成人ぜん息の基礎知識 健康な人と変わらない日常生活を送れるようになること

成人ぜん息Q&A

~病気について~

ぜん息は気道の病気と聞きますが、気道とは「のど」のことではないのですか。どこを気道というのでしょうか。

のどから気管を通り、左右に分かれて肺に届くまでの空気の通り道が「気道」です。

気道はどこですかと聞くと、『のどからのどの下のくぼみあたりまで』を指す人が多いのではないでしょうか。ではここで、息を吸ってみてください。レントゲン写真を撮るように力強く、肩で早く吸ってしまった方はいませんか?

こんな吸い方をした人は、のどに空気があたった感じがしませんでしたか。今度はゆっくり息を吐ききってから、腹式呼吸を意識してゆっくり大きく吸ってみてください。吸った空気はどこまで入っていきましたか?

横隔膜をいっぱい押し広げて『おなかまで届け』と吸ってみてください。胸いっぱいに空気が広がった感じがわかりましたか。いま吸った空気の通り道を気管支といいます。気管支は、わたしたちが生きていくうえで必要な「酸素」をとり込むための臓器である、肺への空気の通り道です。のどから胸の中心付近に太い1本の気管が通り左右に分かれ、胸にある左右の肺に届くまでの空気の通り道が気管支です。この空気の通り道を総称して「気道」といいます。みなさんの病気はどこにありますか? そうです。ぜん息は「気管支ぜん息」というように、この「気道」に起こる病気なのです。

みなさんが使う吸入薬、とくに吸入ステロイド薬は、気道である気管支に届いて効くお薬です。吸入するときにのどにあたった吸い方をしていませんか? それではいけません。気道に十分に届く吸い方が大事です。上手に吸入して、よりよい効果を得てください。

正しい吸入方法を身につけよう

ぜん息はかかりつけの内科で、鼻炎は耳鼻科と別々にかかっていますが、問題ないでしょうか。ぜん息と鼻炎は関係ありますか。

同じ気道の中の病気なので、影響し合うことが知られています。

空気の通り道は気道と呼ばれ、上気道(鼻からのど、気管の入口まで)と下気道(気管、気管支、細気管支)に分けられます。鼻炎は上気道、ぜん息は下気道に起きる病気ですが、同じ気道に起こる炎症であるため、ぜん息と鼻炎は影響し合うことが知られています。ぜん息に鼻炎を合併していると、ぜん息が悪化しやすく、症状が改善しにくいとされています。逆に、鼻炎を治療することで、ぜん息の症状が改善することもわかっています。ぜん息と鼻炎は、同じ空気の通り道で起こる病気であることを覚えておきましょう。
鼻炎の治療では耳鼻科的手技を必要とすることがありますので、内科と耳鼻科の両方を受診されてよいかと思います。ただし、薬が共通する場合もあるため、薬局をひとつにするとよいでしょう。また、どちらの先生にもぜん息と鼻炎があるということを伝えてください。

ぜん息との合併に気をつけたい病気 鼻炎

春先にぜん息が悪化しますが、花粉と何か関係がありますか。

花粉症があると、ぜん息が悪化しやすいことが知られています。

スギ花粉の時期にぜん息が悪化することは、以前から知られていました。しかし花粉の粒子自体〔約30~40ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)〕が大きく、鼻腔を通じて肺に到達する可能性は低いと考えられ、これまで花粉とぜん息の発症・悪化の関係は明らかではありませんでした。最近では肺まで入ってくるオービクル(花粉表面の微粒子)上のアレルゲンがぜん息の発症・悪化原因の一つではないかと考えられています。
花粉症はぜん息と比べると直接生命への危険がない疾患ということもあってか、ぜん息のある方が花粉症を発症していたとしても、なかなか花粉症の症状を訴えることが少ないようです。ところが、最近の研究ではアレルギー性鼻炎の治療をしっかり行えば、気管支の粘膜にもよい影響がおよび、気道の過敏性が改善されるという研究結果もあるようです。ぜん息の方は、花粉が飛散する時期に目や鼻の調子がどうなのか、自分の体調を把握し飛散時期のぜん息発作の程度や頻度を記録しておくと、花粉症との関連がはっきりするでしょう。もし花粉症の症状があらわれた場合は、医師にしっかりと伝えましょう。ほとんどの場合、ぜん息を診療するかかりつけ医は内科ですが、症状をしっかりと伝えることで、花粉症の症状を抑える治療をしてもらうことが可能となります。ふだんから抗アレルギー薬を服用していたとしても、花粉症を発症しないですむかというと、そういうわけではありません。花粉の飛散時期はアレルゲンが身のまわりに急増するわけですから、症状が出ることもあります。花粉への対策をしておくことが大切です。

ぜん息発作が起こりやすい時間帯や季節はありますか。

1日の中でも午前2時から4時ごろ、1年のうち春と秋にぜん息が悪化しやすいことがわかっています。

ぜん息患者さんの症状は、1日の間に変動が認められます。午前2時から4時ごろは、1日のうちで気道がいちばん不安定な状態になるため、ぜん息発作が起こりやすい時間帯といえます。同じことが1年単位でもみられ、季節的変動と呼ばれています。5月から7月と、10月から11月に、発作の回数・程度ともに多くなり、秋の方が若干発作が多くなる傾向があります。ぜん息発作に季節的変動がある理由として、気候、ダニなどのアレルゲン量、気道感染の3つがあげられます。春と秋は梅雨や台風で気象の変化が激しいうえ、とくに10月から11月になると1日の温度差も激しくなるため、カゼをひきやすくなります。さらに、室内のダニなどのアレルゲン量も春と秋がピークで、ますます発作が起こりやすくなるといえます。

対策としては、カゼをひかないように体力をつける、規則正しい生活を送る、掃除や換気をこまめに行い、ダニなどのアレルゲンとなる物質を減らすように家の中の環境整備をしっかり行うことです。季節的にぜん息が悪化する人は、主治医に相談して、その時期に合った治療を考えてもらうとよいでしょう。

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