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コンテンツ ERCA レポート
ぜん息に負けない心と体へ
親子で学べる「こどものぜん息水泳教室」

東京都豊島区が行っている「こどものぜん息水泳教室」は、水泳を通して子どもたちの心身を鍛えるとともに、保護者向けにも勉強会や相談会を実施して、日々の健康管理に役立つものとしています。コロナ禍でも工夫を凝らして活動に取り組む現場を訪ねました。

としま ななまる

ぜん息症状の改善を目指し一人一人きめ細かに指導

豊島区の「こどものぜん息水泳教室」は大気汚染による健康被害のうちぜん息症状の機能回復を図るため、小学生を対象として1981年にスタートしました。これまで多くの児童が参加し、現在は年長児から中学3年生までを対象としています。

この水泳教室の目的は、ぜん息に打ち勝つ体力づくりに加えて、子どもたちや保護者がぜん息について主体性を持って学ぶことで、ぜん息をコントロールできるようになることです。

また、同じ病気を持つ子どもの保護者同士のコミュニティーが広がる場にもなっています。さらに、子どもたちがプールで水泳指導を受けているあいだ、保護者は施設の会議室でぜん息の勉強会や医師との個別相談などを受けることができます。ちょっとした悩みなどを気軽に相談できるため、保護者にとっても日頃の不安を解消することができる場になっています。

水泳教室には医師と看護師が常駐しています。開始前に医師が子どもたちを一人ずつ診察して、その日の体調を確認することはもちろん、プールでの指導中も、プールサイドで常に待機しながら万が一の事態に備えています。

指導の内容も子どもたちから好評を得ているとのことです。2022年度の参加児童は26名で、泳力にあわせて5班に分けて、補助員2名を含む計7名のコーチが指導をします。水泳教室というと、泳ぎの速さを競い合うことでクラスが上がっていくというイメージがありますが、この水泳教室では、参加児童が「できるようになりたいと思っていること」や、学校で出された課題などの「取り組みたいこと」をコーチが聞いて、一人一人に合った細やかな指導をすることで、個々に応じた泳力をのばすことを大切にしています。そのため毎年継続して参加を楽しみにしているお子さんや、きょうだいで参加されるお子さんもいるとのことです。

具体的な感染対策
  • 検温(発熱症状の有無)
  • 体育館の一般利用者とは別の受付を用意(密の回避)
  • 広めの待合室(密の回避)
  • 交代制の着替え(密の回避)
  • プール用マスクの導入(飛沫防止)
  • 肺機能測定を中止し、個別相談に変更

できることを模索し続け試行錯誤したコロナ禍

新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年、緊急事態宣言が出されたことで水泳教室は中止を余儀なくされました。

豊島区の職員の皆さんは、水泳教室の代わりにできることはないかと他の自治体の取り組み等を調査しながらアイデアを出し合いました。感染対策に配慮したうえで、屋外で実施できるウオークラリーやラジオ体操、マスクを着用しながら参加できるボルダリング教室なども開催したそうです。

2022年度は、国と東京都から外出自粛等の要請が出されていなかったことから水泳教室の再開を決意。安全に水泳教室を実施するにあたり、職員同士で積極的に感染対策への意見を出し合いました。コーチの提案でプール用のマスクを取り入れたり、密を避けるために施設の一般利用者と受付場所を別に設けたり、児童の待合室を広い会議室にしたりなどコロナ禍でも工夫を凝らした水泳教室が実施されています。

お話を伺った豊島区職員の皆さま
体調チェックやコロナ対策もバッチリ!
楽しく泳いで体力づくり

ぜん息水泳教室の流れ

当日
  • 1
    受付

    参加決定のあった事前申込者を対象に受付を済ませたあと検温を行い、密にならないよう広い会議室に用意されている待合室で指定の座席に座ります。

  • 2
    診察

    医師が1人ずつ診察して体調を確認し、参加可能とされた子どもから着替えに進みます。(体調に不安がある場合は赤いゴムバンドを着用してもらい、水泳中は気を付けて観察するようにします)

  • 3
    水泳教室
    • 泳力に応じて5人程度のグループに分かれ、泳力の高いグループから順番にプールに入って水泳の指導を受けます。
    • 指導中は医師と看護師がプールサイドに待機するなど万全の態勢を整えています。
    • 終了時は泳力の低いグループから先にプールから上がり着替えます。再び医師が診察をして体調を保護者に伝え、帰路についてもらいます。

    コーチの提案で導入したプール用のマスク

保護者には勉強会や個別相談も!

水泳教室中には、医師や保健師、アレルギーエデュケーターによるぜん息の勉強会が開かれています。また、1人20分ほどの時間を取り医師とゆっくり話ができる個別相談は、保護者から非常に好評を得ています。