ぜん息などの情報館

1-5-2 気道炎症評価にもとづく小児ぜんそく患者の効果的な長期管理法と自己管理支援の確立に関する調査研究

代表者:藤澤 隆夫

研究の概要・目的

小児気管支喘息の治療目標には急性発作や喘息死を防ぐことだけでなく、健康児と同様の活発な日常生活を保障することも含まれる。しかし、運動誘発の症状(EIA)が起こるために、子どもらしい活動性が制限されている児は少なくない。EIAは気道炎症に引き続く気道過敏性に起因するものであり、気道炎症の十分なコントロールが必須である。そこで、本研究では小児喘息患者の健康の回復・増進をめざして気道炎症モニタリングを取り入れた長期管理および自己管理指導に関する調査研究を行う。気道炎症モニタリングに卓上型NOアナライザーを使用、健康診査事業に応用可能となるよう呼気NO測定の実用化もめざす。

年度ごとの研究目標(計画)

平成21年度

  1. 小学生における運動誘発喘息と気道炎症、身体活動の実態解明
    国際的アレルギー疾患疫学調査であるISAAC調査票を用いて、EIAの有症率と呼気NO、呼吸機能、加速度計測装置付歩数計による身体活動レベルの関連を解析、喘息児の身体活動回復支援に必要な要件を明らかにする。
  2. 呼気NOモニタリングを利用した喘息自己管理向上
    喘息キャンプおよび喘息外来において、アドヒアランスと呼気NO値変動との関連を解析、さらに、アドヒアランス不良例に対して呼気NO値フィードバックによる介入研究を行う。
  3. 気道炎症評価を取り入れた吸入ステロイド中止基準確立
    吸入ステロイドによりコントロールされた患者で、吸入ステロイド中止後の経過を前向きに追跡して、予後に関連する因子を明らかにし、安全な中止基準の確立をめざす。

平成22年度

  1. 呼気NO小児基準値とぜん息鑑別のためのカットオフ値の確立
    一般の小学生を対象に、NIOX MINO®(Aerocrine社製)を用いて呼気NOを測定、ISAAC質問表、呼吸機能その他の背景情報によりデータを解析する。
  2. 呼気NOの適正な測定条件の確立
    他の測定機器との比較、測定環境による影響の解析などを行う。
  3. 呼気NO測定の臨床応用
    運動誘発ぜん息の発見と予防、ぜん息キャンプの評価、アドヒアランスの評価と改善などを行う。

3年間の研究成果

平成21年度

  1. ISSACによるEIA有症者では呼気NO値が有意に高値で、呼吸機能の低下、身体活動量の低下もみられた。EIAは喘息児の身体・QOLに大きな影響を与えていること、今回の手法で治療必要例の的確な同定ができることが明らかとなった。
  2. アドヒアランス不良者は呼気NO高値の傾向があり、キャンプなどの介入で低下することが明らかとなった。バイオフィードバックによる介入研究のプロトコールを確定した。
  3. 吸入ステロイド中止後6ヶ月までに再燃する例は中止前の重症度がより重症で、アレルギー性鼻炎を合併すること、さらに中止後に呼気NOが上昇することが明らかとなった。

平成22年度

  1. 小学1~6年生の460名(呼気NO測定可能457名)の協力を得て、呼気NOの小児基準値、カットオフ値を確立した。
  2. NOアナライザーNIOX MINOがATS/ERS標準法に準拠する別の大型アナライザーとほぼ同一のデータが得られることを確認、適正な測定条件も明らかにした。
  3. ぜん息児の中でも運動誘発ぜん息をもつ児は呼気NOがより高値であること、有効なぜん息キャンプを呼気NOを指標としても評価できること、呼気NOがアドヒアランス不良で上昇し、測定値のバイオフィードバック手法はアドヒアランスを改善させることなどを明らかとした。

評価結果

平成21年度

平成21年度評価結果(PDF:81KB)

平成22年度

平成22年度評価結果(PDF:49KB)

平成23年度

平成23年度評価結果(PDF:145KB)

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