成人ぜん息の基礎知識 健康な人と変わらない日常生活を送れるようになること

知識編ぜん息を知る

ぜん息との合併に気をつけたい病気

ぜん息と合併していると、ぜん息を悪化させてしまう病気があります。ぜん息の治療をきちんと継続しているのになかなかよくならない場合は、ほかの病気を合併していないか、きちんと調べ治療することが大切です。

ここがポイント!

  • とくに高齢者では、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の合併に注意が必要です。
  • 花粉症などの鼻炎もぜん息を悪化させる要因になります。

COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、主に長期間の喫煙が原因で肺に炎症が起こり、酸素と二酸化炭素を交換する役目をする肺胞が壊れ、息が吐き出しにくくなる病気です。最初は息切れやせき、たんなどありふれた症状なので気づきにくい病気ですが、放置すると労作時の息苦しさと、ときにぜん息発作と同様の「おぼれるような」息苦しさに見舞われます。

ぜん息とCOPDの合併は65歳以上の高齢者に多くみられます。高齢のぜん息患者さんの約25%にCOPDが合併しているという報告もあります。最近では、ぜん息とCOPDが合併している状態を示す「ACO(エーコ)(Athma COPD Overlap)」という概念が注目されています。
ぜん息とCOPDが合併していると、ぜん息が悪化する頻度が高く、QOL(生活の質)も低くなり、病気の経過(予後)も悪いことがわかっています。
COPDの合併が認められた場合も、治療の基本は吸入ステロイド薬です。そこに、長時間作用性抗コリン薬や、長時間作用性β2刺激薬を組み入れます。

COPDを発見するためには、呼吸機能検査が有効です。以下のような方は一度医師に相談し、検査を受けてCOPD合併の有無を確認しましょう。

  • 40歳以上で過去に喫煙していた、もしくは現在喫煙している
  • 坂道を上ったり、急に動くと呼吸が苦しくなることがある
  • せきやたんが多くなかなか治らない

COPDについて詳しくは、ぜん息などの情報館慢性閉塞性肺疾患(COPD)基礎知識をご覧ください。

アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎(慢性副鼻腔炎、好酸球性副鼻腔炎)

上気道で起こる炎症性疾患は、鼻炎、副鼻腔炎(蓄膿症)、咽頭炎、喉頭炎、扁桃炎で、アレルギーが原因で起こるものは、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎など。下気道で起こる炎症性疾患は、気管支炎で、アレルギーが原因で起こるものは、ぜん息など。空気の通り道は気道と呼ばれ、上気道(鼻からのど、気管の入口まで)と下気道(気管、気管支、細気管支)に分けられます。鼻炎は上気道、ぜん息は下気道に起きる病気ですが、同じ気道に起こる炎症であるため、ぜん息と鼻炎は影響し合うことが知られています。ぜん息に鼻炎を合併していると、ぜん息が悪化しやすく、症状が改善しにくいとされています。逆に、鼻炎を治療することで、ぜん息の症状が改善することもわかっています。

アレルギー性鼻炎(花粉症)

ぜん息は、主にアレルギーが原因で下気道に炎症が起こる病気ですが、鼻のアレルギーの病気としてよく知られているのが、アレルギー性鼻炎です。一年を通して現れる「通年性アレルギー性鼻炎」と、一定の時期だけ現れる「季節性アレルギー性鼻炎」に分けられます。
通年性は、ダニやハウスダスト、ペットの毛やフケなどが原因で発症します。季節性の原因は主に花粉です。どちらも原因となる物質(アレルゲン)を吸い込むことで、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が起こります。
ぜん息の人の60~80%前後にアレルギー性鼻炎の合併がみられるといわれています。アレルギー性鼻炎のコントロールが悪いと、ぜん息に悪影響を与え、アレルギー性鼻炎をしっかり治療することで、ぜん息の症状が改善することが知られています。鼻の症状がみられたら病院を受診し、早期診断、早期治療を心がけましょう。スギ花粉症の場合は、アレルゲン免疫療法が保険適用となっており、花粉症だけでなくぜん息の症状改善にも効果があるとされています。

副鼻腔炎(慢性副鼻腔炎、好酸球性副鼻腔炎)

