本誌に寄せられているぜん息&COPD に関するさまざまな悩みや疑問に、編集委員の先生方がわかりやすくお答えします。
「寛解」とは完治ではなく「治る途中の状態」のことをいいます。
寛解の意味は、完治あるいは治癒(一般には全快、病気や傷が完全に治った状態)とまではいえないが、病状が治まって一時的に軽くなったり、消えている状態を示す言葉です。まだ治る変化の途中であると覚えてください。
特にぜん息は治ったと思っていても、環境の変化や身体状況によって繰り返してしまう病気です。この治ったと思っている状態を軽快傾向さらに安定して症状が出ないことが続けば寛解と表現しています。この後に薬を使わず症状のない期間が続けば完治あるいは治癒した状態となりますが、この判断には相当の長期観察が必要です。
治療したことにより症状が出なくなっている状態ですから、治っているわけではありません。長期管理薬による治療を継続しながら薬の中止時期を計る時期と受け止めてください。お薬が中止になっても再燃することがあることを理解していてください。
昭和大学 特任教授 田中 一正先生
筋力・体力を維持できるよう、家の中でも体を動かしましょう。
自粛生活によって、外出を避け、家の中で過ごす時間が増えた方も多いかと思います。外出する機会が減ってしまうと、身体活動量が減ります。身体活動量が減ることによって、数日間で筋力・体力は低下してしまうので注意が必要です。筋力・体力の低下は転倒の大きなリスクとなります。また、免疫力低下にもつながります。家の中でも、毎日継続してできる運動を始めましょう。運動は、内容よりも継続することが重要といわれています。毎日のラジオ体操から始めてみるのもよいでしょう。さらに運動が可能な方は、大きく手をふり、散歩をすることをおすすめします。散歩は、全身運動です。散歩をすることによって気分転換ができ、運動効果によって爽快感を得ることもできます。自粛による閉塞的な気分を和らげる効果も期待できます。継続は力なり、毎日できる運動を続けましょう。
関東学院大学 看護学部 准教授
若林 律子先生
編集委員の先生による、
ぜん息やCOPDにまつわるエピソード、
知っておくとためになるお話です。
今回は食べ物の中でも小麦粉の話をします。
小麦粉はパンやうどん、パスタ、ケーキやお好み焼きなどの粉もの、天ぷらなど多くの料理に使われています。
小麦にアレルギーがある人はこれらの食品を避けなければなりませんが、今回は一見小麦は食べても大丈夫なのに、ある条件でアナフィラキシーやぜん息発作を起こす特殊な2ケースをご紹介します。
まずは、自宅でお好み焼きを食べた後にアナフィラキシーを起こした大学生のお話。
この方は、今までお好み焼きを食べてぜん思発作やアナフィラキシーなどを起こしたことはありません。検査でも小麦粉や甲殻類、豚肉などお好み焼きの材料にアレルギーはありませんでした。なんと原因は、小麦粉内のダニ。余った小麦粉の袋の口を密閉しなかったことで、ダニが侵入し繁殖、その小麦粉を摂取したことにより、ダニのアナフィラキシーを起こしたのです。ダニの死酸や糞もアレルギーの原因になります。
小麦粉をはじめ粉類はダニの好物ですから、侵入しないよう密閉し正しく保存しましょう。
また、できるだけ早めに使い切りましょう。
次に、体育での運動時にぜん息発作が起きたり起きなかったりする高校生のお話。
相談を受け検査をしてみると、この方は小麦に対してアレルギーがありましたが、摂取しただけでは症状は出ませんでした。しかし採取した後(一般的には2時間前後)に運動するとぜん息発作が起きるという、食物依存性運動誘発アナフィラキシーでした。
原因物質は小麦や甲殻類が多く、症状は蕁麻疹や呼吸困難、全身性のアナフィラキシー症状(意識消失やショック症状など)が起きます。
アナフィラキシー症状は急激に進行するため、正しい診断が重要です。このケースでは運動の数時間前に何を食べたかなど、症状が出たときの状況を正確に把握することが大切です。
学校では給食の内容を確認しましょう。
今回のケースは特殊ですが、アナフィラキシーはときに命にかかわることもあります。
それぞれが自分の病気の事を理解し、原因物質を取り込まないようにしましょう。
日本呼吸器学会専門医・指導医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医(内科)、日本内科学会認定内科医、日本禁煙学会専門医・指導医、産業医、ICD(インフェクションコントロールドクター)