WEB版すこやかライフ ぜん息&COPD(慢性閉塞性肺疾患)のための生活情報誌

すこやかライフNo.49 2017年3月発行

小児ぜん息 その他アレルギー現場レポート:大阪狭山市の学校給食における食物アレルギー対応

依頼書と指導表の提出が除去食対応の大前提

続いて、「学校生活管理指導表」(以下、指導表)の運用について紹介します。

除去食対応となるのは、「医師により食物アレルギーと診断されていること」と、「アレルゲン(原因食物)が特定されており、医師から指示され食事療法を行っていること」を満たした児童生徒です。

新入生で対応を希望する場合、保護者は、「除去食希望者に対する食物アレルギー調査票」を2月末までに学校に提出、各校で逐次面談を行い、3月末までに終了します。面談には、各校の管理職および給食センターから所長と栄養士等の2人が参加するほか、各校の養護教諭も可能な限り参加します。面談のうえ、保護者は「アレルギー対応食依頼書」(以下、依頼書)と指導表を学校に提出し、学校から決定通知書が送付されてはじめて正式に対応が決定します。すでに除去食対応となっている在校生は、面談は必須ではありませんが、依頼書と指導表は毎年度、必ず提出します。

給食センター・栄養教諭の大月和子さんは、「除去食対応は、保護者の希望だけでは実施できません。依頼書と、医師の診断に基づく指導表の提出が大前提です。このことは、面談時、保護者の方に十分に説明し、ご理解いただいています」と話します。市側の明確な方針の提示と、それを受け入れる保護者の高い意識があるからこそ、指導表もスムーズに運用されているといえそうです。

保護者と学校・消防署・給食センターが一体で取り組む

寺本芳之さん
教育委員会事務局教育部 学校給食グループ課長/市立学校給食センター所長の寺本芳之さん

教育委員会や各学校の理解・協力という点でも、同市の取り組みは徹底しています。

教育委員会では、教職員を対象とした食物アレルギーに関する研修会を年2回実施しています。また年度初めの除去食の日には、教育委員会の指導主事と給食センターの職員が手分けして各学校を訪問し、除去食が対象の児童生徒の口に届くまでの各段階におけるチェックが適切に行われているかを確認しています。さらに緊急時に迅速に対応できるよう、毎年、学校で作成される「食物アレルギー対象者個票注1」を取りまとめ、消防署へ情報提供する取り組みも行っています。

各学校独自の取り組みについては、給食センター所長の寺本芳之さんが、こう語ります。「校内研修として、教職員を対象にエピペン®の講習を実施する、あるいは、食物アレルギーのある子どもが、友達と一緒に安心して給食を食べることができるように4月に担任が、子どもたちに食物アレルギーについて説明する機会を設ける、といった取り組みを各学校で行っているようです」。

保護者と学校・消防署・給食センターの四者が一体となった取り組み姿勢がうかがえます。


大月さんは、「特別なことはしていません。設備と人員に照らし合わせ、可能な範囲で実施しているだけです」と話しますが、これも冒頭に挙げた「無理な(過度に複雑な)対応は行わない」とする指針に合致するものです。安全・安心を最優先とした着実な取り組みこそが、学校給食での食物アレルギー対応の核心であり、同市の事例はそのことを明確に示しているといえるでしょう。

注1
食物アレルギー対象者個票:食物アレルギーのある児童生徒について、原因食物摂取時の症状や、かかりつけ医の連絡先等を記した資料。保護者の希望により作成する

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