本文へ移動
コンテンツ 読者の広場

コンテンツ メディカルコラム

知っておくとためになる!編集委員のみなさんにぜん息やCOPDにまつわるお話を伺いました。

今回のテーマ
呼吸器疾患とサルコペニア、フレイル
~日常で取り入れるべき予防方法は~

みなさんは、サルコペニアとフレイルという言葉をご存知ですか。それらは、呼吸器疾患をもつ患者さんにおいて起きやすい合併症といわれており、近年、生活機能障害を招き、健康長寿の妨げになるものとして注目されています。

サルコペニアとフレイルは似ているようで、少し異なります。骨格筋の低下により筋力が低下した状態をサルコペニアと呼びます。一方、加齢による様々な機能低下により、外的なストレスに対する脆弱性が高まっている状態のことをフレイルと呼びます。フレイルには身体的な要因だけでなく、精神的・心理的、社会的な要因も影響します。

それぞれのサインは

呼吸器疾患をもつ患者さんでは、息切れなどによる身体活動量の低下や社会活動の低下、疾患に伴う慢性炎症による身体機能の低下などから健常者に比べ、サルコペニアやフレイルが起きやすい状態にあります。最近、歩く速度が遅くなった、ペットボトルのふたが開けられなくなったなどはサルコペニアのサインになります。さらに、それらに加え、疲れやすい、体重が半年で2~3kg減っているなどはフレイルのサインになりますので、主治医に相談してみましょう。

日常生活に予防方法を取り入れる

日常生活に予防方法を取りこむことによって、サルコペニアとフレイルは予防が可能です。どちらにおいても最も効果的な予防方法は、運動療法、栄養療法といわれています。運動療法では「片脚立ち」と「スクワット」を自分のレベルに合わせて行う「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」を週2、3回日常生活に取り入れてみましょう。

栄養療法では、タンパク質の摂取とビタミンDの摂取が重要とされています。ビタミンDは日光に当たることによって生成されるため、外出することもとても重要です。これらの予防方法は呼吸機能を保つことにも役立ちます。早期から取り組むことが大切ですので明日からとは言わず、今から始めてみませんか。

お話をいただいたのは...
若林 律子 先生 写真
順天堂大学大学院 医療看護学研究科 教授
若林 律子先生

日本呼吸ケア・リハビリテーション学会代議員。専門は慢性呼吸器疾患患者の看護。

コンテンツ 読者Q&A

本誌に寄せられているぜん息&COPDに関するさまざまな悩みや疑問に、編集委員の先生方がわかりやすくお答えします。

  • Q.1
    学校で生徒がぜん息発作を起こした場合の緊急対応について
    (26歳・女性)
    A.1
    緊急度の把握のために「アクションプラン」を活用しましょう。

    学校でぜん息発作が見られたとき、まずは対応の緊急度を把握する必要があります。息苦しくて話しづらい、歩きづらい、顔色が悪い、見た目で明らかにぜーぜーして息を吸うときに喉や肋骨の間がはっきりとへこむ、といった症状が見られる場合には直ちに医療機関を受診する必要があります。場合によっては救急車で搬送してください。明らかにぜーぜーしているけれどもじっとしていれば苦しくはない、会話や食事は可能、という場合には、少し身体を起こし気味にして寝かせるなど楽に息ができるような姿勢にして、保護者に迎えに来てもらい、医療機関を受診するといいでしょう。発作で水分がとられ、痰も出にくくなりますから、こまめな水分補給も大切です。発作が起きたときに使うお薬をあらかじめ持っているお子さんの場合には、服用させてください。

    こういった判断はなかなか難しい場合がありますので、ぜん息のコントロールの状態が悪いと判断したときの対応の方法をまとめた「アクションプラン」をお子さん、保護者と学校側で日頃から共有できると効果的です。どのような症状のときに、どのお薬を使う、といったことが症状の程度別にまとめられております。是非、活用してみてください。

    アクションプランシートはこちら
    (別ウィンドウで開きます)

    国立病院機構 三重病院 臨床研究部長 長尾 みづほ先生
  • Q.2
    COPDの平均的な経過、予後などを時系列で教えてください。
    (65歳・女性)
    A.2
    予後は喫煙を継続しているかどうかによって異なります。

    COPDを発症する患者さんは喫煙者の約15%と言われています。COPDは喫煙が主な原因で起こるため、その予後は喫煙を継続しているかどうかによって異なります。喫煙者の肺機能の低下スピードは、非喫煙者と比較して早いのです。

    重要なことは、喫煙により肺機能が低下しても、禁煙することでその低下スピードは非喫煙者と同様に緩やかになるということです。禁煙により肺機能の若干の改善は見込めるものの、元に戻ることはありませんが、早期発見と治療、継続的管理を行うことで健康な人と同じような生活を送ることは十分可能です。また、残された肺機能を最大限に生かすための運動療法や栄養療法、呼吸リハビリテーションをあわせて行うことも、COPD治療には欠かせません。

    最近、COPDの患者さんで、20歳の頃にはすでに肺機能が低下している人がいるということがわかりました。これは、母体にいる胎児の頃や子供の頃に、家庭内の環境により肺の発育障害が起きているということです。自分の子供たちの肺の成長にも悪影響を与え、将来のCOPDのリスク因子となるのです。

    肺機能の維持のためには、タバコは吸わない、吸わせない、直ちに禁煙させる、これが、COPDの予後をよくする最良の対処法です。

    亀田京橋クリニック 副院長 亀田総合病院 呼吸器内科顧問 兼務 金子 教宏先生
読者の広場へのお便り・投稿をお待ちしています!

「読者の広場」は、皆さんからのお便りを紹介しております。はがき、封書、WEB版すこやかライフのアンケートフォーム等から、お便り・投稿をお待ちしております!