WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

小児ぜん息 その他アレルギーすこやかライフNo.47 2016年3月発行

ERCAレポート

ぜん息予防等に関する出張型講習会

講習会の様子

環境再生保全機構では、「ぜん息予防等に関する出張型講習会」を2015年度から実施しています。小児ぜん息をはじめとするアレルギー疾患が増加傾向にあることを踏まえ、地域の教育機関等注1 で開催される講習会に、専門医およびNPO法人や患者会関係者の講師を派遣する事業で、医学的な立場に加え、患者により近い立場からの講演も行うのが特徴です。今回は、この事業を活用し、2015年11月26日に川崎市立東橘中学校(神奈川県川崎市高津区)で行われた講習会の様子をレポートします。

注1
保育所、幼稚園、学校、学童保育施設、子育て支援センター等

NPO代表者と専門医がそれぞれの立場で講演

園部さんの写真

悩んでいる保護者には専門医の受診を促すよう、参加者に訴える園部さん

川崎市の中学校では、昼食に弁当持参を基本としてきましたが、市議会の決議や市民からの要望により、2017年12月をめどに全校で完全給食とする方針を決定。これを受け東橘中学校では、全市に先がけてこの1月から、試行給食を実施することになりました。

市内の中学校で初めての給食実施であることから、校内における体制づくりやマニュアルの作成などを行い、教職員等の知識・意識を高めるための研修も必要でした。

しかし、同校の富田登子栄養士によれば、「誰に講師を依頼し、どのような形で研修を実施したらよいものかと迷っていた」そうです。そんなとき、川崎市教育委員会中学校給食推進室からこの事業を紹介され、環境再生保全機構に講師の派遣依頼をし、教職員等を対象とした今回の講習会が実現しました。

午後1時過ぎに始まった出張型講習会「アレルギーの基礎知識・学校給食と食物アレルギーの対応」では、まず川崎市教育委員会からの趣旨説明と、NPO法人アレルギーを考える母の会代表理事の園部まり子さんによる講話「家庭と地域でアレルギー児を支えよう」が行われました。

園部さんは、アレルギーの子どもとその保護者をサポートする会の活動から見えてきた課題として、標準治療が普及していないこと、専門医が少ないことを挙げました。学校の体制づくりについては、「担任や養護教諭など特定の職員だけがアレルギー対応をするのではなく、誰でも対応できる体制づくり」の必要性を強調し、給食の誤配を防ぐチェック体制やエピペン® の保管場所を決めておくなど、実際の事例を紹介しました。

最後に参加者へのお願いとして、「子どもの症状が改善しないと悩んでいる保護者には、距離的に多少遠くとも、アレルギーに精通した専門医にかかるよう声をかけてほしい」と述べました。

エピペン® 
食物アレルギーなどによるアナフィラキシー症状(全身性で急性・重度なアレルギー反応)の進行を防ぐためのアドレナリン自己注射薬

続いて国立成育医療研究センター生体防御系内科部アレルギー科医師の山本貴和子先生が講演。気管支ぜん息および食物アレルギーの基礎知識を説明したうえで、文部科学省の「学校給食における食物アレルギー対応指針」に沿った給食対応のあり方を解説しました。エピペン®の使い方の実習も行われ、実践的な講演となりました(詳細はこちらの記事を参照)。

今回は、教職員等のほか委託調理業者も含め37人が参加。1時間半にわたる講演終了後も講師に質問を投げかける参加者の姿も見られ、アレルギー対応に関する現場の熱意が感じられる講習会でした。

保護者の気持ちや医療体制の現状もわかり参考になった

講演を聞いた大津裕一教頭は、こう語ります。「医学的な知識だけでなく、(園部さんの講演で)保護者の気持ちや医療体制の現状もわかり、非常に参考になりました」。

河原明美養護教諭は、「非常にわかりやすい説明で教職員間の知識・意識の差を埋めることができたと思います。『命にかかわる病気』という認識も定着したのでは」と評価します。

藤野優子養護教諭は、「エピペン®の実習を交えたのは実践的で良かった」としながらも、「実際にアナフィラキシーに遭遇したときに落ち着いて行動するには、今後も定期的に研修を実施する必要も感じました」と語ってくれました。

川崎市教育委員会中学校給食推進室担当課長(食育推進)の北村恵子さんは、「完全給食実施に向け、東橘中学校をモデルとして、その取り組みの成果を他校にも周知していきたい」としています。

環境再生保全機構では引き続き、「ぜん息予防等に関する出張型講習会」を行っていきます。お問い合わせは下記連絡先まで。

「ぜん息予防等に関する出張型講習会」についての連絡先
独立行政法人 環境再生保全機構 予防事業部 事業課
電話 044-520-9568 まで
写真2

川崎市教育委員会中学校給食推進室担当課長(食育推進)の北村恵子さん

写真1

右から、川崎市立東橘中学校・教頭の大津裕一さん、栄養士の富田登子さん、養護教諭の河原明美さんと藤野優子さん

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