WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.48 2016年9月発行

小児ぜん息 その他アレルギー現場レポート:熊本地震の教訓から学ぶアレルギー児の災害対策

アレルギー対応を求めることに遠慮

猿渡秀美さん
熊本市北区役所保健こども課技術主幹(管理栄養士)の猿渡秀美さん

木櫛聖子さん
熊本市健康福祉局保健衛生部健康づくり推進課主査の木櫛聖子さん

では、避難所の現場でのアレルギー対応はどうだったのでしょうか。熊本市の例を見てみます。

熊本市では、各区の保健スタッフが避難所を巡回、相談のための電話番号を書いたチラシを配布したり声がけしたりしたものの、アレルギー疾患に関する相談は思いのほか少なかったそうです。その理由として、「ご自身で努力されていたんだろうと思います」と語るのは、北区役所保健こども課技術主幹(管理栄養士)の猿渡秀美さんです。発災直後、とにかく「食べること」に精一杯の人に囲まれる中で、アレルギー対応を申し出ることは、なかなかできない。遠慮があったのではないか――と分析する猿渡さんですが、「食物アレルギーでは誤食は命に関わることだから、保護者の方は、普段から行政や地域の方へ情報発信してほしい。それはぜん息でもアトピー性皮膚炎でも同じです」とも語ります。

これを受けて市健康福祉局保健衛生部健康づくり推進課主査の木櫛聖子さんは、「保護者の方が、いかに声を上げやすい環境をつくるか、チラシだけでなく何らかの工夫が必要かもしれません」と、行政としての反省点を語ってくれました。

写真1
避難所で食事や栄養に関するチラシを掲示板に貼る熊本市北区の管理栄養士

写真2
被災者から相談を受けている熊本市の管理栄養士。アレルギー児の保護者だけでなく、高齢者にも「遠慮」が見られたという
(写真提供:熊本市/ 2点とも)


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