記録で見る大気汚染と裁判

西淀川大気汚染公害裁判

裁判

裁判では、多数の書面が裁判所に提出または記録されます。双方の主張であったり、証拠書類であったり、証言を書きとめた記録だったり、判決文だったりします。 これらの記録を見ることで、裁判の内容がわかりやすくなります。
個人情報保護のため、被害者である原告の訴えなどは掲載していません。現物を見たい方は資料を所蔵している西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)にお問い合わせください

訴状

訴状とは、裁判所に民事訴訟を起こす時に、訴える人である原告が裁判所に提出する、訴えの内容について述べた文書のことです。
公害裁判の訴状には、訴えられる対象となった大気汚染の原因をつくった組織(工場、道路など)と、被害を受けた原告が特定されています。なぜ原告が裁判を起こさなければならなかったのか、原告が求めるものが何かを簡潔に記しています。

西淀川公害訴訟では、
・汚染物質を環境基準以下にすること(排出差止)
・公害患者への損害賠償
を求めて、公害患者が工場10社と国・阪神高速道路公団を訴えています

1次訴訟訴状

2次訴訟訴状

3次訴訟訴状

4次訴訟訴状

準備書面

日本の民事訴訟で、双方の当事者または訴訟代理人が公開法廷における裁判官 の面前で、被告と原告が意見や主張を述べることを口頭弁論といいます。この口 頭弁論は、事前に書面で準備しなければなりません。それが準備書面です。 準備書面を読むと被害者の視点と汚染者の理屈がわかります。 気象 疫学 関連共同性
被害 道路 歴史
西淀川公害訴訟では、上記6つの論点で議論しました。

証人調書

証人とは裁判所に対し、自己の経験から知ることのできた事実を述べる第3者のことです。原告側と被告側の証人がいます。
西淀川公害訴訟では、原告側は学者や医者、被告側は企業の社員などが証言台にたちました。証人調書とは証言台で話した内容を裁判所が記録した筆記録です。
証人調書は論理だけでなく証人の人間味を伝える、読んでおもしろい資料です。

書証

書証とは事実を証明する証拠となる文書を裁判所が見て調べる方法をいいます。実務上、文書そのものも書証といいます。
西淀川公害裁判では、研究論文や調査報告書、日記、新聞記事、地図、生産工程表、統計データなど多数の書証がありますが、ここでは工場からの煙の流れを見せるために原告側が提出した大気汚染の写真を紹介します。

1961年3月29日 尼崎の上空から大阪方面を撮影
1961年3月29日 尼崎の上空から大阪方面を撮影。尼崎の工場群(火力発電所など)から煙が出ている様子がわかります。

判決

裁判所が判決を下した理由・事実・判決主文などが書かれています。 西淀川公害裁判の場合は、1次地裁判決、2~4次地裁判決の2種類あります。1次判決では工場の公害責任が認められますが、道路の公害は認められません。2~4次地裁判決で、道路の公害責任が認められました。道路公害による健康被害が認められた全国初の判決です。 資料をみてみよう
『西淀川大気汚染公害裁判(一次)一審判決』 1991.3.29
主文
認容債権一覧表
請求棄却原告目録
第一編
事案の概要
第一章
請求
第二章
事案の概要
第二編
争いのない事実
第一章
当事者
第二章
被告企業の侵害行為
第三章
本件各道路の侵害行為
第四章
西淀川地域の大気汚染
第五章
疫学
第六章
環境行政
第七章
公健法等による補償給付
第八章
主要な争点
第三編
争点に対する判断
第一章
西淀川地域の大気汚染状況と主要汚染源
第二章
西淀川地域の大気汚染と原告らの疾病との因果関係
第三章
共同不法行為
第四章
被告らの責任
第五章
損害賠償請求
第六章
差止め請求
図面・目録・図表・表
※第2分冊の第2章の一部、第5章の一部は個人情報掲載のため削除しています
※第3分冊(原告らの個別的事情)は個人情報掲載のため掲載していません
※第4分冊の一部は個人情報掲載のため削除しています
判決の原文は、西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)にて保存閲覧しています

『西淀川大気汚染公害裁判(二~四次)一審判決』 1995.7.5
主文
事実及び理由
第一部
申立、基礎的事実及び当事者の主張
第一章
申立
第二章
事案の要旨及び主要争点
第三章
基礎的事実
原告らの個別的事情
第二部
争点に対する判断
第一章
西淀川区の大気汚染状況
第二章
主要大気汚染源と排出量
第三章
大気汚染物質の到達
第四章
発症の因果関係
第五章
共同不法行為
第六章
違法性及び責任
第七章
損害賠償請求について
第八章
差止請求について
第九章
結語
第四章
原告らの主張
目録集
第五章
被告らの主張
図表集
※第4分冊の7章の一部は個人情報掲載のため削除しています
※第6分冊(個人票)は個人情報掲載のため掲載していません
判決の原文は、西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)にて保存閲覧しています

和解調書

公害裁判は判決だけでは解決しません。原告と被告が和解することで解決します。
西淀川公害訴訟では、裁判が続けられている最中に、原告と被告の両者が主張を譲歩して、権利関係に関する合意と訴訟終了について合意しました。裁判上で和解が成立した場合は、和解の内容が和解調書に書かれます。和解調書は判決と同一の効力を持っています。
企業との和解調書(2~4次)には、地域再生のために解決金と損害賠償をあわせて33億2千万円支払う、公害防止対策に努力するとあります。(実際に支払われたのは1次原告に対する解決金の6億7千万円を合わせて39億9千万円)
国・道路公団との和解調書には、国道43号の車線削減、微粒粒子状物質(PM2.5)の大気汚染測定の実施、被害者と国・公団とが継続的に協議することとあります。この国・公団との協議は道路連絡会(西淀川地区道路沿道環境に関する連絡会)とよばれ、全国で初めて設置されました。現在も協議が続けられています。


1次和解調書(企業)

1次和解調書(国)

2~4次和解調書(企業)
西淀川公害裁判記録は西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)にて閲覧できます。
個人情報が記載されている資料はWebで公開していません。
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