ぜん息などの情報館

1-5-1 ぜん息患者の自立を支援する長期管理に関する調査研究

代表者:大矢 幸弘

研究の概要・目的

小児・思春期のぜん息患者のコントロールと長期的な予後を改善するためには、患者とその家族が治療に主体的に取り組む姿勢を引き出し支援することが必要である。そのためには従来型の知識を与えるだけの一方的な患者教育では効果が不十分なため、個別指導法の開発・検討、独自の行動科学的アプローチを取り入れた「テーラー化教育プログラム」の開発を行った。本研究の進展により、良好な長期予後をもたらすために必要な患者教育における具体的なノウハウが明らかとなり、診療現場や予防に取り組む保健医療機関や教育機関の介入力を向上させ、さらには我が国の医療費の削減と国民の健康の増進にも貢献することが期待される。

年度ごとの研究目標(計画)

平成21年度

本研究は、エビデンス水準の高い内外の先行研究の結果に基づいて、喘息患者への教育的介入法を開発しようとするものである。前年度までの研究成果をもとに日本のガイドライン用に作成した「喘息個別対応プラン(アクションプラン)」について、有用性の検証や有効な活用法についての検討を行い、必要に応じて改訂版を作成する。独自の行動科学的アプローチを取り入れて作成した「吸入指導マニュアル」「ぜん息指導簡易マニュアル」などを用いた個別指導法や、学校での個別介入についてその有効性を検討する。さらに本研究では喘息児の養育者に対して介入すべきポイントをコンピューターにプログラミング化し、行動科学的な視点からテーラー化した教育をシステマティックに行うツールを開発する。

平成22年度

  1. 臨床現場の意見を取り入れた個別対応プラン(アクションプラン)の改訂を行うと同時に、個別対応プラン(アクションプラン)の指示法の違いにより患者の対応や臨床経過に差異が生ずるかを検討する。
  2. アドヒアランスの低下が問題となる学童期後半から思春期のぜん息患者に対して個別介入を行い、その方法とその効果について検証する。
  3. アドヒアランスの測定尺度の実態を調査する。学校現場における思春期ぜん息患者への教育を行う。
  4. 1.~3.の結果を集約し、パソコンを利用したテイラー化ぜん息教育プログラムを開発しつつ、その評価を行う。

3年間の研究成果

平成21年度

平成20年度に作成した喘息個別対応プランの有効性を示すことができなかったが、問題点を改善した新しい喘息個別対応プランを作成した。喘息発作時における家庭でのβ2刺激薬吸入を個別対応プランで提示することで発作に適切に対応することが可能であった。行動科学的アプローチを取り入れた吸入指導マニュアルは、養育者のQOLが有意に改善した。年長の小児喘息患者のアドヒアランス維持に関する研究では、定期通院している患者は、発作頻度の減少を実感する自己効力感が高いと考えられた。学校現場での介入研究では、医療機関を受診しないものを含む思春期の喘息患者への直接的な患者教育は、知識の獲得だけではなく、受療行動や服薬行動のアドヒアランスの向上に有効であることが示唆された。喘息患児の保護者を対象としたテーラー化教育プログラムは、既存の行動科学に関する理論に本研究班のこれまでの研究成果を盛り込みつつ試行版を作成した。

平成22年度

  1. 各研究者が所属する医療機関でコメディカルスタッフや患者に協力してもらい、個別対応プラン(アクションプラン)を使いやすいものに改良した。
  2. 約100名の思春期患者に個別介入調査を行い、介入群は非介入群に比べて受診状況・発作コントロール状況共に有意な改善を認めた。
  3. アドヒアランスの測定尺度としてはMMAS,MARS,ASK-20が発表されているがいずれも英語版であった。また、私立中高にて患者向けの教育を行った。
  4. テイラー化プログラムをタッチパネルパソコンに組み込み、実際に患者に使用する段階まで進んだ。

評価結果

平成21年度

平成21年度評価結果(PDF:78KB)

平成22年度

平成22年度評価結果(PDF:44KB)

平成23年度

平成23年度評価結果(PDF:136KB)

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