ぜん息などの情報館

Q5-2 家庭で使用されるぜん息薬と作用について教えてください。

A5-2

家庭で小児に用いられる主な抗喘息薬一覧表
薬の種類 薬の商品名
吸入ステロイド薬 フルタイド、キュバール、パルミコート吸入液、
パルミコートタービュヘイラー、オルベスコ
β2刺激薬 吸入 短時間作用性 メプチン、サルタノール、アイミロール、ベネトリン
長時間作用性 セレベント
経口 短時間作用性 ベネトリン、ブリカニール、ベラチン、メプチン、
スピロベント
長時間作用性 ホクナリン
貼付 長時間作用性 ホクナリン
吸入ステロイド薬・長時間作用性β2刺激薬配合剤 アドエア
抗アレルギー薬 ロイコトリエン受容体拮抗薬 オノン、シングレア、キプレス
化学伝達物質遊離抑制薬 インタール、リザベン、ロメット、アレギサール
ヒスタミンH1拮抗薬 ザジテン、セルテクト、ゼスラン、ニポラジン
Th2サイトカイン阻害薬 アイピーディ
テオフィリン薬 テオフィリン徐放製剤 テオドール、テオロング

経口ステロイド薬:プレドニン、メドロール、デカドロン、リンデロン

小児ぜん息に家庭で使用される主な薬の作用について簡単に解説します。
1. 吸入ステロイド薬
気管支に直接到達し、気道の炎症を強力に抑えて、呼吸機能、気道過敏性を改善し、ぜん息長期管理薬の中心と位置づけられています。吸入ステロイド薬の普及によって、世界のぜん息死が減少してきました。

2. 抗アレルギー薬
抗アレルギー薬は、ロイコトリエン受容体拮抗薬、化学伝達物質遊離抑制薬、ヒスタミンH1拮抗薬、Th2サイトカイン阻害薬などの総称です。

 1)ロイコトリエン受容体拮抗薬
ロイコトリエン受容体拮抗薬は気道炎症リモデリングを抑え、気管支拡張作用もあって、ぜん息発作や運動誘発ぜん息、ウイルス感染によって誘発されるぜん息発作を抑制し、比較的短時間で効果が現れてくるので、長期管理のぜん息治療薬広く普及しています。
 2)化学伝達物質遊離抑制薬
アレルギー反応で放出されてぜん息発作を引き起こすヒスタミンなど化学伝達物質の遊離を抑える作用がある。吸入薬(インタール)と経口薬(リザベン、アレギサール、ロメット)などがあります。
インタールは発作や運動誘発ぜん息の予防作用があり、呼吸機能改善作用もあります。吸入ステロイド薬に比べて発作抑制作用は弱いが、中等症以上のぜん息ではベネトリンやメプチン吸入薬と混ぜて定期的に吸入させることがあります。症状が落ち着いたらインタール単独で吸入します。
経口化学伝達物質遊離抑制薬はロイコトリエン受容体拮抗薬に比べて効果が得られるまで長期間を要し、他の抗喘息薬がより有効なことから、使用頻度は減少してきました。
 3)ヒスタミンH1拮抗薬
化学伝達物質遊離抑制作用とヒスタミン拮抗作用があります。
ヒスタミンH1拮抗薬の長期管理薬としての使用頻度は他の抗ぜん息薬がより有効なことから、減少してきましたが、アレルギー性鼻炎など他のアレルギー疾患が合併している場合、合併症に対する効果を期待して使用されることがあります。
 4)Th2サイトカイン阻害薬
アレルギー免疫反応の過程を抑制して抗アレルギー作用を発揮し、気道収縮反応を抑え、気道過敏性を改善しますが、小児での臨床効果に関する報告が乏しく、位置づけは今後の課題とされています。

