気管支ぜん息は気道の慢性炎症によって気管支が敏感になり、ほこりなどの様々な刺激や感染症などによって咳がひどく出たり、気管支が狭くなって息がしづらくなる、ぜん息発作が出る病気です。ぜん息治療の大事な目標は、発作を起こさずに日常生活を制限なくおくることです。
福岡市立こども病院アレルギー・呼吸器科
手塚純一郎
医師は、患者さんのぜん息の状態に合わせて予防のお薬を調整していきますが、受診したときの状態だけでは判断材料が不足しているため、患者さんに受診するまでの家での様子をうかがいます。しかしながら、受診の際のお話だけでは患者さんがよく覚えていなかったり、限られた診療時間の中でほかに相談したいことがあったりと、十分な情報を得られないことがよくあります。自宅での様子を診療の際に適切に把握するためのツールの1つが「ぜん息日記」です。
ぜん息日記には毎日、その日のぜん息の症状や日常生活の様子、薬の使用状況などを記録していきます。受診の際に医師に見せることで、ぜん息のコントロール状態を的確に判断できるようになり、治療薬の調整が上手くいくようになります。また、患者さん自身でも毎日記録していく中で自分のぜん息がどんなときに悪くなりやすいかなどに気が付くことができ、発作が起こりにくいように生活を見直したりすることにも役立ちます。
ぜん息日記は毎日の記録をすることが重要です。忘れたりなどで記録しないことが多くなると続かなくなりがちです。朝・夕食後など決まったときに記録し、習慣化すると継続しやすくなります。また、受診の際には必ず持参しましょう。受診の直前にぜん息日記を見直して伝えたいことや相談したいことなどを整理しておくと、ぜん息の治療が上手くいくことにもつながります。
気管支は身体の奥にあって目に見えないので、狭くなっているかどうか自分で今の状態を確認することが出来ません。そのため、息が苦しくなって始めて気管支が狭くなっていると気付くことになります。ピークフロー値とはピークフローメーターという機器で測定する、最大努力呼出(力一杯息を吐いた)時の最大呼気流速(吐いた息のスピードの最高値)のことです。ピークフロー値は気管支の狭さを反映する数値で、気管支が狭くなるとピークフロー値が下がり、気管支がひらくとピークフロー値が上がります。吹く力が弱くなるとピークフロー値も下がってしまい気管支の狭さが分からなくなるため、力一杯吹くことが大切です。調子が良いときに気管支の本来の状態(狭くなる前の状態)のピークフロー値である自己最良値を測定しておいて基準とします。
ピークフロー値を毎日測っていると、苦しくなる前に気管支が狭くなっていることに気付くことが出来るので発作が起きる前に薬を使うなどの対応が自宅で自分の判断で出来るようになります。発作が起きたときにも発作の程度の目安になるので、主治医の先生と前もって具体的にピークフロー値が何になったらどうすると決めておくと良いでしょう(アクションプラン作成)。
また、ピークフロー値の変動は気管支の敏感さを反映していると言われています。ピークフロー値の変動が20%以上だと発作が起こりやすいと言われているので、受診までの間に苦しくなるようなぜん息発作が起きていなくても変動が20%を超えている場合は、本当の意味ではぜん息は落ち着いていないと判断できるので、薬の調整のタイミングを見定めることにも役に立ちます。
ピークフロー値の詳しい測り方はこちら(別ウィンドウで開きます)よりご確認頂けます。
ピークフロー値は6歳くらいの子はほとんど測定でき、4, 5歳くらいでも上手に出来るお子さんは測定できます。動画は4歳のお子さんです。台風の時に発作が出ましたが、ピークフロー値は大きく下がらなかったので自宅で対応してひどくならずに済みました。
活用事例の動画(別ウィンドウで開きます)
環境再生保全機構では、小児用のぜん息日記「まいにちげんきノート」を無料配布しています。まいにちげんきノートで日々の身体の状態を記録し、ぜん息の悪化の予防につなげていきましょう。
まいにちげんきノート(別ウィンドウで開きます)