WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.49 2017年3月発行

小児ぜん息 成人ぜん息特集:ぜん息発作の原因を見つけて自分に合った対策を立てよう!

血液検査の結果だけでなく実際に症状が現れるのかを確認しましょう

ぜん息の診療では、血液中のIgE抗体の量を測る血液検査がよく行われます。どんなアレルゲンに対するIgE抗体(抗原特異的IgE抗体)の量が多いのかを調べることで、その人のアレルゲンが何か知ることができます。

血液検査で数値が高ければ、そのアレルゲンに注意する必要があります。しかし、そのアレルゲンにさらされたときに、実際に症状が現れるのかを確認する必要があります。

血液検査の結果からやみくもに対策を実行するのではなく、ぜん息発作の原因を探るチェックリストとその対策のチェックリストのように、どこで・どんな状況で実際に発作が起こってしまうのかを考えて対策を取るほうが、効率よく高い効果が得られる可能性があるのです。

たとえば、ダニに対するIgE抗体の数値が高かったとしても、ぬいぐるみを抱いて寝ても発作が起こらないのであれば、そのぬいぐるみを捨ててしまう必要はありません。じゅうたんのある部屋にいても発作が起こらないのであれば、じゅうたんをフローリングに変える必要はないといえます。

血液検査の数値だけにとらわれるのではなく、実際に発作の起こる状況から、日々の対策を考えていきましょう。

あるぜん息患者さんの事例


父は小児ぜん息だった


母は花粉症


現在高校生の女性


ペットの猫が1匹

小学校低学年のときに、ぜん息の発作を起こして入院。血液検査をしたところ、猫に対する抗原特異的IgE抗体の値がかなり高値でした。当然、ペット対策について相談しましたが、ペットと触れ合っても明らかなアレルギー症状の誘発がなかった。また、家族も本人も動物が大好きで容易にペットを手放すことができないことなどにより、退院の際にペットの飼育は禁止せず、必要以上に接触はしないよう指導し、吸入ステロイド薬と飲み薬を処方して様子をみることにしました。

その後、明らかなぜん息発作はみられず、半年後には吸入ステロイド薬を半減し、さらにその3か月後には、吸入ステロイド薬を中止し飲み薬だけにすることができました。

その5か月後にかぜをひいたことがきっかけで症状が悪化し、再入院となりましたが、退院してからは経過が良好で、吸入ステロイド薬、飲み薬ともに再び量を減らしていくことができました。

現在、ぜん息はもっとも軽い間欠型の状態で、かぜをひいたとき以外は大きな問題もなく、今でも猫と一緒に暮らし、猫カフェにもよく出入りしているそうです。

山口先生のコメント

特殊な事例であり、全員に当てはまるというわけではもちろんありませんが、このように血液検査の数値が高くても、発作の原因になっていない場合もあります。検査結果やさまざまな情報に振り回されず、実際に症状が出るのか出ないのかを含めて、医師に総合的な判断をしてもらい、本人だけでなく周囲の共感が得られるような対策が取れれば、理想的ですね。


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