WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

小児ぜん息 成人ぜん息 COPD その他のアレルギーすこやかライフNo.44 2014年10月発行

読者の広場 コラム お答えします! 読者Q&A 聞いてください! ウチのこんなエピソード 教えてください! あなたのしているこんな工夫

コラム

今回は、今号から編集委員に加わっていただいた、亀田京橋クリニック副院長 金子教宏先生のご挨拶とコラムを紹介します。

「息てる?」

金子教宏先生皆様、初めまして、亀田京橋クリニック副院長の金子と申します。医師になって27年、呼吸器内科を中心に診察しております。呼吸器内科の「呼吸器」とは、肺や気管支などを診る所です。肺や気管支の仕事は、酸素を取り込んで二酸化炭素を出しています。人間の体は細胞の集合体ですが、細胞の中のミトコンドリアで酸素を利用し、エネルギーを作り出しています。すなわち、人間の体は酸素で生きている事になります。

「生きてる。」は「息てる。」

昔は、生きている事を「息」と表現していました。万葉集には、「いき」という言葉の表記には、「氣」・「息」・「生」という仮名文字を用いていたようです。また、源氏物語では、「いき」という表記は40個ありますが、「息」が15個、「生き」11個、どちらとも言えない事が14個であったと言う調査もあります。すなわち、昔の人は、「生きてる。」と言う事は「息をしている。」ということを理解していたのだと思います。そういえば、人間が母親のお腹から生まれて、まず、何をするでしょう?「おぎゃーと泣く。」、「心臓を動かす。」心臓は妊娠8週にはきちっと動いています。おぎゃーと泣くには、その前に「息」を吸わなければいけません。まず、人間は生まれて「息」を吸うのです。また、人間が死ぬ時はどうなるか。人間が死ぬ時には、「息」をはき、次の「息」が吸えない状態で亡くなります。人間は、最後に「息」をはいて亡くなるのです。人間は「息」を吸う事から始まり、「息」をはいて亡くなるのです。だから、「生きてる。」は「息」している事なのです。

肺や気管支は、その呼吸の仕事をしている臓器なので非常に重要です。肺は、空気を吸って、酸素を取り込み、二酸化炭素を放出しています。現代は、この空気が問題となっています。PM2.5の報道をよく聞きます。中国が全ての原因の様な報道が多いですが、国内が発生源となっているところも少なくありません。自動車の排ガス・工場からの排出・火山や森林からもPM2.5は発生します。また、室内に目を向けるとタバコの煙(受動喫煙)などが我々の大事な空気を汚染しています。これらにより、我々は様々な病気を引き起こします。COPDはタバコの煙が主な原因ですし、大気汚染はCOPDの急性増悪や気管支ぜん息の発作の原因となります。

そういえば、歌舞伎十八番の有名な演目で勧進帳があります。弁慶が義経を東北に逃がすために様々な苦労をするのですが、関守の富樫が義経一行を発見し、色々な質問をして、正体を見破ろうとするのですが弁慶が必死になって義経を守ります。その問答のなかに、「出て入る息は?」という問答があります。その時、弁慶は「阿吽の二字」と答えています。「阿吽」の「阿」とは、口を開けた状態で発音し、仮名文字の最初の文字です。「阿吽」の「吽」とは、口を閉じた状態で発音し、仮名文字の最後の言葉です。弁慶は、義経を、「生まれてから死ぬまで、命の全てです。」と言う意味で答えたのだと思います。富樫も感動し、見逃しました。その後に有名な「飛び六方」です。

我々は、「息」ています。よく生きるためには、良い空気と良い肺が必要です。その為に、我々は何をすべきでしょう。次の世代の子供たちにきれいな空気を残す義務があるのです。

お答えします! 読者Q&A

本誌に寄せられているぜん息&COPDに関するさまざまな悩みや疑問に、専門医がわかりやすくお答えします。

読者Q&Aコーナーの質問は、アンケートフォームから

Q 子どもが食物アレルギーのためエピペン®を処方されましたが、きちんと打てるかどうか心配です。また、エピペン®の保管方法を教えてください。(5歳保育園児の保護者)

A 大事なことは打つタイミングと打ち方を身につけることです。打つタイミングは5分ごとの決断、エピペン®の手技は日頃の練習です。また、保存する際には光と温度、いたずらに注意してください。

エピペン®を打つ上で、経験者が不安になることの多くは2つ、「打つタイミング」と「打ち方」です。

症状が出たら、すぐに緊急性の高い症状かどうかを5分以内に判断します。人間迷っていると「もう少し、もう少し」と様子をみたくなってしまいます。そうしているうちにタイミングを外しかねません。症状が現れたら本人から目を離さず観察を続け、5分ごとに症状をチェックし、症状に合わせた対応をしましょう。エピペン®には血圧を上げる働きがありますので、副作用は走ったときのように心臓がドキドキしたり、頭痛やめまいなどがある程度です。重大な副作用はありません。勇気をもって打ちましょう。(エピペン®の適応となる緊急性の高い症状については、別添の「基礎用語」をご覧ください。)

基礎用語 【食物アレルギーの「緊急性の高いアレルギー症状」】 (PDF:460KB)

エピペン®の打ち方を身につけるには、日頃から練習です。おすすめしているのは、1週間に1回見るお気に入りのテレビ番組のエンディングを練習の合図にすることです。これで十分に身につきます。

