ぜん息などの情報館

2-4-2. 客観的指標による喘息コントロール状態の評価

代表者: 大田 健(国立病院機構東京病院)

研究の概要・目的

本研究では、第8期で作成した患者教育用のテキストを用いて、患者教育を実行し、指導前後でぜん息のコントロール状態を様々な客観的指標により評価し、ぜん息患者の病型、年齢階層、重症度などからの層別解析を行う。以上の検討を通じて、本研究は、成人喘息治療に対する効果的な保健指導の確立および自己管理に基づく適切なぜん息治療やぜん息死ゼロ作戦の実現に貢献することを目指す。
①第8期で作成した「ぜん息テキスト」を用いて保健指導を実行する。
②ACT、鼻炎合併例に有用なSACRA 質問票、AHQ-33による状態の評価をする。
③コントロール状態をFeNO、モストグラフによる呼吸抵抗値という新たな指標も取り入れ評価する。
④自己管理に有用な自己評価の指標としてGINAおよびJGLガイドラインに沿ったコントロールの評価を検証する。
⑤対象患者の病型、年齢階層、重症度等による層別解析を行い、保健指導の評価に有用なコントロールの客観的指標を探索する。

年度ごとの研究目標(計画)

平成24年度

第8期で作成した患者教育用テキストを用いて患者の教育を実行し、ぜん息の病態と長期管理の必要性、吸入療法の利点と弱点、吸入ステロイドの安全性、ぜん息発作時の対応などの理解を促し、今後のきめ細かい患者指導内容の確立に資するよう、FeNOやモストグラフあるいは新規の客観的指標の検索を各施設で進める。特に患者教育指導と関わりの深い指標を選定し、新規の指標の有用性・従来の指標との関連性を検討する。また、現在改訂中の喘息予防・管理ガイドラインに合わせ患者教育用テキストの改訂を行う。

平成25年度

平成24年度に引き続き、患者教育用のテキストを用いて患者の教育を実行し、ぜん息の病態と長期管理の必要性、吸入療法の利点と弱点、吸入ステロイドの安全性、ぜん息発作時の対応などの理解を促し、FeNOやモストグラフあるいは新規の客観的指標の検索を各施設で進める。FeNOやモストグラフおよび各施設で探索した新規の客観的指標について得られる知見を取り込んで患者指導用テキストの改訂を行う。

2年間の研究成果

平成24年度

「ぜん息テキスト」について、喘息の病態、治療、自己管理に必要な情報が網羅されていることから高い評価を得ており、JGL2012に含まれる最新の情報を取り込み、改訂作業を行った。各施設において、指導患者の合計200例以上を目標にし、テキストを用いた指導を行った。モストグラフ法を、従来行ってきた気道可逆性試験のスパイログラムに加えて実施し、症例を蓄積した。患者背景因子の解析では喘息増悪との関連性が最も高かったのは前年度の増悪であり、喘息増悪の予知因子として、過去の増悪の既往歴は最も重要な客観的評価項目の一つであると考えられる。また、喘息におけるCOPD併存の臨床的特徴や簡便な鑑別方法を明らかにするためCOPD併存例の臨床的特徴について症例を蓄積した。

平成25年度

「ぜん息テキスト」について、研究班を構成する各施設で、計171例に用いて指導を行った。その結果、喘息指導の8週間後に評価したACTとQOLは有意に改善し、指導後のACTの改善度とQOLの改善度の間には相関がみられた。重症度や背景因子からみた改善度の解析では、女性の重症~最重症喘息においてACT改善が高く認められ、その効果に対しては喘息重症度が寄与していた。 SACRA質問票で6割以上の症例が鼻炎を合併し鼻炎と喘息のVASが相関することから、 鼻炎が喘息のコントロールに悪影響を与えること、およびVASは鼻炎と喘息のコントロール評価に有用なことが示唆された。 ACTを基にした喘息コントロール状態は、モストグラフの指標(Fres、X5、ALXおよびR20)やFeNOおよびFEV1、FEV1%、MMFと相関を認めた。血清マーカの検索では、ストレス関連蛋白のheat shock protein(HSP)72の血清中濃度が喘息の増悪時には有意な上昇を示し、喘息の増悪に関連する指標と考えられた。患者背景因子の解析を引き続き行い、喘息増悪との関連性が最も高かったのは前年度の増悪であり、喘息増悪の予知因子として過去の増悪の既往歴は最も重要な客観的評価項目の一つであると考えられた。また、喘息に COPDの併存を示唆する項目として、40歳以上の喘息症例で①BI≧200を必要条件とし、②HRCTにて気腫化を有する(Goddard分類≧1)、③DLco’<80%を挙げて検討すると、気腫化を有するあるいは拡散障害を有する症例として検討すると、男性24.2%、女性12.0%となった。COPD併存症の診断で包括的な管理強化が可能になり、高齢者喘息の予後改善が期待できる。

評価結果

平成24年度

平成24年度評価結果(PDF:75KB)

平成25年度

平成25年度評価結果(PDF:82KB)

このページの先頭へ