研究代表者:西牟田 敏之
小児気管支喘息の有病率はまだ増加傾向にあり、その殆どは乳幼児期に喘息発症リスクが高い乳児のスクリーニング法は、若干の見直しを要するとしてもほぼ確立してきており、それをどのように効率的な早期介入に結び付け、発症率の低減を実現させられるかが重要な課題である。
一方、小児喘息においては、的確な治療管理による発作予防対策により、約70%の症例を寛解に導入することが可能であり、早期治療介入と積極的な心身鍛練、そして治療効果を増大させるパートナーシップの構築が、寛解率増加の鍵を握っている。
こうした視点で、公健協会の助成による健康診査、健康相談、健康回復のソフト3事業の効果をさらに高めるために、発症リスク児対策としては従来の健康診査と相談事業の評価と見直しを行い、有機的連携の再構築を図り、既発症者対策としては学校と地域保健の連携により思春期喘息患者の教育を強化し、健康回復事業後の自己管理による水泳訓練法を提示するとともに、さらに積極的に幼児への水泳訓練導入法を提示することを目的としている。
今までの研究実績と協会助成事業を実施している20自治体の調査回答から、健康診査、相談両事業の有機的連携手法の整理点を明らかにした。
堺市の6歳時点での追跡調査を行い回収率は69.9%であった。
入力し終えた968人(男510、女458)における3歳時点の喘息罹患率は3.8%であったが、4ヵ月健診で湿疹・アトピー性皮膚炎があるか、両親にアレルギー疾患が1つ以上/祖父母に2つ以上あるハイリスク群では、非ハイリスク群に比して罹患率は1.9倍高かった。
四街道市1.6歳健診参加者についての3歳健診時の257人の追跡調査による 喘息有病率調査では、ハイリスク群4%(3/76)、喘息疑い群27%(6/22)、喘息群53%(17/32)、リスクなし群2%(2/127)であった。
水泳訓練を実施している38地方公共団体に実態調査を行った。
未就学児のみ対象2、就学児のみ対象16、両方が20自治体であり、1クール3ヵ月以内で1~2クール実施が大部分だった。水泳教室終了後も水泳を継続していたのは、未就学児43.2%、就学児25%で、事後にも自治体の水泳教室での継続希望が80%あった。 また、水泳教室参加者の症状変化は、寛解が未就学児19.9%、就学児12.6%で、軽症が前者64.8%、後者70.7%と極めて良好であった。
自己管理で継続する場合の基礎データとして、クロール泳ぎ1分法でのLT-speedと25mクロールベスト記録との相関分析は r=0.972(P<0.05)で、ベスト記録からのLT-speed推定の可能性があり、自己訓練への応用が期待された。