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コンテンツ すこやかLIVE
ぜん息と向き合うパパ・ママの子育て奮闘記

アレルギーのある子どもと向き合ってきた方の体験談を通し、今、子育て真っ最中の皆さんにさまざまなヒントをお届けする「すこやかLIVE」。第1回は、ぜん息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎のあった2人の子育てに奮闘した栗山真理子さんのお話です。

信頼できる医師との出会いが ぜん息治療の第一歩に

今から40年以上も前の話になりますが、私が子どもの変化に気付いたのは、上の子が2歳半になった頃です。それまで風邪ひとつ引かなかったのが、急に咳が続くようになり、近くのクリニックを受診しました。当時はまだぜん息のガイドラインが整っていなかったこともあり、ぜん息と診断されず、薬を処方されても根本的な解決には至りませんでした。苦しむ子どもを見て、自分を責めることもありました。

転機が訪れたのは、低身長が心配になり大きな病院を紹介された時です。内分泌科の医師のもとへ行くと、「この子はうちの科の病気じゃないかも。低身長以外で何か心配事はない?」と聞かれ、症状をすべて話しました。アレルギー科を勧めてもらい、そこで初めてぜん息の診断を受けました。ちょうどその頃、下の子にも咳が出始め、2人のぜん息治療が始まりました。

アレルギー科の先生から「一緒に治していこうね」と言われた時は、ものすごく安心したことを覚えています。患者が病気を理解して病気に取り組むことを目的とした勉強会なども案内してもらい、積極的に参加しました。発作が起きた時の対応法や、家で親ができることなど治療以外のことを教えてもらったことも、とても助かりました。子どもたちも先生を信頼しきっていました。

治療から1年を過ぎる頃には、毎日のように起きていた発作が、1~2週間に1度になっていきました。ぜん息日誌をつけていたので、1年で目に見えて良くなったことがよくわかりました。ただ、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の症状もあり、気の休まる日はありませんでした。

子どもの意志を尊重するため 親ができることをとにかく考えた

子どもたちは、牛乳、卵、大豆にアレルギーがありました。家での食事は、子どもたちに合わせ、家族全員でできるだけ同じものを食卓に並べました。

学校生活では子どもの意志を尊重し、修学旅行や遠足、運動会などの行事にはすべて参加させました。40年以上前は、学校の対応が十分ではなかったため、子どもの身を守るうえで「親ができることと、学校にしてもらうこと」を学校とたくさん話し合いました。給食は、当時“残さず食べる”という考え方がベースにありましたが、学校と話し合いを重ねて、食物アレルギーについて理解を得ることができました。反対に、学校が望むサポートは行うようにしていました。たとえば修学旅行では、増悪に備えて子どもに内緒で別の旅館で待機していたこともありました。

また、子どもたちには、なぜ治療や検査が必要なのか、どうして薬を飲み続けなければいけないのかをきちんと説明していました。薬を飲んでいないと思う時は「飲んでおくと苦しい思いをしなくて済むと思うから、忘れないようにしようね」と伝えました。できるだけ優しく伝えることを心がけていましたが、今思うと口うるさかったかも知れません。大人になった子どもたちに、当時について「いつも怒っていてごめんね」と話すと「すごく怖かったけど、どうして怒るのか分かっていたから大丈夫だよ」と言ってくれて、とても救われました。

今では、薬の選択肢が増え、治療・管理ガイドラインも整備されています。当時と比べてぜん息や食物アレルギーへの理解も広まり、食品のアレルギー表示もわかりやすくなってきています。教育機関には、学校生活管理指導表が導入され、アレルギーの子どもへの配慮が広がりつつあります。しかし、かつての私がそうだったように、幼稚園や学校生活ではお困りになることも少なくないと思います。そんなときは、園や学校、医療機関に相談したり、このすこやかライフや子どものぜん息ハンドブックなどを通じて、最新のガイドラインに基づいた正しい情報を得るなどして、お子さんに寄り添ってあげて欲しいなと思います。

NPOアレルギー児を支える全国ネット「アラジーポット」代表 栗山 真理子 さん
NPOアレルギー児を支える全国ネット「アラジーポット」代表
栗山 真理子さん

文科省、厚労省などのアレルギー疾患における対策・研究委員会の委員や、東京都のアレルギー疾患検討委員会の委員、また、日本小児アレルギー学会ガイドライン作成委員会の外部委員など、アレルギー児を育てた自身の経験を活かし積極的に活動。現在は、設立から携わっているNPOアレルギー児を支える全国ネット「アラジーポット」の代表を務める。

先生からのコメント
主治医の先生にアドバイスをもらいましょう

病気のことを一緒に考えてくれる親御さんがいるとお子さんも心強いですね。信頼できる主治医の先生から、毎日の生活や学校などの集団生活における注意すべき点のアドバイスをもらうことで、より安心して生活できるようになると思います。

国立病院機構相模原病院 臨床研究センター アレルギー性疾患研究部 食物アレルギー研究室 室長 佐藤 さくら 先生
国立病院機構相模原病院 臨床研究センター アレルギー性疾患研究部 食物アレルギー研究室 室長
佐藤 さくら先生

1999年宮崎医科大学医学部卒業。同年宮崎医科大学小児科勤務。2005年国立病院機構相模原病院臨床研究センター アレルギー性疾患研究室勤務。13年同院病態総合研究部 病因・病態研究室長。21年から現職。