ぜん息などの情報館

2-1 気管支喘息患者の年齢階層毎の長期経過・予後に関する研究

代表者:秋山 一男

研究の概要・目的

小児、成人とも気管支喘息患者に関する長期経過を見据えた予後の調査研究は少ない。本研究課題においては、ワーキンググループを小児喘息グループと成人喘息グループに分け、小児WGにおいては、長期的展望を見据えた予後システムの構築とソフト3事業等の患者相談、健康診査、機能訓練の成果の検証を行なう。成人WGにおいては、社会人である成人の特殊性を考慮した、より効果的な患者教育法と予後調査システムの検討を行なう。小児・成人喘息とも長期的展望を持った予後調査システムを確立することにより、ソフト3事業等の参加者と非参加者との経過、予後の比較等により事業効果を評価することが可能となる。

年度ごとの研究目標(計画)

平成18年度

小児WGでは、喘息852名のうち1年間ファローした194名について分析した。1年後の症状は多くは改善するが10%程度が悪化していた。治療ステップは、症状に合わせて調整されていた。環境整備は十分に実施されていないことが明らかになった。学校でのアレルギー教育では、今年度は学校側の環境を調査した。喘息キャンプでは昨年度に引き続き運動誘発試験による気道過敏性評価を実施し改善している参加者がいた。成人WGでは、成人喘息長期管理に関する調査では、全国26施設から合計2497例の回答が得られた。ソフト3事業の各事業への過去の参加率は、喘息専門医による相談事業が17%、ついで喘息専門医の講演会が14%で多くを占めたが、自治体主催の事業への参加よりも受診中の施設主催の事業への参加が多くを占めた。小児WG、成人WGとも、前期においてほぼ確立したシステムを活用した調査の本格的運用を本年度から開始したといえる。

平成19年度

小児グループでは、平成15年度から開始した長期にわたる大規模気管支喘息予後調査を継続すること、呼気一酸化窒素ガスを指標にした気道過敏性の評価、子どもたちが楽しく喘息の勉強ができる効果的喘息キャンプの実施と評価を行うことで、ガイドラインに基づいた治療による予後を経年的に評価し、治療効果、環境要因との分析を行った。成人グループでは、 [全体研究]I.レセプト解析による本邦の喘息医療実態 -経年変化(平成11年、15年、19年)と予後に与える因子の研究、II.大気環境と喘息増悪、特に黄砂飛散が喘息増悪に及ぼす影響、III.成人喘息の各年代の病因、長期経過、予後の検討、[個別研究]IV.若年軽症喘息患者における小児喘息既往の影響、V.中高年重症喘息患者における罹病期間とリモデリングの関連、VI.屋外環境真菌、特にCladosporiumとAlternaria飛散と喘息増悪との関連、VII.平成18年度に新規受診した成人および小児気管支喘息患者のiA-netによる解析、VIII.気管支喘息長期管理における増悪原因としての環境因子の影響に関する検討、IX.薬剤師および看護師・保健師における喘息ガイドラインの認知推進および喘息患者指導への関わりについての研究を行った。

平成20年度

小児グループでは、(1)小児気管支喘息予後調査に関すること、(2)呼気NOを指標とした小児気管支喘息長期予後に関する検討に関すること、(3) 効果的な喘息キャンプへの取り組みに関することについて各々検討することを目的とする。 成人グループでは、成人喘息の長期経過・予後調査及びその予知法の確立に関する分野の研究として、(1)レセプト解析による本邦喘息医療の実態と有病率、予後に寄与する因子の研究、(2)若年成人喘息患者における肺機能、気道過敏性、気道炎症からの重症度評価と持続的気流閉塞、(3)日本人成人喘息患者における重症化因子とリモデリングのリスクファクター、(4)成人及び小児気管支喘息患者の経年的呼吸機能の解析を行う。また、環境が喘息増悪に及ぼす影響に関する研究として、(5)屋内環境に存在する新規昆虫アレルゲンと成人喘息、(6)屋外粉塵と喘息増悪の関連、更に、ソフト3事業、ガイドライン普及などに関する調査として、(7)成人喘息患者におけるソフト3事業の利用経験と希望調査、(8)喘息予防・管理ガイドラインの普及及び患者指導,病診連携に関する研究を行った。