副鼻腔炎は、副鼻腔とよばれる両目の間や額、ほほの下など、鼻のまわりにある空洞に、膿や粘液がたまってしまう状態のことです。副鼻腔炎は、副鼻腔とよばれる両目の間や額、ほほの下など、鼻のまわりにある空洞に炎症が起こり膿や分泌物がたまってしまう病気です。カゼなどの感染症にかかったとき急性の副鼻腔炎になることが多く、通常は治療により短期間でおさまりますが、長引いて慢性化することがあります。蓄膿症とも呼ばれ、ぜん息との合併も少なくありません。

嗅覚低下(食事の匂いがわからないなど)や鼻づまり、ねばりのある鼻水、頭痛、集中力の低下などが見られます。鼻水がのどにまわる「後鼻漏(こうびろう)」や、副鼻腔の粘膜にポリープ(鼻茸[はなたけ])ができることが多いのも特徴です。慢性のせきやぜん息の悪化につながるため、適切な治療を心がけましょう。

副鼻腔炎の中でもぜん息とよく合併するのが、好酸球性副鼻腔炎です。ぜん息の場合、気道に好酸球という白血球の一種が増加しますが、副鼻腔に好酸球が増え粘膜が傷害されて起こるのが好酸球性副鼻腔炎です。とくに成人ぜん息の患者さんに合併することが多く治りにくいため、副鼻腔炎の症状、とくに嗅覚低下が見られたら、早めに医師に相談し検査や治療を開始しましょう。また、この好酸球性副鼻腔炎の方の約半数が、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)過敏を合併しますので、解熱鎮痛薬を使用する場合は、必ず医師や薬剤師に確認しましょう。

ぜん息との合併に気をつけたいそのほかの病気

好酸球性中耳炎

中耳に好酸球が増加することによって粘膜が傷害されて中耳炎が起こることがあります。好酸球性副鼻腔炎に引き続いて起こることが多く、適切な治療を行わないと難聴を引き起こします。「耳がつまった感じがする」「ぜん息が悪化すると耳が聞こえにくい」という症状がある場合は、早めに医師に相談してください。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA:Eosinophilic Granulomatosis with Polyangitis、旧チャーグストラウス症候群)

もともと重症の成人ぜん息があり、好酸球の増加とともに全身の小血管の炎症(=血管炎)が発症するまれな原因不明の疾患です。血管炎の症状として、手足の末梢のしびれと筋力低下(手足の力が入らない)が特徴です。また皮疹や腹痛、心不全や不整脈、好酸球性肺炎なども起こします。早期診断が重要なため、好酸球が多い方で、手足のしびれが出てきた場合は、早めに専門医へ相談しましょう。

合併によりぜん息を悪化させるそのほかの病気

胃食道逆流症(GERD:Gastro Esophageal Reflux Disease、ガード)

胃の内容物が逆流する病気です。胸やけや食道炎のほか、慢性のせきの原因にもなります。胃カメラの検査で食道炎の所見がなくてもせきの原因となることがあります。中高齢の女性に多く、ぜん息患者さんのGERD保有率は45~71%と一般より高く、合併しているとぜん息が重症化しやすいといわれています。よく胸やけする、せきがよくならない、など思い当たる場合は、胃酸を抑える薬でよくなるため、医師に相談してください。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA:Allergic Bronchopulmonary Aspergillosis)

空気中のカビであるアスペルギルス・フミガタスを長期に吸い込むことで発症します。アスペルギルス以外のカビも原因となることがあり、これらを総称してアレルギー性気管支肺真菌症(ABPM:Allergic Bronchopulmonary Mycosis)と呼びます。
フミガタスが多い環境(換気が悪く、湿気やほこりが多い環境)で生活していると、気管支にフミガタスが多く侵入し、IgE抗体が産生され、ぜん息が悪化することが知られています。さらに一部の方は、IgG抗体も産生され、気管支や肺を徐々に破壊し、呼吸不全を引き起こします。そのため、早期発見、早期治療が重要な病気です。アスペルギルスのIgE抗体が陽性の患者さんで、ぜん息の治療を継続していても症状が悪化するなどの場合は必ず医師に相談してください。

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