ぜん息などの情報館

2-3 小児気管支ぜん息の発症・変動因子に関する研究

代表者:眞弓 光文

研究の目的

小児気管支ぜん息の有症率は過去20年ほどの間に2~3倍に増加しており、発症予防による患者数を減少させることが求められている。気管支ぜん息の発症予防対策は一律に行うのではなく、個々人の素因の強弱に応じて行われるほうがより効率的であると思われるが、その判定に必要な気管支ぜん息の発症・変動に関する因子は未だ十分には解明されていない。

本研究は小児気管支ぜん息の発症やその変動に関わる因子を明らかにして、気管支ぜん息の発症の危険性を早期に予測することがどの程度可能であるかを明らかにすることを目的とする。危険性が予測できれば、危険性の高い小児に適切な治療や保健指導を実施し、最終的に小児気管支ぜん息患者を減少させることが期待される。

13年度研究の対象及び方法

今年度は3年計画の2年目として、倫理委員会で審査を受け研究実施の承認を得た手順に従って気管支ぜん息患者と対照者(最終的に500名と100名)からDNAを採取し、IL-4レセプターα鎖遺伝子多型(Ile50ValとArg551Gln)、γ-インターフェロンレセプター2遺伝子多型(Arg64Gln)、γ-インターフェロンレセプター1遺伝子多型、β2アドレナリンレセプター遺伝子多型(Arg16GlnとGln27Glu)、IL-4遺伝子多型(+33 C/T)、IL-18遺伝子多型(-105A/C)、IgEレセプター1β鎖遺伝子多型(-109)、CD14遺伝子多型(-159 T/C)、PAF acetylhydrolase遺伝子多型(Glu192Arg)、methylenetetrahydrofolate reductase遺伝子多型(677 C/T)の、10遺伝子12部位の遺伝子多型を解析して、その組み合わせも含めて、気管支ぜん息の発症・変動に関する因子とその寄与度および発症予測における役割を明らかにする。

各個研究として、ムスカリン受容体遺伝子とRANTES遺伝子の多型性の有無とぜん息との関係も検討する。得られた結果をぜん息の表現型に応じて層別解析するために、家族歴、個人歴、血清IgE値や抗原特異IgE値など血清生化学値も調査する。

また、今後、新たに気管支ぜん息に関係する有力な遺伝子が報告された場合に迅速に対応できるよう、集めたDNAとデータを保管する。さらに、気管支ぜん息発症の有無や各種の情報が6歳時点まで追跡できた小児1,300名の臍帯血清を保管し、遺伝子を用いた解析がより簡便と考えられる血清を用いた蛋白レベルでの解析で外挿できることが示された場合に対応する。

13年度研究成果

平成13年度は平成12年度との合計でぜん息患者487名と対照者83名から白血球を採取し、DNAを分離した。また、家族歴、個人歴、血清IgE値や抗原特異IgE値など血清生化学値も調査した。

ぜん息患者では3年間の目標数の約95%、対照者では約80%を本年度中に収集できた。採取したDNAを用いて上記調査対象10遺伝子12部位の多型の有無を検索し、これまでに約80%の検査を終了した。その結果は患者情報と共に匿名化して保管し、データベースを作成して、来年度に行う統計処理に備えた。検査対象遺伝子多型に追加して、ムスカリン受容体遺伝子、RANTES遺伝子の遺伝子多型の有無を解析し、そのぜん息との関連についても検討した。提供者の許可が得られたDNAはバンクとして管理し、今後の研究の進歩に迅速に対応出来るように準備することも、順調に進行した。さらに、昨年度までに収集した 1,300名の臍帯血清も研究計画に従って昨年に引き続き保管された。

このように、平成13年度の研究は、3年計画の2年目として、計画通り順調に遂行された。今年度までの結果を受けて、最終年度である14年度中に当初計画された気管支ぜん息患者500名および対照者100名のDNAと情報を収集し、遺伝子多型解析を終了させて、遺伝子多型による気管支ぜん息の発症予測の精度がどの程度正確であるかを明らかにすることにより、気管支ぜん息の発症予測に基づく発症予防の可能性を明らかにする予定である。

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