ぜん息などの情報館

3-1 乳幼児・小児の気管支ぜん息の保健指導等に関する研究

研究代表者:森川 昭廣

研究の目的

近年、日本を含む世界各国において、気管支喘息、特に小児の患者の増加が報告されている。
また、その発症は年々低年齢化する傾向にあるといわれているが、喘息の発症要因のひとつに、アレルギーに関連するとして生活環境におけるアレルゲン量の増加やアレルゲンに対する生体の反応性の亢進が考えられている。
他方、乳幼児期の気道感染症の影響も考えられている。
アレルゲンによって引き起こされる一連のアレルギー反応は、小児と成人では免疫反応の相違が推測され、特に乳幼児における気道のアレルギー性炎症と炎症を回避する機構は、特異的なものと思われる。
また、乳幼児期のウイルスによる呼吸器感染症では、喘鳴を伴うことが少なからず認められるが、そのような症例の中には、ウイルス感染後に気道過敏性の亢進が惹起され、気管支喘息が誘発される症例も報告されている。
しかしながら、いずれの発症要因においても、気管支喘息を発症させる詳細な機序は不明のままである。
増加させる因子を明らかにし、それに対応する施策を講じることにより、小児の気管支喘息の発症を阻止し、さらに悪化防止とQOLの回復へ誘導しなければならない。

12年度研究成果

乳幼児気管支喘息の特徴と保健指導に関する研究

アレルギーに関連する炎症性メディエーターの作用における年齢的な相違について、幼若モルモットでは炎症性メディエーターの作用における年齢による相違が推定された。
IL-4およびIL-13受容体の下流にある細胞内シグナル伝達物質であるSTAT6において、新しい遺伝子多型性が認められたが、この新規多型は、exon1のGT繰り返し配列部位に認め、GT繰り返し数の相違により、13-16の4種類のアレルが認められ、アレルギー疾患群における特異性が推測された。
臨床的検討では、除湿機を設置した教室では湿度は有意に低下しダニ抗原量の増加を抑えることができたこと、ATS-DLD日本語版・改訂版の信頼性を ISAAC Video Questionnaire日本語版・改訂版と比較、検討したが、両者の結果に相関性がみられたこと、気管支喘息の小児のβ刺激薬の吸入治療前後での臨床症状の比較では、SpO2の変化はβ刺激薬の吸入による効果判定における有用性が推測されたこと、乳幼児の気道過敏性の測定では、呼吸抵抗(Rrs)、経皮的動脈血酸素分圧 (tcPO2)、動脈血酸素飽和度 (SPO2)の三者に有意な相関性があることがわかった。

気管支喘息の悪化要因としての感染因子と感染時の保健指導に関する研究

マウス神経上皮細胞はBMP2の添加により分化抑制に影響を受けること、RSウイルスはPAFによる好酸球活性化を増強すること、ケモカインが樹状細胞の分化に影響を与えること、インフルエンザAが気道上皮細胞の接着分子発現やサイトカイン産生に影響を与えることがわかった。
臨床的検討では、乳幼児における気道感染と喘息の発症についての検討で、RSウイルスに罹患した小児では気道過敏性の亢進がみられたこと、細気管支炎では鼻咽頭液中のECP、IL-8が高値であること、マイコプラズマ、クラミジアによる感染と喘息の悪化との関連がみられたことがわかった。

今後の課題

乳幼児気管支喘息の特徴と保健指導に関する研究では、炎症性メディエーターの作用における年齢による相違や細胞内シグナル伝達物質の遺伝子多型の解析を進め、小児の気管支喘息の発作を誘導する病態、治療薬の効果判定、環境調整の方法につき、今後とも症例を増やして検討していく予定である。
また、気管支喘息の悪化要因としての感染因子と感染時の保健指導に関する研究では、乳幼児及び小児の気管支喘息について、小児でのRSウイルス、ライノウイルスなどのウイルス感染やクラミジア感染が、各種サイトカイン産生や好酸球に影響を与え、気管支喘息の発症や発作の誘導に関与することが臨床的研究、および基礎的研究から推測されたが、来年度も各研究を継続し、小児の気管支喘息に対する的確な保健指導案の作成に繋げる予定である。

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