ピークフローメーターという器具を使うと、目に見えない気道の中の炎症の様子を数値で確認することができます。ピークフローの測定値や日々のぜん息の症状などを「ぜん息日記」に記録して、自己管理に役立てていきましょう。
ピークフローとは、力いっぱい息をはき出したときの息の速さ(速度)の最大値のこと。つまり、吐く息の“瞬間最大風速”です。このピークフローの値を測ることで、「なんとなく調子が悪い」ではなく「いつもは300の目盛りまで吹けるのに、今日は200までしか吹けないから気をつけよう」と、数字でぜん息の状態を客観的に知ることができます。医師にとっては治療方針の確認、患者さんにとっては日常管理の指針として役立ちます。
ピークフローの測定には、ピークフローメーターという器具を使います。ピークフローメーターは取り扱いが簡単で、医療保険で認可されています。また、比較的安く市販されています。入手方法は、医師に相談してみましょう。
ピークフローは毎日、朝・(昼)・夜の1日2~3回測定して記録しておくと、ぜん息のコントロール状況をつかむのに効果的です。とくに値が低くなってきたときは、発作のサインと考えられます。そのような場合の対処法について、事前に医師と相談しておきましょう。
ピークフローの記録から読み取れる参考例
朝と夜の値の変動が大きいときは、気管支の状態が不安定と考えられます。
気道の閉塞状態を示すピークフロー値を記録し、その推移を見ていくことで、ぜん息のコントロール状態がわかります。
夜から朝にかけて、値が大きく下がったときは、早めの対処が大切です。
値がとくに下がったときは、発作のサインと考えられます。
ピークフローを1日に複数回測り、1日のうちの変動(日内変動)をみることで、気管支の状態を把握する手がかりとすることができます。日内変動が大きいときは、気管支の状態が不安定で過敏性が高まっていると考えられます。
成人では日内変動率20%以内が管理目標に設定されます。
日内変動率は、次の計算式で求めることができます。
日内変動率(%)=(最高値-最低値)÷最高値×100
1日のピークフローの最高値と最低値を入力して【計算する】をクリックすると、その日の日内変動率を自動的に計算できます。
日内変動が大きい場合は、ぜん息のコントロール状態が悪い証拠です。コントロール状態を確認しましょう。
ピークフローは年齢と身長に関連があります。自分の年齢と身長を標準予測式にあてはめて計算し、ピークフローの標準値(本来どれくらいの値があればよいか)を知ることができます。
以下の項目を入力し、標準値を出してみましょう。ただし適用年齢は、男性15~84歳、女性15~80歳です。
成人ぜん息では「ゾーン管理システム」を自己管理に役立てることができます。
ゾーン管理システムとは、自覚症状とピークフロー値をもとに、発作の危険度を信号の色にならってグリーン・イエロー・レッドの3つのゾーンで表し、どのゾーンにあてはまるかによって、薬の使用や受診などの対処の指針を与えてくれるものです。
以下に示すゾーンはあくまでも目安です。医師と相談して個別に計画を立ててください。
ゾーン管理システムの例
ピークフロー値が自己最良値の80~100%の範囲はグリーンゾーン、50~80%の範囲はイエローゾーン、50%以下の範囲はレッドゾーンを示しています。
記録の1日目から8日目にかけて、グリーンゾーンからイエローゾーンの間を推移していましたが、9日目に大きく低下したため、短時間作用性β2刺激薬の吸入を開始。11日目にには60%近くに下がったため、薬の量を200μgから400μgに増加しました。その後、13日目から15日目にかけて値が大きく上がり、18日目以降はグリーンゾーンの範囲に戻り、安定してきたので、22日目から薬の量を200μgに戻しました。
ぜん息日記は、ぜん息をコントロールしていくうえで、患者さんとその家族、医師にとって、共通の重要な情報源となります。日誌を持って受診すれば、医師は患者さんの日常生活や薬と症状・発作の関連について詳しく把握することができ、患者さん側も心配なこと・相談したいことを忘れずに伝えることができます。「さあ書くぞ」と気負わずに、毎日の習慣にしてしまいましょう。
発作などの症状についてからわかること
毎日の症状や発作の発生状況を記録し、ほかの項目と照らし合わせることで、どのようなときに、どのような症状や発作が起こりやすいか、治療と自己管理の効果が上がっているかどうか、といったことが把握できます。
ピークフロー値からわかること
気道の閉塞状態を示すピークフロー値を記録し、その推移を見ていくことで、ぜん息のコントロール状態がわかります。
薬の使用状況からわかること
日常的な治療管理(薬物療法)がきちんと行われているか、発作時の薬の使用は適切か、薬による治療効果がどう現れてきているか、といったことを医師が把握・評価し、患者さんへのアドバイスに役立てることができます。患者さん側でも、自分が現在使用している薬について、認識を持つことができます。
その他気づいたことからわかること
疑問や心配なことなど、気づいたことをメモしておくことで、受診の際、医師に相談したい内容がわかり、忘れずに伝えることができます。