ぜん息などの情報館

2-3. 吸入アレルゲン回避のための室内環境整備の手法と予防効果

代表者: 福冨 友馬(国立病院機構相模原病院)

研究の概要・目的

室内アレルゲン対策方法として、特にダニやペットに関してはすでに確立しているが、「①患者ごとの原因アレルゲンの同定方法に関する指針」、「②原因アレルゲンの回避法の普及」、「③真菌に関するアレルゲン対策、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の早期診断や長期管理の指標」、「④室内昆虫(チャタテムシなど)の、実際の日本の室内環境中の昆虫種や抗原量、対策」については、現在の臨床現場ではまだ不十分であると考えられる。本研究では、上記①から④の事項を明確に提示し、医師から患者まで広く普及することにより、喘息の健康回復、発症予防に繋げることを目的とする。
① 医師向け(専門医、一般医)に原因アレルゲン同定方法に関する手引きを作成する。
② 原因アレルゲンの回避方法の知識普及として、専門医向けの解説書、一般医の手引き及び患者向け手引きを作成する。
③ 真菌に関するアレルゲン対策、ABPAの早期診断や長期管理の指標を明らかにする。
④ 新規重要アレルゲンである昆虫抗原の室内汚染状況及び臨床的意義を明らかにし、対策方法を提示する。

年度ごとの研究目標(計画)

平成24年度

① 原因アレルゲン同定方法に関する手引き
全国10名以上の専門家のタスクフォースとして素案を作成する。
② 原因アレルゲンの回避方法の知識普及
室内アレルゲンに関するエビデンスを確認し、素案を作成する。

  • 専門医向けの解説書について、
    環境再生保全機構(旧公害健康被害補償予防協会)が1998年に発行した「“気管支ぜんそくに関わる家庭内吸入アレルゲン、現在の知見とその対策” 小屋、永倉編集」の改訂版を意識した、「現在における家庭内吸入アレルゲンの新知見と対策(仮題)」を、基礎的、臨床的にエビデンスに基づき記述し1冊の本へまとめ、専門医向けの解説書とする。
  • 一般医向けの手引きについて、
    専門医向けの内容を一般医向けに臨床に必要な点に絞って、アレルゲンごとにわかりやすくエッセンスをまとめる。
  • 患者向けの手引きについて、
    患者自身がどのアレルゲンに陽性であるかを自己チェックできるものとし、その内容では各アレルゲンの説明とそれに対する具体的対策を一般にも理解しやすいように一冊の本にまとめるように進める。

③ 真菌に関するアレルゲン対策、ABPAの早期診断や長期管理の指標
真菌アレルゲンの室内汚染状況を調査するとともに、ABPAの早期診断や増悪抑制の方法を検索する。
④ 昆虫抗原の室内汚染状況と臨床的意義
新規重要アレルゲンである昆虫抗原の室内汚染状況を調査する。また、喘息患者における昆虫アレルゲン感作症例と非感作症例を比較し、その家屋での昆虫アレルゲンの汚染状況を比較する(研究準備)。

平成25年度

① 原因アレルゲン同定方法に関する手引き
平成24年度から継続して、手引きを作成し、取りまとめを行う。
② 原因アレルゲンの回避方法の知識普及
平成24年度から継続して、解説書及び手引きを作成し、取りまとめを行う。
③ 真菌に関するアレルゲン対策、ABPAの早期診断や長期管理の指標
真菌アレルゲンの室内汚染状況を調査し、真菌に関するアレルゲン対策とABPAの早期診断や増悪抑制の方法を提案する。気管支拡張症の有無により、感作プロファイルの差異を検討し、拡張症に関与する真菌種や感作抗原を考察する。
④ 昆虫抗原の室内汚染状況と臨床的意義
新規重要アレルゲンである昆虫抗原の室内汚染状況及び臨床的意義を明らかにする。喘息患者における昆虫アレルゲン感作症例と非感作症例を比較し、その家屋での昆虫アレルゲンの汚染状況を比較する(実施とデータ解析)。

2年間の研究成果

平成24年度

①アレルゲンの感作頻度と、他のアレルゲンとの交差反応性を文献的な考察とアレルゲンタンパクの相同性の観点から検討し、特に重要と思われるもの12項目を取り上げて「気道アレルギーの原因アレルゲンスクリーニングパネル(素案)」を作成した。
②a)-c)の執筆グループを編成し、執筆を行った。
③関東地方の20件の家屋で環境調査を実施し、室内環境中にAspergillus属真菌が多いことが明らかになった。ABPAの診断にrAsp f 1特異的IgE抗体価が有用であることを明らかになった。
④関東地方の20件の家屋で環境調査を実施したところ、チャタテムシは99%の室内塵で検出され、この昆虫が、室内環境で一般的な昆虫であることが明らかになった。

平成25年度

①スクリーニングパネルのアレルゲン感作率の地域差について検討したところ、アレルゲン感作率の地域差が明らかになった。スクリーニングパネル11項目に関しては、全国統一としたが、各地域で特に重要な必須項目(5-6項目)に関しては明らかな地域差が認められたため、北海道と沖縄では別に定めた。
②室内アレルゲンにおけるエビデンスを蓄積し、a)専門医向けの解説書、b)一般医向けの手引き、c)患者向けの手引きについてを執筆した。
③ABPAは Asp f 1-IgEとAsp f 2-IgEで効率よく診断できることが明らかになった。
④ヒラタチャタテは皮内テストによる感作率40%、血液特異的IgE抗体価検査による感作率22%であり、極めて陽性率の高いアレルゲンであることが明らかになった。

評価結果

平成24年度

平成24年度評価結果(PDF:81KB)

平成25年度

平成25年度評価結果(PDF:82KB)

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