ぜん息などの情報館

1-2 地方公共団体における環境保健事業の効果的推進、発展に関する研究

代表者:西牟田敏之(国立療養所下志津病院院長)

研究の目的

協会が推進する環境保健事業として、健康相談事業、健康診査事業、機能訓練事業がぜん息の発症予防並びに健康回復として期待される。

ぜん息患者の増加は、地方公共団体としても地域住民の健康管理並びに医療費助成の観点から重要課題の一つである。

本中課題班はこうした情勢にあって、ぜん息発症の一次予防並びに既発症者の二次予防を地域において、どのように効果的かつ効率的に展開することができるかを、地方公共団体との連携による健康相談事業の実践を通じて構築していくことを目的にしている。

3年間の研究成果

小課題1:地方公共団体における健康相談事業の展開法に関する研究

  1. 乳幼児健康診査事業からスクリーニングされたぜん息発症ハイリスク児の相談事業
    千葉県佐倉保健所管内の3市1町の1歳6ヶ月児を対象に調査研究を行った。ハイリスク児は、40%~45%にスクリーニングされ、この中から相談事業に誘導できたのは、平成10年度7.6%、平成11年度10.5%であった。
  2. 既発症者に対する指導と家庭環境測定を目的とした相談事業
    佐倉保健所管内の一地区で既発症者の中から希望を募り、環境整備実施記録とぜん息日記・ピークフローモニタリングを1年間行い評価した。16人の発作点数、治療点数、PEFの改善は環境整備取り組みの状況を反映しており、有効であった。
  3. 幼稚園・学校におけるぜん息保健指導・健康相談ネットワーク構築
    大阪市内の3幼稚園、6小学校、1中学校のぜん息児23名に保健指導を実施、学校にピークフローメーターを常設したことにより、日記とPEFの記載が向上した。この記載を活用して養護学校教諭と保護者、担任、校医との連携が得られ、今後の発展が期待された。
  4. 思春期ぜん息患者を対象とした健康相談事業の在り方
    夏休みに保健所において、思春期ぜん息患者の相談事業を行うにあたり、肺機能測定を行うことが参加者募集に役立つとともに、under treatmentの患者をスクリーニングし、治療の矯正をするのに有効と思われた。地域医療機関、医師会との連携により、一層の効果を発揮すると考えられる。

小課題2

  1. 機能訓練メニューの施行と評価に関する研究
    ユニホックによる機能訓練の実施法と効果を検討した。%Hrmaxに基づく運動強度では、60名の参加者中90%の人に中等度の運動負荷を与え、15%の人に%fall of PEFで20%以上の低下が認められたが、投薬なしに改善した。子供たちに興味があるスポーツで、今後の普及も予想されるので、継続性の面からも期待される。
  2. 新規機能訓練の開発に関する研究
    国療盛岡・岩木・秋田病院の入院児を中心にスケートによる機能訓練を実施した。フィギアスケートは、%Hrmaxからは中等度迄の運動強度でEIAを生じる閾に達しなかった。自由滑走では速度が速くなると負荷量を増すため工夫が必要である。スケートとスキーの訓練マニュアル案を作成した。
  3. 機能訓練と運動誘発性ぜん息に関する研究
    国療南福岡病院の入院ぜん息児を対象に自転車エルゴメーターによる負荷を行い運動誘発性ぜん息と自律神経機能の関係を検討した。ぜん息児のβレセプターにおいて、細胞内情報の伝達機能が向上し、運動時のアドレナリン分泌能が増加することが自律神経系に対するトレーニング効果であった。運動の種類や学年により差が大きく、個人差が見られた。EIBは24.5%に見られ、体育現場での具体的な運動処方を施行する。
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