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天気とぜん息の関係を知っておきましょう②(全3回)
気温の変化とぜん息の関係を理解しましょう

秋や梅雨時といった季節の変わり目は朝晩の寒暖差が大きい時期。こうした気温の変化がぜん息発作を起こすことがあり、『喘息予防・管理ガイドライン 2021』にも、気温や気圧の変化・雷雨などがぜん息の悪化につながると記されています。そこで、国立病院機構三重病院の名誉院長であり、現在、同病院にて特別診療・研究役の藤澤隆夫先生に、気温の変化がもたらすぜん息症状悪化の理由や、対処方法をご紹介いただきます。天気による寒暖差に加えて、冷房による気温差への対処方法についても教えていただきました。

ポイント!

寒暖差に負けない体を作ることが大切

藤澤 隆夫 先生 国立病院機構三重病院 小児科
特別診療・研究役
藤澤 隆夫 先生

気道が敏感なぜん息患者さんは気温の変化に要注意

ぜん息患者さんは、炎症のために気道が敏感になっており、ちょっとした刺激でも発作を起こすことがあります。健康な方なら気にならない程度の気温の変化も、ぜん息患者さんにとっては症状悪化の一因となります。

秋や梅雨の季節は、朝晩の寒暖差が大きいという特徴がありますが、ぜん息発作が一日の中で最も起こりやすいのは、就寝中、とくに明け方であることが分かっています。その理由の一つに、自律神経の働きがあります。自律神経には、体を元気に活動させる交感神経と、リラックスさせる副交感神経があり、起きているときには交感神経が気管支を広げて空気をたくさん取り入れようとします。一方、就寝中はリラックス、つまり副交感神経の働きが強くなって、自然と気管支が狭くなりがちです。ただでさえ発作が起きやすい状態となっているところに、明け方の冷え込みが重なることで、発作につながるものと考えられます。

冷気を急に吸い込まないよう、冷えた室内に入るときにはマスクの着用が有効です

ぜん息のお子さんは、スーパーマーケットの冷凍食品売り場の近くで発作を起こすことがあります。それは、冷たい空気を急に吸い込んで、気道が過敏に反応するためです。同じように暑い屋外から、冷房がよく効いた室内に入ったときなども、症状が悪くなることがあります。たとえば仕事の外回りから会社に戻ったときなどは、ビルの入り口あたりの冷気と暖気が混じったところで少し体を休めてから中に入るなど、ワンクッション置くとよいでしょう。また、電車に乗るとき、あまり冷房が強くない弱冷房車を選ぶのも良いと思います。

コロナ禍の今ですから、多くのぜん息患者の方もマスクを着用していると思いますが、コロナが収束した後も、冷房の良く効いたお店に入るときなどは、マスクをすることをおすすめします。マスクをすることで、気道が気温差の影響を受けにくくなり、湿気も適度に保てます。

とはいえ、いくら気温差が少ないからといって、エアコンが効いた安定した環境の下、ずっと家の中にこもってゲームをしたり、デスクワークばかりし続けるのは、かえって体によくありません。気温の変化は、確かにぜん息発作の一因ですが、屋内に閉じこもってばかりいては、体力が落ち、人間が本来備えている適応能力を下げてしまいます。

現在は、症状を上手にコントロールできる長期管理薬(吸入ステロイド薬等)があるので、主治医と相談しながらお薬をきちんと服用し、外出や、外遊び、運動などを日常的に行い体力をつけることが大切です。運動をすることで交感神経系を活発にすることも良いでしょう。その際、暑い日は熱中症への注意が必要です。

【熱中症に気をつけましょう!②(全3回)~COPD、ぜん息の方が注意すること~】

次回は、気圧の変化とぜん息との関係についてご紹介します。

藤澤 隆夫(ふじさわ・たかお)先生

1980年三重大学医学部卒業。同小児科入局。1986年米国メイヨークリニック留学。国立療養所三重病院(現 国立病院機構三重病院)小児科、同臨床研究部長、同副院長を経て、2015年同院長。2021年、同名誉院長。現在、同病院にて特別診療・研究役。日本アレルギー学会 アレルギー専門医・アレルギー指導医。日本小児科学会 小児科専門医。医学博士。一般社団法人日本小児アレルギー学会 前理事長