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地球環境基金・要望書の書き方講座3「アウトカムとアウトプットの違い」

提出された要望書を見てみると、アウトカムとアウトプットが混同されていたり、両方アウトプットが記載されていたりすることがよくあります。今回はアウトプットとアウトカムの違いについて、説明したいと思います。ここでは、よりイメージしやすくするため、アウトカム指標、アウトプット指標を用いて考えてみたいと思います。

分野 目的 アウトカム指標
(実現量、実現度)
アウトプット指標
(実施量、活動量)
活動
自然保護・保全・復元 在来種保護 在来種個体数の増加 実施回数、駆除数 外来種の駆除
森林保全・緑化 針広混交林の再生 再生された面積の増加 実施回数、実施面積 間伐、除伐
地球温暖化防止 民生部門のCO2の削減 省エネに取り組む人の増加

削減したCO2の増加
実施回数、参加人数 省エネ教室
循環型社会形成 廃棄物発生抑制 再利用品の市場比率の増加

抑制できた廃棄物量
製作数、流通量 再利用品の製作

表をご覧ください。例えば、在来種の保護が目的で、外来種の駆除の活動をしたとします。アウトプット指標は、「どれくらいやるか」ですので、実施量、活動量と言い換えることができます。この場合は、実施回数とか駆除数というのがアウトプットに当たります。

一方、アウトカム指標は、「何がどうなったら成功したと言えるか」ですので、「在来種の個体数が増加」したと言えれば、在来種が保護された、つまり成功したと言えると思われます。

このように、アウトプットは活動から見てどれくらいやったかの量を、アウトカムは目的から、どう変化したかの量を書いていただくとわかりやすいものになります。

続いて、民生部門のCO2削減を目的として、省エネ教室をやる場合はどうでしょう。アウトプットは、実施量ですので、実施回数や参加人数となります。一方アウトカムは、実現量ですので、削減したCO2が増加すれば、民生部門でCO2の削減が成功したと言えるでしょう。

ここで考えていただきたいのが、アウトカムとアウトプットの整合性です。省エネ教室をどれくらいやったら、削減するCO2の量が増加するかというのは良くわからないですし、論理的に直接的につながらないということがわかるかと思います。

こうした場合は、アウトカム指標をもうひとつ追加すれば、わかりやすくなる場合があります。例えば、省エネに取り組む人が増加すれば、削減するCO2が増加するとなり、論理がつながることになります。このように、直接的にアウトプットがアウトカムにつながらない場合は、もうひとつ間にアウトカムを追加していただくべきだと思います。

なお、普及啓発や人材育成、政策提言といった活動は、直接的に環境に働きかけるものではありません。このため、間接的に働きかけることによって、他の人が実践してくれたり、政策として実行されたりして、はじめてアウトカムが達成されるものだと言うことがわかります。その意味で、直接的な働きかけを行う実践活動よりも、普及啓発のように活動がアウトカムから少し距離があるため、成果が出るまで時間もかかるということもわかるかと思います。

このため、間接的な活動というのは、誰に働きかけるか、どれくらい働きかけるかがアウトカムにつなげていくために大変重要となりますので、ターゲットをよく団体内で話し合っていただきたいと思います。

アウトカム指標についてもう少し考えるために例を変えてみましょう。

目標に「A川がきれいになる」という目標を掲げたとしましょう。

川がきれいになるということは、みんなかでが良いことだと思うことでしょう。でもどれくらいきれいになればみんなが「川がきれいになった」と思うのでしょうか。

ある人は環境基準が達成されればきれいになったと思っているかもしれませんし、ある人は昔たくさんいた絶滅危惧種の水生生物がA川に戻ってきたら、きれいになったと思うかもしれません。

こうしてきれいになったと何をもって言うか、言えるのかその基準を統一するために使うのが、アウトカム指標です。この指標がどれくらいのレベルになったら、川がきれいになったということにしましょうとみんなが思うレベルを合意することが重要となります。団体の中で何を指標とするか、目標値とするか決めることが、団体内でプロジェクトに対する意思統一を図るためにとても有効となるからです。目標がわかれば、自分たちのプロジェクトが今どの程度のレベルまで達成しているのか確認することができます。

また、指標は団体内にとどまらす、プロジェクトに関わる利害関係者とプロジェクトを始める前に合意しておくことが望ましいものです。

なぜなら、プロジェクトを支援してくれる人も団体が何を達成しようとしているのか、指標を通じて同じ、川がきれいになるレベルを共有することができるからです。

地球環境基金では、「事前目標共有」として、プロジェクトを始める前の内定団体説明会の場において指標について、内定した団体様と合意を図るよう試みています。

ここまで3回にわたって、要望書の書き方について考えてきました。要望書には、やりたいことを書くというよりも、何を実現したいのかということもあわせて考えていただくことがとても大事です。「本当に手段として自然観察会でいいのですか?」ということを再考してみてください。それから、どれくらいやるかによって実現できることも、目標も変わってきます。「本当に3回で実現できるのですか?」ということです。

こうした論理の不整合を回避するために、何を実現したいのか、団体内でよく話し合って、合意していただきたいと思います。ワークシートを使って試してみたら、実は団体内で目指していることが違うといったことが発覚するかもしれません。

また、自分たちで活動できる量は限られています。自分たちだけで実現できない場合は、他の団体と連携して活動に取り組むことも考えてはいかがでしょうか。

要望書の書き方講座をお読みいただき、ありがとうございました。少しでもよい要望書を書いていただけるよう、ご活用いただければ幸いです。

<おわり>

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