ぜん息などの情報館

1-2-2 健康診査事業の効果的な実践及び改善のための評価手法に関する調査研究

代表者:望月 博之

研究の概要・目的

近年、喘息の治療技術は明らかに進歩しており、また、喘息の発症予防及び軽減化を目的に早期介入も実施されているが、乳幼児での予防法・治療法の評価を明確に行いえた疫学的検討は数少ない。本研究では喘息の主要な症状である喘鳴と咳嗽について注目し、これらの客観的な評価法を考案することを計画した。すなわち、喘鳴と咳嗽を簡便に、非侵襲的に数値化するため、乳幼児での肺音測定装置を用いた評価法と、自作の咳嗽モニターによる咳嗽の評価法を確立させることを目的とした。これらの評価法により優れた効果判定を行うことができれば、乳児喘息の診断、経過観察、さらには種々の早期介入法の有用性について、極めて明確な評価を行うことができる。

年度ごとの研究目標(計画)

平成21年度

  1. 肺音解析により、喘息と診断される前の状態や喘息の初期で軽症である乳幼児の気道の評価、さらには乳幼児の治療効果の判定を行うことを念頭に置き、(a)乳幼児の疾患別による呼吸音最高周波数の相違、(b)β2刺激薬の吸入前後の呼吸音最高周波数の変化、(c)年齢による呼吸音最高周波数の正常値の算出を検討する。
  2. 乳幼児における咳嗽の頻度、性状等の評価や、治療や指導の効果判定を行うことを念頭に置き、小児用の咳嗽カウンターの開発を行う。(a)実測の咳嗽回数と咳嗽カウンターの測定数が90%以上の整合性を持つこと、(b)安全性の確認を目的とする。

平成22年度

  1. 肺音解析により、喘息と診断される前の状態や喘息の初期で軽症である乳幼児の気道の評価、さらには乳幼児の治療効果の判定を行うことを念頭に置き、(a)乳幼児の疾患別による呼吸音最高周波数の相違、(b)β2刺激薬の吸入前後の呼吸音最高周波数の変化、(c)年齢による呼吸音最高周波数の正常値の算出を検討する。
  2. 小児の咳嗽の特性を念頭に置き、治療や指導の評価判定が可能な小児用の咳嗽モニターを完成させる。(a)実測の咳嗽回数と咳嗽モニターの測定数が90%以上の整合性を持つこと、(b)簡便なプロトコールによる小児の睡眠中の咳嗽の評価法を考案する。

3年間の研究成果

平成21年度

  1. 吸気音最高周波数は、安定期に比して悪化期に有意に上昇した。また、β2刺激薬吸入前後の比較では、吸入後に有意な低下がみられた。β2刺激薬吸入前後の吸気音最高周波数の変化は、安定期では喘息群と喘鳴群では有意差を認めなかったが、喘息群と健常群、喘鳴群と健常群では有意差が認められた。一方、悪化期では、喘息群は喘鳴群に比較し、吸気音最高周波数の変化が有意に大きいことが認められた。
  2. 最適な機器のためのパーツの選定(マイクロフォンと加速度計とレコーダー)が行われ、マイクロフォンと加速度計を設置する部位、解析ソフトの選択が行われた。感度を調整し、成人では実測の咳嗽回数と咳嗽カウンターの測定数に90%以上の整合性がみられる段階に達した。

平成22年度

  1. 吸気音最高周波数は、5歳以下の小児の疾患別の肺音解析により、喘息では安定期に比して悪化期に有意に上昇し、β2刺激薬吸入前後で吸入後に有意な低下がみられた。β2刺激薬吸入前後の呼吸音最高周波数の変化は、喘息群と健常群、喘鳴群と健常群では有意差が認められた。β2刺激薬の吸入前後の吸気音最高周波数の変化を基にROC曲線を求め、乳幼児喘息のcut-off値が算出された。年齢による吸気音最高周波数の正常値は進行中である。
  2. 最適な機器のためのパーツの選定が行われ、解析ソフトが改良された。実測の咳嗽回数と咳嗽モニターの測定数にほぼ100%の整合性がみられるに至った。

評価結果

平成21年度

平成21年度評価結果(PDF:86KB)

平成22年度

平成22年度評価結果(PDF:48KB)

平成23年度

平成23年度評価結果(PDF:139KB)

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