ぜん息などの情報館

3-3 高齢者の気管支ぜん息、慢性気管支炎、肺気腫の保健指導等に関する研究

研究代表者:木田 厚瑞

研究の目的

気管支ぜん息、慢性気管支炎、肺気腫は高齢者に多い疾患であり、罹患することにより頻発する発作や慢性呼吸不全により、患者の日常生活は大幅に制限される。
また、急性増悪や呼吸不全により生命の危険にさらされることも稀ではない。
患者が抱える問題点は多岐にわたっている。
こうした問題を解決し患者の健康回復を図るためには、患者を取りまく環境も含めた総合的な検討を実施することが必要である。
本研究では、高齢者の気管支ぜん息、慢性気管支炎、肺気腫の適切な管理方法のあり方とその環境づくりについて検討し、健康回復及び日常生活の向上に資することを目的とした。

12年度研究の対象及び方法

以下の4項目について研究を進めた。

  1. 高齢者連続剖検例における肺気腫の実態調査
  2. 高齢者の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の栄養学的研究
  3. QOL評価に関する研究
  4. 包括的呼吸リハビリテーションに関する研究

12年度研究成果

  1. 合併症とその治療
    COPDの合併症は多岐にわたることを明らかにした。
    その対策としては多面的なアプローチが必要であり、長期的な治療のあり方にこれらの情報を反映していくことが可能。
  2. QOL評価
    高齢者の疾病の治療にあたってはcure(治癒)よりcare(ケア)が大切であるといわれる。その際、生理的指標だけではなくQOLの評価が大切であり、本研究では診療現場で簡便に利用できる方法を確立した。
  3. 包括的呼吸リハビリテーションの展開
    包括的呼吸リハビリテーション・プログラムは現在、学会によるガイドラインが進められるに至るまで進歩してきた。治療の効率化という点で大きく貢献し得たと考えられる。

今後の課題

  1. 合併症の種類、その治療方法、予後に関する研究
    高齢者のCOPDの合併症では剖検により必ずしも把握できない機能的異常がある。
    これらには睡眠時呼吸障害、不整脈、うつ傾向などがある。
    また治療による有害事象もある。これらについても研究を進めていく必要がある。
  2. 栄養療法、運動療法のスタンダード化
    高齢患者の栄養療法、運動療法は薬物療法と並んでQOLに密接に関係し、しかも研究が立ち遅れている分野である。
    今後はこれらについて一般的に広く実施可能な方法を確立していく必要がある。
  3. QOL評価、outcome study、cost-effectiveness の相互関係の研究
    QOLの評価は救急受診、急性増悪などのoutcome studyと組み合わせて行う必要がある。
    しかもこれらはcost-effectivenessという視点がなければならない。
    これら三つの要素の相互の関係について研究を進める必要がある。
  4. home rehabilitationプログラムの確立
    包括的呼吸リハビリテーション・プログラム(1998年)により高齢者COPD、気管支ぜん息の長期的な管理についての方法が確立した。
    今後はこれをどのように維持するかについて検討を進めなければならない。
    すなわちhome rehabilitationプログラムの開発が必要である。
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