エピペン®を携帯するときに気をつけていただきたいことは、直射日光と温度です。エピペン®は光に当たると薬液が分解され茶色になってしまいます。ポーチなどに入れ、遮光して携帯するようにしましょう。エピペン®は常温保存です。特に真夏に車内にランドセルごと起きっぱなしにしないよう気をつけましょう。外気温を気にして携帯時に保冷剤や保温剤を使ったり、冷蔵庫に保管したりするなどということも避けましょう。

また、子どものいたずらにも気をつけてください。幼児に「これはダメ」と言うだけでは、かえって興味が高まり、隠れて母のかばんからエピペン®を取り出し自分の指に刺してしまったという事故もあります。しっかりと本人にわかるように説明するか、興味を持たせないように扱うか判断し、中途半端な対応をさけてください。また、具合が悪かったら「すぐに大人に言いなさい」というような抽象的な説明ではなく「『先生、食べたら変になった』とすぐ言いなさい」と台詞で教えておくことが大事です。

東京都立小児総合医療センター看護部/小児アレルギーエデュケーター 益子育代先生


Q 小児ぜん息が大人になってから再発することはあるのでしょうか?(42歳・男性)

A 小児ぜん息がある子どもは成人ぜん息に移行する可能性もあり、症状が良くなっても環境因子などが加わると、成人になってぜん息を発症しやすくなります。

小児ぜん息の多くは2歳から6歳で発症するといわれています。そのうち、約3分の1はそのまま成人ぜん息に移行するといわれており、残りの3分の2は一時症状が寛解(かんかい)します。これを「アウトグロー」といいますが、まだ詳細については不明な点も多いのが現状です。また、一時的に思春期の頃に症状が無くなっても、約半数は成人ぜん息を発症するといわれています。

ぜん息発症の危険因子としては、個人の問題と環境の問題が大きいとされており、個人の問題として、遺伝的な原因・アトピー素因・出生児の低体重などや肥満が関連していると考えられています。すなわち、花粉症やアトピー性皮膚炎、小児ぜん息があったり、両親にぜん息やアレルギーが存在している場合は、小児・成人を問わずにぜん息を発症しやすくなります。その様な人たちに、大気汚染やタバコなどの環境因子が加わるとさらにぜん息を発症しやすくなります。

亀田京橋クリニック副院長 金子教宏先生

Q ぜん息とCOPDを見分ける方法を教えてください。(42歳・男性)

A せきやぜん鳴などの症状が見られ40歳以下であればぜん息の可能性が高く、喫煙者(元喫煙者)で40歳以上、動いたときに息切れやぜん鳴を認める場合はCOPDの可能性が高いと考えられます。ただし、両者が合併していることもあり判断が難しい場合もあります。

ぜん息とCOPDはともに、息を吐くときに気道(空気の通り道)が細くなって、息が吐きにくい病気です。その意味では見分けることが非常に難しい病気です

典型的には、ぜん息は夜間に発作性(突然)に起こるせきやぜん鳴が多く、自然にまたは治療により正常の状態に戻ります。40歳以下で発症することが多く、花粉症やアトピー性皮膚炎・小児ぜん息などを持っている人が多いことが特徴です。

一方COPDはたばこが主な原因で、たばこを吸わない(ほとんど吸ったことがない)人は恐らく発症しません(COPD患者の約5%ぐらい)。発症は40歳以上で多くは高齢者です。せきや息切れなどの症状は、治療によって改善することが難しいのが特徴です。

しかし、ぜん息とCOPDを合併している人(たとえば、ぜん息の人が喫煙している場合など)もおり、学問的に解明されていないことも多く、見分けるのが難しい例もあります。

亀田京橋クリニック副院長 金子教宏先生


聞いてください! ウチのこんなエピソード

うれしかったこと、楽しかったこと、たいへんだったこと、困っていること、失敗談など、ぜん息やCOPDの治療中に身の回りで起こったさまざまなできごとをみんなで話して、気分をスッキリさせましょう!

エピソードの応募は、アンケートフォームから

野球に打ち込みぜん息が改善(40歳・男性)

子どもがぜん息で大変苦労しています。家の中を清潔にし、子どもにも体力をつけるために水泳と野球を習わせることにしました。野球に打ち込むうちに少しずつ改善されてきています。43号の野村選手の話を読んで子どもも、もっとたくさん練習をして野村選手のようになりたいと話していました。

ぜん息でもスポーツ選手になれるんだ(43歳・女性)

息子は1歳くらいからぜん息と診断されて小2の今もずっと治療中です。インフルエンザにかかったときも発作が出なくてコントロールできていると安心していましたが、台風などが来ると夜の発作がひどくなったり、安心と落胆の繰り返しです。本人はあまり気にしていないようですが、親としては早く良くなってほしいと思います。息子はスポーツが大好きなので「ぜん息児へのエール」を見せ、ぜん息があってもスポーツ選手になれる希望がある、と伝えるとうれしそうでした。


教えてください あなたのしているこんな工夫

ぜん息・COPD治療・管理のために行っている「工夫」をぜひ、教えてください。

私の工夫の投稿は 応募フォームから

11歳・男児からの投稿

毎日ぜん息の薬を飲んでいます。朝と夜、だいたい同じ時間に飲むようにするとくせがつき「今日飲んだっけ?」など薬の飲み忘れに気づくことができるようになりました。

41歳・女性の方からの投稿

朝夕で吸入しており、他の薬も服用しています。毎回、内服薬の服用前に吸入し、コップの水でうがいをしてから、新たに水をくんで内服薬を服用しています。この方法で、内服薬も吸入薬も忘れることはほとんどなくなりました。

私の工夫を応募する

※投稿いただいた内容のすべてが、WEB上に掲載されるわけではありません。あらかじめご了承ください。

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