3. テオフィリン徐放製剤
テオフィリン徐放製剤は、テオフィリンがゆっくりと吸収され、効果持続時間が長くなるように工夫されており、ぜん息症状を持続的に抑える目的で、長期管理薬として使用されます。気管支拡張作用のほか、横隔膜の疲労抑制、好酸球による気道炎症の抑制など多様な抗喘息作用があることが報告されており、学童以上では吸入ステロイド薬の追加治療または併用の長期管理薬として位置づけられています。
乳幼児では、副作用のけいれんの問題などから慎重な投与が求められ使用頻度が減少しています。

4. β2刺激薬
気管支の収縮を抑制し、収縮した気管支を拡張するので気管支拡張薬とも呼ばれます。
 1)短時間作用性β2刺激薬
急性発作に対する第一選択の治療薬で、吸入薬と経口薬があります。
吸入薬は速効性で、吸入後数分で効果が得られ、少量で効果が得られることから副作用が出にくい。定量噴霧式吸入器(ハンドネブライザー)や粉剤(ドライパウダー)吸入器は電源も不要で、簡便・手軽です。一方、発作が軽い間はよく効くのですが、発作が重くなると効果が得にくくなり、気管支拡張効果が得られて短時間、限定的になってしまいます。使用する場合、発作の軽い間は早めの吸入が薦められています。吸入しても発作が2~3時間以内に再び出るようであれば再度吸入し、改善が得られなければ、医療機関を受診する必要があります。これを無視して吸入を繰り返していると、医療機関への受診が遅れ、重症発作に対する適切な治療が遅れててぜん息死のリスクを高めてしまうことが指摘されています。大発作の場合などは、救急受診する途上での20~30分間隔で3回まで吸入することが可能で、副作用の危険性より救命の効果が高いと考えられています。
内服薬は、効果が得られるまで30分~1時間かかります。
 2)長時間作用性β2刺激薬
長時間作用性β2刺激薬は長時間気道収縮を抑える薬ですが抗炎症作用はなく、抗炎症薬で症状の改善が得られない場合やぜん息が重症で吸入ステロイド薬との併用による治療が適切と判断された場合に、吸入ステロイド薬を中心とした抗炎症薬と併用して使います。吸入薬と貼付薬、経口薬があります。
(1)長時間作用性吸入β2刺激薬
12時間以上気管支拡張作用が持続し、吸入ステロイド薬との併用で夜間及び明け方の症状が減少し、肺機能も改善します。必ず吸入ステロイド薬と併用して使い、発作がコントロールされたら、長時間作用性吸入β2刺激薬は中止します。
(2)貼付薬
皮膚に貼ってゆっくり吸収されるように工夫されたβ2刺激薬で、貼ってから24時間後まで血中濃度が維持されます。貼ってから効果が出るまで4~6時間かかり、最高血中濃度に達するのは8~12時間後なので即効薬としては向いていません。夜間や明け方の症状のコントロールに優れ、ぜん息症状や肺機能を改善します。経口薬との併用は行いません。
(3)内服薬
メプチン、スピロペント、ホクナリンなどがこれにあたり、12時間以上も作用が続くものもあります。就寝前に内服することによって夜間の発作がコントロールされます。

5. 吸入ステロイド薬・長時間作用性吸入β2刺激薬配合剤
吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬の配合剤は、わが国で上梓されているのはアドエア(フルチカゾン(=フルタイド)とサルメテロール(セレベント)の配合剤)とシムビコート(ブデソニド(=パルミコート)とホルメテロールの配合剤)があるが、現在、小児で適応が認められているのはアドエアのみです。吸入ステロイド薬に長時間作用性吸入β2刺激薬を併用すると吸入ステロイド薬を倍量に増やすより発作抑制効果があり、肺機能を改善するとのことで配合剤が用いられます。
しかし、長時間作用性吸入β2刺激薬には抗炎症効果はなく、重篤発作のリスクをかえって高める可能性も指摘されています。米国食品医薬品局(FDA)は長時間作用性吸入β2刺激薬の安全性は確立していないとの立場から、単独使用を避けて吸入ステロイド薬と必ず併用し、ぜん息がコントロールされたら吸入ステロイド薬のみで長期管理し、長時間作用性吸入β2刺激薬投与を中止することを推奨しています。

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