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衣食住にみるアレルギー対策
新型コロナによるステイホーム
おうち時間を快適にすごすために

新型コロナウイルス感染症の影響によるテレワークの普及や外出自粛で、おうち時間が増えていませんか?おうち時間を快適に過ごすため、どのような点に注意すればよいのでしょうか。シックハウス症候群や化学物質過敏症も含めて考えてみました。

参考:『科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)』、『化学物質過敏症 思いのほか身近な環境問題』、『日本化学工業会報告書』

化学物質過敏症、シックハウス症候群とは

シックハウス症候群、化学物質過敏症、アレルギー疾患は、似ている点もありますが、違うものです。化学物質過敏症はある程度の量の化学物質に曝露され、いったん過敏になると、その後は同じ物質が少量であっても過敏症状を起こします。同じように曝露しても症状が出る人と出ない人もいます。これらの点はアレルギー疾患と似ているといえます。

アレルギー疾患は免疫反応により引き起こされるのに対し、化学物質過敏症は自律神経系への作用が中心で、免疫系や内分泌系も関係しているとされていますが、はっきりしたことはまだわかっていません。また、特定の原因物質から引き起こされる症状も多岐にわたります。

一方、シックハウス症候群は室内環境に由来する健康障害の総称で、単一の疾患を指すものではありません。省エネが進み高気密高断熱の家が増えた1990年代後半以降、住宅の新築や改築工事にともない体調不良を訴える人が増え始め、シックハウス症候群として全国的に問題になりました。

お家にいるときのこんな症状は注意!
  • 頭痛や吐き気
  • 目がチカチカする
  • 皮膚がかゆくなる
  • ノドがイガイガする
  • 疲労感・倦怠感

など

主な原因は、住宅の高気密化で起こる化学物質による空気汚染や、細菌、カビ、ダニなどです。化学物質の例をあげると、家具や建材の合板に使用する接着剤や塗料、防腐剤などに含まれているホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどがあります。これらの原因を取り除けば症状の改善や予防ができるとされています。アレルギー素因は、シックハウス症候群のリスク要因になると考えられています。

主な症状は、室内で目がチカチカする、頭痛がするなどの明確なものから、なんとなく体調が悪い、体がだるいというものまで多岐にわたり、個人差も大きいです。室内では症状が現れるのに家を離れると改善する場合は、シックハウス症候群を疑ってみるのもよいでしょう。一般社団法人シックハウス診断士協会の神田紀男代表理事に、おうち時間を快適に過ごす対策をお聞きし、まとめてみました。

おうち時間を快適に過ごすポイントをチェック!

おうち時間を快適に過ごすポイントをチェック!
  • 1
    止めてはいけない換気システム

    いまの住宅は高気密化、高断熱化により24時間換気システムの設置が義務付けられています。換気はシックハウスの予防の第一歩であり最大のポイントです。止めないようにしましょう。

  • 2
    クリーニング後の注意点

    洋服のドライクリーニングに使用する溶剤は、シックハウス症候群を引き起こす可能性のある化学物質のひとつ。必ずビニールを外し、1~2時間ほど風通しのよいところに干しておきましょう。カビ対策にもなります。

  • 3
    空気の循環を意識して

    換気効率を上げるには、空気の流れを知ることが大切。大型家具や家電は、空気の通り道を妨げないよう壁から少し離して設置しましょう。給気口にはPM2.5をキャッチするフィルターをつけるのもオススメです。

  • 4
    ダニ・カビは要注意

    アレルギーの方にとってアレルゲンとなるダニやカビは、シックハウス症候群にとっても原因のひとつ。室内の湿度調整や、こまめな掃除で対策しましょう。カーテンをあけて日光を取り込むことでも、殺菌や乾燥の効果が期待できます。

  • 5
    ほとんどのエアコンは換気していない

    私たちの生活に欠かせないエアコンのほとんどは、空気を循環しているだけで換気機能がありません。内部のフィルターも、化学物質を除去するものではありませんし、いまは新型コロナウイルスの対策からも、使用と同時に窓開け換気をすることが必要です。

アレルギーとシックハウス症候群との関係は

千葉大学予防医学センターの鈴木規道准教授らの研究グループは2021年、シックハウス症候群予防にむけて、全国の20~70歳の4996人(男性3238人、女性1758人)を対象に、発生に関連する個人の要因や生活スタイルを、自己申告制によりWeb調査をしたところ、シックハウス症候群については、女性や若い人(60代と比べて、特に20代)、アレルギー既往歴がある人、喫煙歴がある人、室内での喫煙、受動喫煙・副流煙を吸い込んでいる人が経験しやすいという可能性が示されました。また、床がカーペット敷きだったり、ホコリを目にする部屋に住んでいる人も経験しやすい傾向がありました。

アレルギー疾患との関係をみると、年齢や性別など他の影響を考慮したうえで、疾患がない人に比べて、ぜん息の疾患歴がある人は1.41倍、食物アレルギーのある人で1.54倍、シックハウス症候群を経験している人が多い可能性について示唆され、今後さらなる検証が期待されています。

引用:国立大学法人千葉大学プレスリリース『「シックハウス症候群」経験しやすい人や環境の特徴を算出 生活スタイルを変えると予防できる可能性』より

一般社団法人 シックハウス診断士協会 代表理事 神田 紀男 さん
一般社団法人 シックハウス診断士協会 代表理事
神田 紀男さん
読者へのメッセージ

高断熱、高気密化により快適な住環境となった現代において、残念ながら化学物質との接触はゼロにすることはできません。ですが、建築基準法によって24時間換気設備の導入や化学物質を使用した建材に対する基準が決められています。さらに、私たち自身が正しい知識を持ち、今回ご紹介した対策などを行うことでシックハウス症候群の発症予防、改善につなげることができます。また、相談窓口を開設している自治体も多いので、お困りの際は問い合わせてみてください。