梅雨や台風のシーズンは、低気圧の影響で頭痛やめまい、だるさを覚えるなど、体調を崩すことがあり、ぜん息患者さんにとっても気圧の変化は症状悪化につながることがあります。ただし、ぜん息患者さんが訴える体調不良の原因には、「調子が悪いのは当たり前」と考えて薬を中断してしまうような、根本的な服薬に対する意識の問題が潜んでいることもあります。そこで、国立病院機構三重病院の名誉院長であり、現在、同病院にて特別診療・研究役の藤澤隆夫先生に、気圧の変化がもたらすぜん息症状悪化の理由や、対処方法をご紹介いただきながら、最後に今回の連載「天気とぜん息の関係」のポイントを伺います。
「悪天候だから体調が悪いのはしょうがない」ではなく、適切な服薬でより良い状態を目指しましょう
国立病院機構三重病院 小児科
特別診療・研究役
藤澤 隆夫 先生
ぜん息の患者さんは、炎症のため、気道がさまざまな刺激に過敏に反応して、発作を起こしてしまいます。このため、天気が悪化する際の気圧の低下をいち早く感じ取って、症状が悪化することも少なくありません。梅雨時や台風の時期にぜん息症状が悪化するのは、低気圧という刺激の影響が考えられます。
気圧の変化は、天気だけでなく、登山やスキューバダイビング、飛行機での移動などでも起こります。登山は、ゆっくりと上り下りをするので、それによりぜん息症状が悪化することはあまりありませんが、運動という刺激で症状がでることがあります。スキューバダイビングや、飛行機などでは急な気圧の変化が起きますから要注意です。ぜん息症状が不安定な方は、まずは薬で状態をきちんとコントロールしてから、登山、ダイビングを楽しんだり、飛行機を利用してください。
現在web上には複数の「ぜん息天気予報」があって、その日のお天気や降水確率、気温、気圧の変化、それらに伴うぜん息症状の悪化指数などを知ることができます。また、ぜん息の悪化要因は人それぞれなので、自分がどんな天気の時に発作を起こすのか、その日のお天気の記入欄がある「ぜん息日記」を活用すると、「台風が来たときに体調が悪かった」という具合に、天気と症状との関係性を捉えることができるので、とても便利です。
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/archives_17750.html
「ぜん息「日記」(成人用)」は上記URLからダウンロードできます。
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/archives_29820.html
「まいにちげんきノート(小児用ぜん息日記)」は上記URLからダウンロードできます。
ここまで、天気とぜん息について全3回にわたってお話をしてきました。寒暖差や気圧の変化、湿気によるカビやダニの増殖などがぜん息の発作要因となるというお話をしましたが、それだけではありません。様々なアレルゲンをはじめ、風邪、たばこ、環境の変化からくるストレスなどの刺激も原因となりえます。こうした刺激をできるだけ避けることはもちろん大切ですが、すべてを避けることは現実には難しいことです。そのため、ご自身の状態をしっかり把握し、長期管理薬をきちんと継続して服用することで、発作を起こりにくくすることが大切です。
患者さんのなかには、ぜん息は慢性疾患ということもあって「天気が悪くなると調子も悪くなるのはしょうがない」「いつも悪くなるから、薬を服用したって仕方が無い」と考え、薬の服用をやめてしまう方がいらっしゃいます。繰り返しになりますが、ご自身の服薬意識や行動を少し変えてみるだけで、より健康な生活を送ることができるようになります。決してご自身の判断で服薬をやめることなく、症状が出ないように薬を適切に服用することでコントロールをしましょう。
藤澤 隆夫(ふじさわ・たかお)先生
1980年三重大学医学部卒業。同小児科入局。1986年米国メイヨークリニック留学。国立療養所三重病院(現 国立病院機構三重病院)小児科、同臨床研究部長、同副院長を経て、2015年同院長。2021年、同名誉院長。現在、同病院にて特別診療・研究役。日本アレルギー学会 アレルギー専門医・アレルギー指導医。日本小児科学会 小児科専門医。医学博士。一般社団法人日本小児アレルギー学会 前理事長
天気とぜん息の関係を知っておきましょう③