WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.45 2015年3月発行

COPD現場レポート:COPDの症状を少しでも和らげ在宅の重症患者さんの暮らしを「つくる」

隠れたCOPDを発見し生活の質の低下を防ぐ

訪問呼吸リハビリで、「隠れたCOPD」を発見することもあります(資料2参照)。

同クリニックの訪問呼吸リハビリの対象者は主病名がCOPDの方だけではありません。今や脳卒中やがんなどの重病や、ALS(筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう))といった難病を主病名とする方のほうが多くなっているのです。

主治医からは、そうした重病・難病に伴って低下した呼吸機能や身体機能、嚥下(えんげ)機能注1の改善を目的に訪問呼吸リハビリの依頼が来ますが、中にはCOPDを併発している方も少なくありません。それを予め主治医から伝えられている場合もあれば、スタッフが訪問してはじめてCOPDを見つけることもあるそうです。

たとえば、誤嚥性(ごえんせい)肺炎を起こした脳卒中の患者さんで、主治医からは摂食嚥下リハビリの依頼があったケースです。スタッフが訪問し調べた結果、痰が多いこととヘビースモーカーであることが判明したため、主治医にCOPD 検査の必要性をレポートしました。検査結果は、やはりCOPDで、吸入薬による治療を実施したところ、食べてもせきをしたりむせたりすることがなくなり、普通に食事がとれるようになったそうです。COPDを見逃せば、胃ろう注2が実施され、患者さんのQOLは、大幅に低下したことでしょう。

注1
食物を飲みくだす力のこと。
注2
お腹に小さな穴をあけて、直接胃に栄養を入れる方法。口から食事がとれなかったり、食べてもむせて肺炎を起こしやすい場合に行われる。

資料2 COPDを見逃さないためのポイント

せき・痰・息切れの判断

せきや痰は比較的、呼吸器症状として気づきやすいと思いますが、脳卒中後遺症などの障害があると、見落としてしまう場合もあります。また息切れは、「年のせい」と思ってしまいがちなので注意してください。

せきと「むせ」の判断

食事中の「むせ」は誤嚥に結びつく危険があるので、早急に対応すべきです。
しかし、食事中にせきを繰り返すことを、誤って「むせ」と判断することもよくあります。せきは誤嚥の予防に重要な役割を果たします。ただし、食事中のせきが慢性的になると、これも誤嚥の原因になります。せきと「むせ」の判断が重要です。

要介護度とCOPD重症度とのギャップ

COPDは、重症度が高くても要介護度は低く認定される傾向があります。当クリニックのデータでも、要介護1に認定された方のCOPDは「重症」、要介護2で「最重症」のケースがもっとも多くなっています。そして、これらの患者さんの予後は非常に悪いのです。
ケアマネジャーの関心がCOPDに向いていない場合、訪問呼吸リハビリがケアプランに組み込まれないおそれがあります。ご家族の方も、重症のCOPD患者さんでも、要支援や要介護1に認定されると油断されるようです。特に介護関係者の方には、(COPDとは逆に、要介護度が高く判定される傾向がある)脳血管障害と同様、COPDにも着目していただきたいところです。

訪問呼吸リハビリ現場からのアドバイス2

《重症COPD患者さんの日常生活》
「食事」と「睡眠」に注意を

COPDの重症患者さんが、在宅での療養で注意することは「食事」と「睡眠」です。

入浴や身なりを整える( 洗顔・歯磨き・整髪・爪切り・耳かき・ひげそり等)、着替えといった動作は介護などのサポートを受ければできますが、食事と睡眠は介護を受けても改善しにくいので、ご家族の方は、とくに気をつけましょう。

食事

食事は普通にとっていますが、いまひとつ元気がありません……

どうする?「お腹空いた」と言って食べているかチェックする

食事で注意していただきたいのは、食事量だけではなく、「食欲があるかないか」です。がまんして食べているのと、本当に空腹で食べているのとでは、元気さが違うからです。

たとえ1日2食でも、「お腹が空いた」の一言があれば、本当に食欲があって食べている証拠です。

なかなか食が進まない場合は?

どうする?興味のある食材、料理があれば、多少、偏った食事でも構いません

食が進まない場合は、食事に興味を持っていただくことが何より大切です。

たとえ少量でも高カロリーの食事にする・食事の回数を増やすなどの工夫も必要です。

ご飯ばかり食べておかずは残す。でも食欲はあるから大丈夫かな?

どうする?ご飯(炭水化物)は控えめ、おかず(たんぱく質、脂質)は多めにしてください

COPDの患者さんでは、二酸化炭素を排出する能力が落ちているため、血液中の二酸化炭素の濃度が高くなり、血液が酸性に傾きます。十分なエネルギーを補給し、血液中の二酸化炭素が増えないような食生活が重要です。

三大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)の中で、二酸化炭素を一番生み出すのは、炭水化物です。ご飯など炭水化物を控えめにし、おかずを多くとることで、タンパク質や脂質を中心とする食事内容にしましょう。タンパク質は筋肉をつくることにも役立ちます。

睡眠

夜、あまり眠れないようだけど、昼間に寝ているから安心?

どうする?あくまでも、夜間によく眠れているかに注意してください

リハビリには夜間の睡眠がとても大切です。夜の間に身体が休まらないと日中の活動が制限され、体力が低下してしまうからです。

「日中に眠くなりやすい」「気がつくと寝ている」「夜間に何度も目が覚める」など、睡眠に関する変化が見られた場合は、速やかに主治医の先生に伝えてください。


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