ぜん息などの情報館

1-1 小児気管支ぜん息の経年変化および地域差に関する調査研究

代表者:小田嶋 博

研究課題の概要・目的

我々は過去30年の間に、西日本11県、5万5千人~3万5千人の学童を対象とした同一対象、同一方法による、喘息及び他のアレルギー疾患の疫学調査を10年毎に実施してきた。これまでの調査の継続として、過去の調査と同様の同一地域、同一対象校、同一方法での調査を実施し、喘息・アレルギー疾患の動向と変動要因を検討する。
また、従来の学校に加え、旧公害指定地域を中心に新規の学校を対象に加えた調査を行い、これまでの各疾患の有症率との比較検討を行い各疾患の変動を検討するとともに、International Study of Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)調査で報告されているような有症率のプラトー化ないし減少が日本でもみられるかを検討する。

年度ごとの研究目標(計画)

平成23年度

  1. 我々が過去30年の間に10年毎に西日本で行ってきた調査は、調査対象、調査方法が一定しており、今回は10年毎の調査における4回目の調査を行う。喘息及び他のアレルギー疾患の変動の実際を把握し、今後の治療や原因究明、予後対策などに役立てる。
  2. 過去に行った3回の調査におけるデータとの比較検討を開始する。

平成24年度

①経年変化のデータ分析、②地域差の検討の開始、③ATS-DLDとISAAC問診票の比較検討を行う。②に関しては、協力学校での調査を実施する。データの補正を行い、入力分析を行った。また、③の比較検討では背景因子を今回、大気汚染物質として、SOx、NOx、SPMに関しての検討を実施し、背景因子の検討をできる限り行っていくこととする。

2年間の研究成果

平成23年度

今回の調査では、同じアレルギー疾患という観点から、各アレルギー疾患の有症率を検討したが、喘息に関係のあるとされるアレルギー性鼻炎はいまだに直線的に増加していた。また、アトピー性皮膚炎以外のアレルギー疾患は増加していた。福岡では毎年、小学校の調査を実施しており、この中での流れでも、減少傾向が認められていた。今後の各県、また全体の分析結果にもよるが、以上の点から推定されることとしては、アレルギーに関する増悪因子は減少しているとは考えられず、気道過敏性の改善因子があるのか、あるいは増悪因子が減少したのかなど、今後の検討課題が提起されたとも考えられる。

平成24年度

助成対象地域と、助成対象外地域との比較検討では、2項目の例外を除いてほとんど全ての疾患が助成対象地域で有症率が高かった。喘息は有意では無かったが、アレルギー疾患の多くでこの傾向がみられた。また、大気汚染物質は助成対象地域に於いてSOx、NOxは高い値を示した。大気汚染物質濃度とは2012年の調査では有意な関連を示す項目もあった。その他の背景因子との関連は、全体の傾向と同一であった。また、ISAAC問診票はATS-DLDの喘鳴を示しているという結果であった。

評価結果

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