ぜん息などの情報館

1-2 乳幼児のぜん息ハイリスク群を対象とした保健指導の実践および評価手法に関する調査研究

代表者:新宅 治夫

研究の概要・目的

喘息発症予防および軽減を目標に乳幼児期に実施している自治体のアレルギー・喘息予防教室に資することを目的として、保健指導(介入)による効果の検討および保健事業の評価に関する検討を行う。1歳6か月児健診で喘息に関連する気道症状の有無によりスクリーニングした喘息発症ハイリスク幼児に対して環境整備などの保健指導を行い、3歳児健診にて保健指導の効果をその後の喘息発症の有無により比較検討する。また、自治体で実施している教室における経年的な集計データおよびアレルギー検査結果をもとに事業評価を行う。

年度ごとの研究目標(計画)

平成18年度

  1. 幼児期における小児気管支喘息の予防と介入の効果に関する検討
    前期の委託研究(森川班)でスクリーニングおよび保健指導を行った児が3歳児健診を受診したので、1歳6か月健診におけるデータと照合し、3歳児における喘息発症および関連する要因を検討する。このことから、保健指導の効果および影響する因子などを検討する。
  2. 乳幼児期の喘息・アレルギー予防教室の現状分析と保健指導の意義に関する検討
    アレルギー・喘息予防教室開始当初からの集計データの分析およびアレルギー・予防教室から依頼したアレルギー血液検査結果について分析を行う。好酸球数、IgE、RASTスコアと家族歴、湿疹などの症状との関連を検討する。

平成19年度

  1. 幼児期における小児気管支喘息の予防と介入の効果に関する検討
    前期の委託研究(森川班)でスクリーニングおよび保健指導を行った児が3歳児健診を受診したので、1歳6か月健診におけるデータと照合し、3歳児における喘息発症および関連する要因を検討する。このことから、保健指導の効果および影響する因子などを検討する。
  2. 乳幼児期の喘息・アレルギー予防教室の現状分析と保健指導の意義に関する検討
    アレルギー・喘息予防教室から紹介した児の3歳児における喘息発症の有無を追跡し、血液検査結果と比較検討する。また、パイロットとして、喘息患児を対象に喫煙家族のいる児の唾液中コチニン測定、呼気中のNO測定などを行う。

平成20年度

  1. 幼児期における小児気管支喘息の予防と保健指導(介入)の効果に関する検討
    喘息発症予防を目的とした保健指導(介入)による効果と意義について検討するとともに、喘息発症のハイリスクを検討することで、乳幼児期における喘息発症を予防するために行っているスクリーニング項目の有用性についても併せて検討を行う。
  2. 乳幼児期の喘息・アレルギー予防教室の現状分析と保健指導の意義に関する検討
    乳幼児期の喘息・アレルギー予防教室の現状分析を様々な観点から分析を実施すること、喘息患児の唾液中コチニン測定とその意義に関すること、呼気中一酸化窒素(NO)濃度の測定とその意義に関することなど、それぞれについて検証すると伴に分析を行う。

3年間の研究成果

平成18年度

  1. 幼児期における小児気管支喘息の予防と介入の効果に関する検討
    1歳6か月健診時に積極的に保健指導(介入)した群では、3歳児での喘息発症14.9%と通常群21.0%より低かった。また、掃除回数などに行動の変化傾向が認められた。
  2. 乳幼児期の喘息・アレルギー予防教室の現状分析と保健指導の意義に関する検討
    乳児期にアレルギー検査陽性率は66.7%、幼児期アレルギー検査陽性率は63.1%であり、陽性群で乳児期は湿疹、幼児期はアレルギー家族歴の頻度に高い傾向を示した。

平成19年度

  1. 幼児期における小児気管支喘息の予防と介入の効果に関する検討
    3歳における喘息発症より、乳幼児期のスクリーニング項目の妥当性が検討できた。また乳児期の保健指導は1歳6か月で喘息発症が減る傾向を認めたが3歳では差はない。一方、1歳6か月における保健指導は3歳で喘息発症を軽減させる可能性を示唆できた。
  2. 乳幼児期の喘息・アレルギー予防教室の現状分析と保健指導の意義に関する検討
    乳児期アレルギー検査で、好酸球数、総IgE値は、3歳での喘息発症と関連性を認めたが、IgE-RASTは関連が少なかった。唾液中コチニン測定は、家族の喫煙を反映し、禁煙指導に有用である。また、呼気中NO測定は、喘息患児の気道炎症を反映することが示唆できた。

平成20年度

  1. 幼児期における小児気管支喘息の予防と保健指導(介入)の効果に関する検討
    乳児健診に評価しうる小児ぜん息の家族歴、乳児期早期で喘鳴や喘息などの項目によるスクリーニングは有用であることが明らかとなったため、自治体で実施しているアレルギー・喘息予防教室の喘息スクリーニング法の妥当性を示唆できた。
  2. 乳幼児期の喘息・アレルギー予防教室の現状分析と保健指導の意義に関する検討
    乳児期のアトピー性皮膚炎に関するアレルゲン診断、および、乳児期の血液検査から喘息発症のリスクを評価できることが明らかとなったため、喘息・アレルギー予防教室で実施されている血液検査の有用性を明らかにできた。また、保健指導を行っている行動変容の評価指標として、唾液中のコチニン測定、呼気中のNO測定は有用であることを示唆できた。

評価結果

平成18年度

積極的な保健指導によりぜん息の発症が減少している事実は有意義であるが、分析、介入の方法をもっと明確にし、有効な方法を調査しつつ、過去の同様な研究と異なる新しい発見をし、保健指導のマニュアル化することを目標に取り組むことを期待する意見があった。

平成19年度

乳幼児期の予防教室、保健指導の成果、発症のリスクファクターをコホート研究により明らかにした点は意義がある。さらに唾液コチニン濃度が受動喫煙の乳幼児の指標としてどの程度信頼のおけるものであるかについてのさらなる検討や、乳幼児における症状の指標としての呼気NOの有用性に関するさらなる検討などを求める意見があった。

平成20年度

保健指導の有無、及びそのあり方によって乳幼児におけるぜん息の容態改善度が異なることから、その効果が実証されたことや、呼気NO濃度の測定により、ぜん息の病態把握が可能であることなどが示されたことを評価する意見があった。一方、ハイリスク群が胎児期の母親の因子(遺伝的要因、環境要因)によって、どのように異なってくるか、どの程度の寄与を持っているか、更なる検討を求める意見があった。

1-2 乳幼児のぜん息ハイリスク群を対象とした保健指導の実践および評価手法に関する調査研究

このページの先頭へ