ついにインフルエンザ(季節性)の流行期到来です。第2回は、重要な予防策の一つである「インフルエンザワクチン」について、ぜん息・COPDをはじめとする呼吸器・アレルギー疾患や感染症にも豊富な知識をもつ昭和大学病院病院長の相良博典先生にお話を伺いました。インフルエンザワクチンに関する正しい知識を得て、接種を検討しましょう。
早すぎず遅すぎず、ワクチンの持続期間を考慮して接種をしましょう。
昭和大学病院 病院長
相良 博典 先生
ワクチンには、ウイルスや細菌などに感染した際の発症確率を下げる効果と、病気になっても重症化を防ぐ効果があります。感染そのものを防げるわけではありません。
私たちの体には、病原体が侵入したとき、その存在をいち早く察知して防御する「免疫」と呼ばれるシステムが備わっています。この仕組みを利用して、あらかじめ特定のウイルスや細菌に対する免疫を作りだすことがワクチンの役目です。
ワクチンの種類には、大きく分けて、病原体の毒性を弱めて病原性をなくしたものを原料とする「生ワクチン」、病原体から感染する力を失わせた(不活化、殺菌)ものを原料とする「不活化ワクチン」などがあり、インフルエンザワクチンは不活化ワクチンです。
インフルエンザワクチンは、約5ヶ月間にわたり一定の効果が持続しますが、その間ずっと強い免疫機能が維持されるわけではありません。
最初に、ワクチン接種をしてから、およそ1~2週間でウイルスに対する免疫ができます。そこから2~3ヶ月間、免疫機能の高い状態が続きますが、徐々にその力は弱まっていきます。ですので、あまり早い時期に接種すると、インフルエンザの蔓延期に免疫力が低くなっていることがあります。
日本の流行のピークは1月頃からですので、例年、10月頃からインフルエンザワクチンの接種が開始されるのはこのためです。
厚労省によると、ワクチン接種の回数は、生後6ヶ月から13歳未満は2回となっています。1回接種後よりも2回接種後の方が、より高い抗体価(血液検査で測定できる抗体の量)の上昇が得られることが報告されています。13歳以上の方は、1回接種を原則としています。ワクチンの添付文書には「13歳以上のものは1回または2回注射」と記載されていますが、健康な成人の方や基礎疾患(慢性疾患)のある方を対象に行われた研究から、1回接種で、2回接種と同等の抗体価の上昇が得られるという報告があります。ただし、基礎疾患(慢性疾患)のある方のうち、著しく免疫が抑制されている状態にあると考えられる方等では、医師が2回接種を必要と判断する場合があります。
インフルエンザは、家庭内で感染が広がることもありますので、ぜん息・COPD患者さんだけでなく、そのご家族もワクチン接種することを推奨します。
ただし、これまでにインフルエンザワクチンの接種で強いアレルギー(アナフィラキシーショック)を起こした人は、接種をすることができません。また、インフルエンザワクチンは鶏卵を用いて培養するため、卵アレルギーの発作を起こしたことがある人も注意が必要です。かならず医師に相談してから接種を検討しましょう。
次回は、インフルエンザと新型コロナウイルスの同時流行・同時感染についてお話しします。
相良 博典(さがら・ひろのり)先生
1993年獨協医科大学大学院医学研究科修了。同大学病院で勤務した後、2013年に昭和大学医学部内科学講座・呼吸器アレルギー内科学部門の主任教授に就任。2017年より同大学病院内科学講座主任、副院長を務め、2020年4月に現職就任。喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸器感染症における豊富な診療経験を持つ。日本呼吸器学会呼吸器専門医。日本アレルギー学会アレルギー専門医。第68回日本アレルギー学会学術大会大会長。
ぜん息、COPD患者さんとインフルエンザ~感染流行に備えて、インフルエンザの基礎知識、ワクチン、新型コロナウイルスとの同時感染リスクについて知っておきましょう~②(全3回)
インフルエンザワクチンには発症確率の低減・重症化防止のW効果があります!