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医師と協力しアレルギー診療の均てん化を目指す新資格「CAI(アレルギー疾患療養指導士)」を知ろう
①新たな資格 CAI(アレルギー疾患療養指導士)とは

アレルギー疾患には、患者さんを中心に、医師や看護師、薬剤師など多職種によるチーム医療で立ち向かう必要があります。その実現のため、近年アレルギー患者さんやご家族をケアするコメディカル(医師を除く医療従事者のこと)スタッフの育成が図られています。

今回は、コメディカルスタッフの育成において2021年度から新たに資格認定されたCAI(アレルギー疾患療養指導士)の紹介と、実際に資格を取得し、現場で活躍されている方のCAIとしての取り組みやエピソードを3回にわけてご紹介します。

1回目は、CAIの創設者で、CAI認定機構理事長の勝沼俊雄先生に、制度の目的や意義、CAIが果たす役割をご説明いただきます。

ポイント!

CAIは、医師と協力し、アレルギー診療の均てん化を目的とした資格です

勝沼 俊雄 先生 一般社団法人日本アレルギー疾患療養指導士
認定機構 理事長
東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科 教授
勝沼 俊雄 先生

2021年度に第一期生が誕生。現在約1050人が全国の医療現場で活躍しています

CAI(Clinical Allergy Instructor)とは、アレルギー疾患療養指導士のことで、ぜん息やアトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎など、多様なアレルギー疾患に関する専門知識を持ち、指導スキルを兼ね備えたコメディカルスタッフです。

資格認定制度は2021年度にスタートし、第一期生は584人、第二期生(2022年度)は223人、第三期生(2023年度)は239人と、現在約1050人のCAIが誕生し、医療現場で活躍しています。

ほかにアレルギー疾患に関わる資格には、すこやかライフ57号でも紹介したPAE(Pediatric Allergy Educator=小児アレルギーエデュケーター)がありますが、ケアの対象は小児です。それに対し、CAIは小児から高齢者までと対象が幅広くなっています。

【参考】PAEに関する記事(別ウィンドウで開きます)

制度創設の主な目的は、アレルギー診療の均てん化

アレルギー診療において、長年課題としてあげられている問題があります。

それは、診療の均てん化(全国どこの地域でも標準以上の診療が受けられるよう格差を是正すること)です。

この均てん化は、2014年に制定された「アレルギー疾患対策基本法」のなかでもうたわれ、国をあげての取り組みではあるものの、10年経った今、残念ながら進んでいるとはいえないのが現状です。

日本アレルギー学会ではこの法律の制定以前から、子どもから大人までさまざまなアレルギー疾患を総合的に診ることのできる医師(トータルアラジスト)の育成に力を注いできました。しかし、全国に多数いるアレルギー疾患患者に対し、アレルギー専門医の数は十分ではなく、さらにその専門医の多くは大都市圏に集中してるといった背景もあり、診療の均てん化を医師だけで実現するには限界がありました。

そこで、アレルギーの専門知識やスキルを有したコメディカルスタッフを増やし、多職種がチーム体制でアレルギー疾患に立ち向かうため、CAI制度の創設を進めることになりました。

医師の治療を補完し、患者や家族から頼られる存在に

では、患者さんやご家族は、CAIをどう活用すればよいでしょうか。

患者さんやご家族のなかには「医者はいつも忙しそうで相談しにくい…」という方もいらっしゃるかと思います。そこで頼ってほしいのが、今回紹介したCAIです。

ぜん息であれば薬の吸入、アトピー性皮膚炎であればスキンケアがきちんとできているかなど、正しい服薬方法の確認をしてもらうことや、アレルゲン回避のための生活面の相談などを親身になって聞いてくれるはずです。

下記URLから、あなたの近くにいるCAIを検索できますので、確認してみてはいかがでしょうか。

【参考】CAI全国マップ(別ウインドウで開きます)

次回は、CAI資格の取得方法や条件についてご紹介いただきます。

勝沼 俊雄(かつぬま・としお)先生

1985年東京慈恵会医科大学卒業。国立小児病院(現 国立成育医療研究センター)アレルギー科、東京慈恵会医科大学小児科などを経て、2010年より東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科教授。2020年一般社団法人日本アレルギー疾患療養指導士認定機構を設立し、理事長に就任。日本小児科学会認定専門医、日本アレルギー学会認定専門医・指導医。