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コンテンツ すこやかLIVE

専門の知識とケアで患者さんに寄り添う日々

アレルギーのある子どもたちと向き合ってきた方々の体験談を通し、日々のケアや暮らしに役立つ貴重なヒントをお届けしている「すこやかLIVE」。第2回は、小児アレルギーエデュケーター(PAE)として長年子どもたちやご家族を支援されている、福岡市立こども病院看護部の田阪祐子さんに話を伺いました。

PAEとは

小児アレルギーエデュケーター(PAE=Pediatric Allergy Educator)

PAEは、気管支ぜん息や食物アレルギー、アトピー性皮膚炎に関する高度な知識と指導技術を持つ専門職です。2009年に一般社団法人日本小児臨床アレルギー学会の認定資格制度として設立され、資格を取得した看護師・薬剤師・管理栄養士が、医療機関や地域でアレルギーの患者や家族に対するケアや指導、アドバイスをしています。

高度な専門知識だけでなくきめ細かなケアや指導を行う専門職

私たち小児アレルギーエデュケーター(PAE)は、アレルギーのある子どもたちやご家族に対し、高度な知識だけでなく、的確できめ細かな教育・指導や支援ができる専門職として2009年に認定資格制度がスタートしました。以来、医師と患者・ご家族の橋渡しや調整の役割も果たしながら、アレルギーに悩む方々が積極的に治療に参加されることを目指し、活動しています。

私がPAEになったきっかけは、看護の仕事を続ける中でぜん息の治療が長期入院から外来に移り変わるのを見て、ライフワークとしてアレルギーを専門にしたいと思うようになったからです。その後、大学院で学び修士論文もアレルギーをテーマとし、2011年にPAEの資格を取得しました。

PAEは、医療の現場で医師の診断の後に指示や依頼を受けて子どもたちやご家族にケア指導を行っており、ぜん息について子どもにも分かりやすく説明したり、吸入器の使い方を指導したりしています。また、現在勤務している地域では、医療従事者や患者とご家族に向けたアレルギー研修なども開催しています。

PAEの資格は自分にとってもメリットが大きく、さまざまな施設の方との情報共有によって引き出しが増え、日々のケアや指導に役立っています。そうしたことも生かし、看護の視点から患者さんについて医師と話をすることで、医師からも「診療時間内では引き出せなかったことを知ることができた」「ケアの質が上がった」などの声もいただいています。

患者さんやご家族の声に耳を傾け共に最善の治療を目指していく

私が勤務する福岡市立こども病院では、外来の患者さんが増えてきたこともあり2021年にアレルギー看護外来を開設しました。私たちPAEも、診療時間の短縮や療養生活の支援に貢献できるよう取り組んでいます。

ぜん息のお子さんを持つ保護者は、特にお子さんが吸入や薬を飲むのを自分でできるようになる移行期に、本人にやる気が出ないといった課題に直面することがあります。PAEとしてはその支援も重要になります。

私が担当した患者さんの中にもそうしたお子さんがおり、吸入や薬が面倒くさいということで、「何か気持ちの変化につながれば」と考え、同じ疾患の仲間が集まる「アレルギーキャンプ」に参加してもらったことがあります。すると、それをきっかけにぜん息の学習会などにも参加するようになりました。「吸入しているのは自分だけじゃないんだ」と知り、親に言われなくても自分で服薬を続けることができるようになりました。

こうしたさまざまな経験から、私がPAEとして大切にしているのが、「これが正しい」といって相手に押し付けないことです。患者さんやご家族の意向に耳を傾け、少しずつ信頼関係を築いていくのが大事です。そうして、最終的には効果的な結果が期待できる治療を目指していきます。そうすることで、お子さんやご家族が理解・納得して治療いただける「アドヒアランス」の向上につながります。

今後に向けては、次世代を担うPAEを育てることが大きな目標です。そのためにPAEとしてのさまざまな事例・経験を共有し、少しでも皆さんの力になりたいと思っています。

具体的な指導例
  • 気管支ぜん息
    吸入器の使い方
  • アトピー性皮膚炎
    スキンケアの方法
  • 食物アレルギー
    除去食の作り方
    エピペン®の使用方法
  • そのほか
    勉強会の開催など

読者へのメッセージ

今、アレルギーの分野でも多くの医療従事者が連携するチーム医療が進んでいます。PAEは誕生からまだ十数年ですが、より良いチーム医療に貢献できるよう自身の研鑽と次世代の育成に取り組み、アレルギー疾患に悩む皆さまの力になれるよう頑張っていきたいと思います。

田阪 祐子 先生 画像
福岡市立こども病院 看護部/小児アレルギーエデュケーター
田阪 祐子先生

1994年社会保険小倉記念病院看護専門学校卒業、同年看護師免許取得。総合病院小児病棟に勤務。2002年北九州市立大学法学部法律学科卒業、2011年長野県看護大学大学院修了。神奈川県立こども医療センター勤務、2011年認定小児アレルギーエデュケーター、2012年小児看護専門看護師取得、2020年より現職。