3年間の研究成果

平成18年度

小児WGでは、喘息852名のうち1年間ファローした194名について分析した。1年後の症状は多くは改善するが10%程度が悪化していた。治療ステップは、症状に合わせて調整されていた。環境整備は十分に実施されていないことが明らかになった。学校でのアレルギー教育では、今年度は学校側の環境を調査した。喘息キャンプでは昨年度に引き続き運動誘発試験による気道過敏性評価を実施し改善している参加者がいた。成人WGでは、成人喘息長期管理に関する調査では、全国26施設から合計2497例の回答が得られた。ソフト3事業の各事業への過去の参加率は、喘息専門医による相談事業が17%、ついで喘息専門医の講演会が14%で多くを占めたが、自治体主催の事業への参加よりも受診中の施設主催の事業への参加が多くを占めた。小児WG、成人WGとも、前期においてほぼ確立したシステムを活用した調査の本格的運用を本年度から開始したといえる。

平成19年度

小児グループでは、平成17年度末までに1234名の予後調査対象者が登録された。今年度登録から1~1年半での582名の解析を行い、治療内容、重症度が変化していることがわかり、登録時に重症なことアトピー性皮膚炎を合併していると父親にアレルギー性疾患を有することが発作残存に影響していることがわかった。呼気一酸化窒素は気道炎症の有用な指標とされているので予後を予測する因子としての結果が期待される。小児への喘息教育としてインターラクティブは喘息キャンプでの勉強プログラムは、その効果が期待される。成人グループでは、レセプト解析の基準の設定を終了し、解析に着手した。気象庁の黄砂飛散観察点とその地点に近い喘息発作を加療する救急専門施設の選定を終了し、集計を開始した。iA-netによる患者登録を班員施設で入力中で、最終年度の解析に備えている。各個研究は、症例の蓄積等を行っている。

平成20年度

小児グループでは、喘息治療ガイドラインの普及に伴い、吸入ステロイド薬の効果による小児喘息患者の喘息死数、入院患者数が大きく減少したが、更に長期的予後に関する改善を調査した結果、主治医が症状に応じて治療薬を変えていることが判明し、本来の重症度にあった治療がされていることがわかった。一方、環境因子(受動喫煙・ダニアレルゲン量)について、重症である児の家庭よりも軽症である児の家庭では十分にフォローされていないことも判明した。現在まだ2年間であり予後を見て行くには、今後薬剤のステップダウンの状況をみながら最終的に本来の重症度が間欠型になる寛解者の人数がどれだけいるかを見ていく必要がある。

成人グループでの調査研究結果として、レセプト解析、軽症喘息の真の重症度解析、日本人の重症化因子は、症例数も十分であり、日本初の非常に重要な成果が得られた。この内容を国内外に情報発信し、特に今回重要な危険因子と考えられた要因(ICS非使用、喫煙、長期罹病など)に対する対応策やその効果も今後検証する必要があると考えられる。

評価結果

平成18年度

長期経過と予後調査を行うこのシステムは非常に有益であり、ソフト3事業の評価に役立つことを期待するとともに、レセプト解析を正確に行うこと、成人の寛解について更に調査を望むなどの意見があった。また、サルメテロールとモンテルカストのどちらが有効かという検討など主旨に合わない部分もあるという意見があった。

平成19年度

小児気管支喘息に関する研究については、受動喫煙への取り組み意義の有用性、呼気NOを指標としたICS中止後の経過などの研究は意義が大きい。今後は、小児喘息で吸入ステロイドの普及によってアウトグローはどのように変化したか、また、長期寛解状態に入った患者の気道過敏性・気道炎症はどのような状態にあるのか等、解明できれば非常に有益な研究となる。成人喘息に関する研究については、IAネットを用いた解析(Persistent airflow limitation , PAL)はアスピリン喘息、年齢、罹病年数、喫煙がPALの関与因子であることが判明したことは今後の検討課題を明確にしたこととして評価できることなどの意見があった。

平成20年度

小児喘息の長期的予後を見すえた追跡システムが確実に進行していることは、貴重な資料が得られてきているため、今後このシステムを継続し、さらに長期のfollow ができるようにすることが望まれるとの意見があった。また、保険レセプトを用いた成人喘息の有病率、治療反応、コスト効果などの評価、縦断的分析は、極めて将来性が高いと期待でき、国際比較を含めて更に研究を進めることを望むとの意見があった。

2-1 気管支喘息患者の年齢階層毎の長期経過・予後に関する研究

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