梅雨が明けると暑い夏がやってきます。今回はCOPDやぜん息の患者さんと、その家族の方が、熱中症予防において注意しなければならない点を中心に、大阪府結核予防会大阪複十字病院副院長の松本智成先生にうかがいました。
暑さ指数を活用し 特に注意が必要な方は暑さ指数で1段階上の基準に従いましょう。
大阪府結核予防会大阪複十字病院副院長
松本智成 先生
熱中症に特に注意が必要な人は、乳幼児、高齢者、肥満の人、高血圧や心疾患、COPDなど基礎疾患のある人とされています。このほかにも、二日酔いや睡眠不足など体調不良の場合や、仕事や運動で無理をして頑張ってしまう傾向のある人、発汗を抑制する抗コリン作用のある薬を服用している方も注意が必要です。
熱中症の危険度を示す目安として、湿度、日射などの周辺の環境、気温などから算出する暑さ指数(WBGT)があります。危険、厳重警戒、警戒、注意、ほぼ安全の5段階に分かれます(図)。環境省の熱中症予防サイト(別ウィンドウで開きます) )では、暑さ指数の予測値に基づき、天気予報のように前日17時と当日5時の1日2回、「熱中症警戒アラート」を発表しています。大切な点は、熱中症に特に注意が必要な人は、5段階の基準で1段階の上の基準に従って対応することです。
高齢者の熱中症は室内でも多発しています。卓上や壁掛けで使える室内用の暑さ指数計が市販されています。これを使って部屋の中の暑さ指数を計り、暑さを感じなくても指数を基準に対策をとることも有効です。
COPDの方は他の疾患をもっていたり、高齢の方も多く、熱中症には特に注意が必要です。しかし、熱中症を警戒しすぎて、運動不足になってしまうことはよくありません。外での運動に気が進まない人は、自宅などで少しずつ運動量を増やしてください。特に高齢の方はずっと座ったままでいるのではなく、立ち上がったり体操をするなど体を動かす工夫をしてみましょう。COPDの症状は個人で違い、目標にする運動量も一人一人違います。熱中症を避けながら運動を続ける方法について、主治医の先生と相談するのもよいでしょう。
暑い夏には食欲が落ちがちですが、体を動かすことでお腹もすきます。息切れがあると運動に支障が出やすいので、いつも以上に服薬管理をしっかりして、運動ができる体をつくり、よく動き、よく食べ、よく眠ることを心がけてください。
一方、ぜん息の総合的な治療目標は、ぜん息でない人と変わらない日常生活を送ることです。症状がきちんとコントロールされていれば、治療薬の服用と吸入が普通の人との違いといえ、ぜん息の方が熱中症予防において、特に注意することはないといえます。暑さ指数を基準に行動しましょう。
ただ、今年の夏は新型コロナウイルス感染症が流行しており、日常の体調管理がとても大切になります。ぜん息治療薬の正しい服用と日常の体調管理、観察記録を徹底することは、熱中症予防だけでなく新型コロナウイルス感染症対策としても有効なはずです。
患者の家族や周囲の方は、新型コロナウイルス感染症予防も考えて、患者さんと適切なソーシャルディスタンスを保ったうえ、患者さんが、涼しい服装、涼しい環境で過ごし、涼しい時間帯に活動できることと、こまめな水分補給ができるよう気を配ってください。
高齢者の熱中症は半数以上が自宅で発生しています。日常生活のなかで起こり、徐々に進行するため、周囲の人に気づかれにくい特徴があります。さらに、コロナ禍による外出自粛の影響もあり、一人暮らしの方や高齢者の社会的孤立が心配されています。社会的孤立は熱中症の危険因子のひとつとされ、発見を遅らせ重症化させる恐れがあります。家族や知り合いと電話で話したり、メールやSNSなどを使って頻繁に連絡をとり、体調を確認することが大切です。最近では、ウェアラブル電子機器で体調管理や体調異変時の家族への通知も可能になってきています。利用するのもよいでしょう。
最終回となる次回は、熱中症かもしれないと思ったときなど緊急時の対応について、松本先生にうかがいます。
松本智成(まつもと・ともしげ)先生
1993年大阪大医学部医学科卒業。大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター臨床研究部長兼感染症センター長などを経て、2015年から大阪府結核予防会大阪病院診療部長。16年から副院長。日本救急医学会、日本呼吸器学会などのワーキンググループが昨年6月に公表した「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」のメンバーの一人。(大阪府結核予防会大阪病院は7月1日から大阪府結核予防会大阪複十字病院に名前がかわりました)
熱中症に気をつけましょう!②(全3回)
~COPD、ぜん息の方が注意すること~