ぜん息などの情報館

1-1 小児・思春期の気管支ぜん息患者等の日常生活・保健指導のあり方に関する研究

代表者:鳥居新平(愛知学泉大学教授)

研究の目的

小児気管支ぜん息患者のQOL向上のための第3期の調査研究成果であるぜん息を含むアレルギー疾患の予防と治療に役立つ食生活の第1案の基礎的研究とさらにこれを日常生活の場で実践できるような具体的なメニューを作成する。

食物アレルギーを予防したり、すでに発症した食物アレルギーに対して寛容を誘導するような食生活のあり方について動物を用いてパイロット的研究をする。食物アレルゲン診断のより特異性が高い in vitro の診断法を検討することにより、患者のQOLを高める。

環境アレルゲン対策としてはまだ不明な点が多いペット対策のマニュアルを作成する。

環境中の揮発性有機化合物の中でも注目されているホルムアルデヒドのぜん息に及ぼす影響を調査する。

小児ぜん息患者用のQOL調査票を作成し、QOLの改善を客観的に捉える指標とする。

以上の研究を進めることにより小児気管支ぜん息のQOL向上、増悪回避に役立つ対策を立てる。

さらに近年注目されているがまだ不明な点が多い思春期ぜん息についてその実態を把握することにより、対策として思春期ぜん息患者に対する教育プログラムを作成する。

あわせて、気管支ぜん息発症、悪化の防止、患者のQOL向上のための日常生活・保健指導を総合的な立場から地域で推進するためのプログラムを作成する。

3年間の研究成果

  1. 談票を作成し、これを用いることにより、保健師によるぜん息を含むアレルギー疾患患児に対する保健指導の内容を充実させ、地域に定着させることに成功した。
  2. 鶏卵アレルギーについてより特異性が高い in vitro の検査法を開発した。
  3. 動物実験とヒト培養マスト細胞を用いることによりn-3系多価不飽和脂肪酸が好酸球の浸潤や炎症性メジーエーター(TNFα)の産生、さらにマスト細胞の活性化を抑制することを明らかにし、n-3系多価不飽和脂肪酸の抗アレルギー作用を基礎的研究から確認した。
  4. 食物アレルギーを予防するためには長期間の断続的投与や一度に摂取する抗原量が重要であることを示唆する成績が動物実験から得られた。
  5. アレルギー疾患の予防・治療に役立つ食事の献立を作成した。
  6. ペットアレルギーの実態とその抗原性を調べることにより、アレルギー患者がペットを飼う場合のマニュアル作成の資料を作成した。
  7. 小児気管支ぜん息患者の中には頻度が低いがホルムアルデヒドに対するIgE抗体を保有するものがあることを明らかにし、環境の化学物質のアレルギー疾患に及ぼす影響を検討する手がかりを得た。
  8. 小児のQOL調査票の第1案を作成し、その再現性、妥当性、因子分析による質問項目の整理などの検討を行った。
  9. 思春期ぜん息に関しては思春期ぜん息患者を対象にぜん息に関する知識を多角的な面から調査し、あわせて患者の実態とその問題点にも調査した。これを資料にして思春期ぜん息患者を対象にしたテキスト(第一次案:『思春期にぜん息の君へ』)を作成した。
  10. 気管支ぜん息の発症・悪化、患者のQOL向上のための日常生活、保健指導プログラムに関する研究では特に幼児を中心に保健指導に関する具体的な試み、あるいは症状の悪化、患者のQOLに影響を及ぼす各種因子を検討した結果、これらの指導の地域での推進には保母が適していることが明らかになったので、保育所職員用のテキスト(第一次案:『ぜんそく・アレルギーQ&A』)を作成した。
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