帰ってきたらうがい、手洗いをする
  • 毎年、インフルエンザの流行前に予防接種を受ける
  • 65歳以上の高齢者は、肺炎球菌ワクチンの接種を受ける

メタボリックシンドローム・肥満

メタボリックシンドローム・肥満は、ぜん息の悪化因子であり、発症因子であることがわかっています。内臓脂肪に含まれる脂肪細胞がぜん息を悪化させる物質を出すこと、気管支周辺の脂肪細胞のすき間に炎症を引き起こす細胞が集まることなどによって、ぜん息を悪化させます。

<対策>
  • 食事のコントロール、適度な運動で、BMI25未満をめざす
  • 筋肉はぜん息やアレルギーに対して防御的に働く可能性が指摘されています。内臓脂肪をより少なくし、ある程度の筋肉をつけるために定期的な運動が大切です

注:体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))で計算できる肥満度の指標。BMI22が標準。25以上で肥満と判定されます。

それぞれの要因に合わせた対策

花粉

花粉症(アレルギー性鼻炎)があると、ぜん息が悪化しやすく、治りにくいとされています。とくに原因となる花粉の飛散時期は、せきが出たり肺機能が低下しやすいため、自分の花粉アレルギーの原因アレルゲンを正確に診断してもらい、その対策をたてましょう。

<対策>
  • ぜん息と同時に花粉症の治療をすすめる
  • 家の外で花粉を吸い込まない、家の中に花粉を持ち込まない工夫を
    たとえば
    • 外出時は、メガネやゴーグル、マスクで花粉をブロックする
    • 飛散量の多いときは外出を控える(テレビやインターネットの花粉情報を参照)
    • 部屋の窓や戸はできるだけ閉めておき、換気は短時間にとどめる
    • 表面がけばだった毛織物などのコートを着ない(つるつるしたナイロンやポリエステル素材のものを)
    • 布団や洗濯物を外に干さない
    • スギ花粉症では、体質改善をして花粉症を根本から治療するスギ花粉に対するアレルゲン免疫療法も有効

運動

運動したときによく発作が起こる方は、乾燥した空気を吸い込むことで起こる「運動誘発ぜん息」のおそれがあります。とくに空気の冷たい冬に起こりやすい発作です。

<対策>
  • ふだんから長期管理薬でぜん息のコントロールをよくしておく
  • 運動の前に準備運動をしっかりする
  • マスクをして運動する

気象の変化

台風の前などの、急激な気圧や気温の変化でぜん息が悪化することがあります。

<対策>
  • 医師に相談して、そのときだけ薬の量や種類を増やすことで、ぜん息の悪化や発作を予防できる可能性があります
  • 天気予報もこまめにチェックする

大気汚染や煙など

汚れた空気には気道を刺激する物質が含まれています。とくに春先はPM2.5注1が原因になることもあります。また、家の中でも、線香の煙や調理の湯気、建材に使われる化学物質などが気道を刺激することがあります。吸入ステロイド薬などでぜん息の状態を安定させれば、各種刺激物質に対しても、症状が出なくなります。

  1. 注1:大気中に浮遊している2.5μm(マイクロメートル:1μmは1mmの千分の1) 以下の小さな粒子のこと。髪の毛の太さの30分の1程度と非常に小さいため、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器系や心臓などの循環器系への影響が心配されています。
<対策>
  • 屋外:原因物質を取り込まない工夫をする
    たとえば
    • 大気汚染注意報注2が出るなど、大気汚染物質の濃度が高いときは、できるだけ外出を控える
    • 外出するときはマスクやゴーグルを着用する

    注2:大気汚染防止法に基づき、都道府県が発令する情報。二酸化硫黄、一酸化炭素、浮遊粒子状物質、二酸化窒素、光化学オキシダント(光化学スモッグ)の5つの物質について、「注意報」「重大緊急時警報」の基準が定められているほか、多くの都道府県でこの両者の中間レベルに当たる「警報」など、独自の基準を定めています。

  • 屋内:こまめに換気する
    そのほか
    • 石油やガス暖房機をパネルヒーターや床暖房に変える

ストレス

原因ははっきりとはわかっていませんが、ストレスを感じることで体内のマスト細胞などから炎症物質が出されるため、ぜん息が悪化すると考えられています。

<対策>
  • 面接や会議、プレゼンテーションの前など、ストレスを受けることが前もってわかる場合は、医師に相談して、そのときだけ薬の種類や量を増やすなどの方法で、症状の悪化や発作を予防できる可能性がある
  • 趣味やスポーツなど、自分なりのストレス解消法を見つけることも大切
  • 吸入ステロイド薬を含むぜん息治療を強化して状態を安定させる
    ※ストレスに対して症状が出にくくなります

アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:エヌセイズ、解熱鎮痛薬)

成人ぜん息患者さんの約5~10%、とくに鼻ポリープと副鼻腔炎のあるぜん息患者さんでは、解熱鎮痛剤に含まれるアスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬によって、重症のぜん息発作が誘発されることがあります(アスピリンぜん息)。

  1. 注:細胞が増殖して、粘膜の上にできる突起物のこと。
<対策>
  • アスピリンをはじめとする非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は使用しないこと。市販の解熱鎮痛剤にも使用されているので、注意すること
  • ぜん息以外の病気で病院(歯科含む)や薬局にかかる際は、必ずぜん息であることを伝えてください

β遮断薬

高血圧の治療や緑内障の治療に使用されるβ遮断薬には、気管支を収縮させる働きがあるため、ぜん息を悪化させます。

<対策>
  • β遮断薬は原則的に使用できません
  • ぜん息以外の病気で病院にかかる際(とくに高血圧や緑内障の治療)には、必ずぜん息であることを医師に伝えてください

アルコール

日本人には、体内でアルコールを分解する際に発生する毒物・アセトアルデヒドを分解する酵素が欠損していたり、不完全な人が多いといわれています。このような人が飲酒をすると、アセトアルデヒドによって顔や全身が紅潮したり、動悸がしたりします。同様に気管支の粘膜もむくむため、ぜん息の症状が悪化することがあります。また、アセトアルデヒドにはマスト細胞などからヒスタミンを遊離させる働きもあるため、これによってもぜん息症状が悪化します。さらに、赤ワインなどに含まれる防腐剤によって気管支が収縮し、悪化することもあります。

<対策>
  • 無理な飲酒は控え、飲酒の機会がある場合には医師に相談しましょう

関連リンク

LINEで送る

成人ぜん息トップに戻る

このページの先頭へ