WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.45 2015年3月発行

小児ぜん息 成人ぜん息 その他のアレルギー医療トピックス:知っておきたい 食物アレルギーの診断と検査の方法

2 血液検査・皮膚試験

血液検査は、血液中の原因食物に対する「抗原特異的IgE 抗体」の量を測定する検査です。ただし、血液検査で食物抗原特異的IgE 抗体が検出されても、食べたときに症状が出なければ食物アレルギーとは診断されず、その食物を除去する必要もありません。診断を確定させるためには、3 食物経口負荷試験を行うことが望ましいとされていますが、場合によっては血液検査の結果で確定することもあります。

また皮膚試験は、血液検査でカバーできない食物が原因として疑われる場合や、野菜や果物が原因食物であると考えられる場合に有用です。

血液検査結果の見方

原因食物ごとに測定値が0~6にクラス分けして表示され、クラスが高いほどアレルギー症状が起きやすいと考えられます。

クラス分けと測定値

クラス
測定値(UA/mL)
6
100<
5
50~99.9
4
17.5~49.9
3
3.5~17.4
2
0.7~3.4
1
0.35~0.69
0
<0.34

結果例

検査項目 クラス 測定値注1(UA/mL)
ランパク 6注2 100以上
ギュウニュウ 3 15.2
コムギ 2 1.24
ダイズ 1 0.38
コメ 0 0.35未満
注1
アレルゲンごとの特異的IgE抗体の量です。
注2
ランパクのクラスが6ですから、鶏卵を食べるとアレルギー症状が起きる可能性が非常に高くなります。

コラム : 実用化が進むアレルゲンコンポーネント検査

食物の中にはさまざまな種類のタンパク質が含まれています。その中でもとくに、アレルギーの原因(アレルゲン)となりやすい特定のタンパク質を「アレルゲンコンポーネント」と呼びます。

この「アレルゲンコンポーネント」に対する特異的IgE 抗体の値を測定する検査を「アレルゲンコンポーネント検査」といい、最近実用化が進んでいます。

「アレルゲンコンポーネント検査」を行うことで、その食物を食べたときに症状が出るかどうかを予測しやすくなり、より正確な食物アレルギー診断の一助となると考えられています。現在は、卵、小麦、牛乳、ピーナッツに対するアレルゲンコンポーネント検査が保険適用されており、今後のさらなる実用化が期待されています。

(さらに詳しくは基礎用語(PDF:273KB) をご覧ください。)

アレルゲンコンポーネント検査の活用例

鶏卵には「オボムコイド」と「オボアルブミン」というタンパク質が含まれており、「オボムコイド」は熱に強く「オボアルブミン」は熱に弱いという特徴があります。

現在、「オボムコイド」に対するアレルゲンコンポーネント検査が行われています。鶏卵に対する特異的IgE 抗体が陽性でも、オボムコイドに対する抗体価が陰性だった場合、加熱した鶏卵であれば、食べることができる可能性が高くなります。

注意:「抗原特異的IgG(アイ・ジー・ジー)抗体検査」には注意しましょう

最近、インターネットや雑誌・新聞で、食物に対する「抗原特異的IgG 抗体検査(遅延型アレルギー検査)」が食物アレルギーの診断に有用であるという情報が多く見られるようになりました。しかし、IgG 抗体は食物アレルギーのない人にも存在する抗体で、上記の血液検査で行われるIgE 抗体検査とは異なります。抗原特異的IgG 抗体検査で「陽性」の食物をすべて除去すると、食物アレルギーの原因ではない食物まで除去することになり、栄養障害や健康被害を招くおそれもあります。日本小児アレルギー学会は“抗原特異的IgG 抗体検査を食物アレルギーの原因食物の診断法として推奨しない”という見解を述べています。また、抗原特異的IgG 抗体検査は保険適用でない高額な検査です。

食物アレルギーの診断を受ける際は、アレルギーに精通した医師に相談し、正しい診断を受けるようにしてください。


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