本文へ移動

インフルエンザとインフルエンザワクチン

インフルエンザは、インフルエンザウイルスの感染によって起きる急性の炎症で、ほかの風邪と違って、咳や痰とともに高熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛などの全身症状が出ます。インフルエンザワクチンを接種すると、インフルエンザにかかりにくくなり、重症化を予防するなどの効果があります。
12歳以下の小児では2回接種が推奨されており、13歳以上は原則1回接種です。厚生労働省はこの冬に備えて、これまでの5年間で最大の成人換算で約6300万人分の供給を予定しています。
ワクチンは、かかりつけ医や地域の医療機関などで受けることができます。しかし、健康保険が適用されないため原則的に、全額自己負担となり、費用は医療機関によって異なります。昨年の全国平均は約3600円でした。市区町村によって公費負担されていたり、独自の助成をしている自治体もあるので、お住まいの市区町村(保健所・保健センター)や医療機関などに問い合わせてください。

新型コロナウイルス感染症と、ぜん息、COPDの関係はどうなっていますか?

ぜん息患者さんは、新型コロナウイルス感染症にかかりにくい可能性があることが、わかってきています。まだ推測の段階ですが、ぜん息患者さんで吸入ステロイド薬(ICS)を服用されている方は、気道の細胞表面にある新型コロナウイルスがヒトの体内に侵入する入口になる部分が少なくなっていることが理由のひとつです。一方、COPDの患者さんは重症化しやすいようです。これらについては、2021年2月末発行予定の「すこやかライフNo.55」で詳しく説明します。

帝京大学 医学部 内科学講座 呼吸器・アレルギー学 教授 長瀬 洋之 先生帝京大学 医学部 内科学講座
呼吸器・アレルギー学 教授 長瀬 洋之 先生

同時流行は怖いですね。ぜん息とCOPDの患者さんと家族に、1番大切な対策は何ですか?

インフルエンザワクチンの接種です。インフルエンザも新型コロナウイルス感染症も初期の症状は発熱で、区別がつきにくいのです。しかし、インフルエンザワクチンを接種しているのに発熱していれば、インフルエンザの可能性は低いと考えられ、新型コロナウイルス感染症の早期診断につながります。診断が早ければ、その分早く治療できるので、重症化のリスクを下げることになるでしょう。また、65歳以上など対象になっている方は、肺炎球菌ワクチンも接種するようにしましょう。

2番目に大切な対策は何ですか?

基本の感染予防策を徹底することです。昨年の冬はインフルエンザの患者さんがとても少ない状況でした。この理由は、新型コロナウイルスの感染予防策として、多くの人が手洗いやうがい、手指消毒の実行、マスクの装着、人混みを避ける(3密回避)ことを徹底したからと考えられています。ぜん息やCOPDの患者さんと、そのご家族は普段から、風邪をひかないよう注意されていると思いますが、これらの感染予防策こそ、新型コロナウイルス感染予防にもインフルエンザ予防にも、極めて有効なのです。

3番目は何でしょうか?

今、受けている治療を継続してください。ぜん息でもCOPDでも、コントロールのよい状態で過ごすことが大切です。新型コロナウイルスの感染を恐れて、医療機関の受診を控える方もいるようですが、正しい感染予防策をとって治療を続けてください。
もともとの病気の状態がよくないときに、新型コロナウイルスに感染すると、より重い症状になりかねません。また、COPDの方は家に閉じこもって身体を動かさないこと自体が、体力の低下につながります。感染予防策をしっかり行い、3密を避けた場所や日常生活の中で身体を動かすよう心がけてください。

3つの大切な対策がよくわかりました

実はもうひとつあります。この機会にぜひ、禁煙をしてください。WHO(世界保健機関)は2020年4月、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクのひとつに喫煙を挙げました。喫煙により、最初にお話しした新型コロナウイルスの入口が増えるということも指摘されています。本人だけでなく、受動喫煙により周囲の人のリスクを高めることにもなりかねません。タバコを吸う方は、ぜひ禁煙をお願いします。