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オンライン診療について

今こそ、One for all, All for one。まず、すべての国民の皆様が大変な苦労をされていることに心を痛めております。皆さんと力を合わせてこの難局を乗り越えようと思います。そのためには、国民一人一人の協力が必要です。
残念ながら新型コロナウイルス感染症(正式名称はCOVID-19と言います。)はすぐには収束しません。共存しながら新たな生活様式を我々も作らなければいけない状況となりました。そのことを踏まえて、最近注目されているオンライン診療に関して私見を交えて述べたいと思います。

元々、オンライン診療は「情報通信機器を用いた診療」という名で1997年にスタートしている制度です。しかし、2017年の時点ではわずか0.4%の医療機関しか導入されていません。今回の新型コロナウイルス感染症に伴い、オンライン診療が電話でも可能となり、また、初診での診療も可能となり、あっという間に広がりました。しかし、「時限的・特例的な取り扱い」だということを理解しなければなりません。

亀田京橋クリニック 副院長 亀田総合病院 呼吸器内科顧問 兼務 金子 教宏亀田京橋クリニック 副院長
亀田総合病院 呼吸器内科顧問 兼務 金子 教宏

オンライン診療の概要

オンライン診療の最大のメリットは時間と距離の無駄がなくなることです。普段、薬をもらうためには、医療機関に行くまでの時間、受付・診療までの待ち時間、診療時間、会計し処方箋を受け取るまでの時間、薬局に行き薬を受け取るまでの時間、薬局から帰る時間がかかります。これがオンライン診療では、電話をして、医師と会話による診察を受け、処方箋を発行してもらうまでの、10分程度の時間で完了します。

診察料については、通常の対面診察では初診料が288点(2,880円)、再診料は126点(1,260円)、慢性特定疾患管理料は225点(2,250円)となりますが、これがオンライン診療では初診の診察料が214点(2,140円)、再診料は74点(740円)、慢性特定疾患管理料は147点(1,470円)となり、対面診察と比較してオンライン診療は6~7割に減額されます。患者さんにはメリットが大きいですが、医療側としてはメリットがあまりないことが、これまで普及してこなかった原因の一つでもあります。

新型コロナ感染症とオンライン診療

今回、新型コロナウイルス感染症が社会を変えました。医療機関に行くことで感染症にかかる危険があり、通院を控える患者さんが多く見られました。しかし、これでは薬が足りなくなり病状が悪化してしまいます。この問題を解決するためにオンライン診療が「時限的・限定的」に許可されました。大きなポイントは、「初診でも可能」、「電話でも可能」になったことです。

ただ、薬だけを処方することは保険上行っておりません。必ず診察する必要があります。薬によっては処方できる日数は決められていますが、処方は保険で最大90日と決められています。その範囲内であれば処方してもらうことは出来ますので、主治医の先生と相談してください。

オンライン診療を受診される時は、事前に保険証、診察券を準備しておきましょう。確認方法は医療機関によって異なりますので、各医療機関へ確認してください。その他、お薬手帳や他院での検査結果などは基本情報となるので準備しておくことを勧めます。

当院のオンライン診療では、あらかじめ電話で予約を取り、予約時間になったら電話で受け付けし、その時に保険証の確認をします。その後、医師と電話で診療を受けます。問題がなければ処方箋を発行し、次回の予約を取ります。処方箋は薬局にFaxし、患者さんが薬局に取りに行くことにしてもらっています。そのため、患者さんから希望の薬局を聞き、電話番号とFax番号を確認します。処方箋などは通常の保険診療の範囲内で可能です。あくまでも保険診療となります。その後は、薬の受け取り方法を患者さんと薬局とで話し合って決めています。

また、初診でのオンライン診療では、電話での問診だけでは診断の正確性は低下します。当院では、発熱などの急性期疾患に関して、初回のオンライン診療の後、2日後にフォローアップのオンライン診療を予約し、頻回の診察で正確性を担保しようと工夫しています。そして、新型コロナウイルス感染症の可能性が否定されれば、対面診察するようにしています。この方法は、新型コロナウイルス感染症から医療従事者を守ることが目的です。新型コロナウイルス感染症は通常の感冒と区別がつきません。発症時にはウイルスを排出しており、医療機関へ受診することで感染のリスクを高めます。初回からオンライン診療にすることで医療従事者への感染を防ぐことができます。

実際のオンライン診療は医療機関によって異なりますので、予約を取る時に確認してください。

オンライン診療の課題

この制度の問題点の一つは、本人確認が困難であるということです。日本は保険診療の元、全国で同じような医療が受けられる、いわゆる皆保険制度が基本です。電話での会話のみで本人確認を取ることは不可能です。オンライン診療には、医療機関と患者との信頼関係が必要です。通院歴のない病院初診の場合は、信頼関係が確立されていないため危険を伴います。オンライン診療では、聴診などの身体診察や血圧などのバイタルサインといった重要な情報を得ることが出来ないため、特に急性期症状の診察には不向きです。急性期疾患は初期対応を誤ると生命に関わるため、誤診の危険を避ける意味でも、現時点ではオンライン診療の初診の診療は時期尚早と考えます。安定期の時にアクションプランを事前に確認するなどしておきましょう。

また、課題として支払いの問題もあります。当院では、次回来院時に診察料を徴収していますが、医療機関としては会計部分の担保がしづらい事も、本人確認に紐づく課題の一つです。

そのため、当院では通院歴のない初診の方は本人確認が電話では取れないため、オンライン診療は受け付けていません。当院のように初診の方はオンライン診療を受け付けていない医療機関もございます。各医療機関でご確認してください。

また、現在の保険診療では30分以内で到着できるという制約があります。これは、かかりつけ医と患者の連携の重視した国の方針によるものだと考えます。これではせっかくのメリットがなくなってしまいます。

先日香港にいる私の患者さんから、口唇に発疹が出たので見て欲しいと電話があり、添付された写真を見て口唇ヘルペスと考え、薬を処方してもらうように話をしました。これは、友人としてアドバイスしたため保険診療としては取り扱っていない特殊な例ですが、本来はこのようなケースがオンライン診療の最大のメリットだと考えます。そうすれば、専門性の高い疾患に関してはその専門医が遠方にいても診察が可能となります。

今後のオンライン診療について(私見を含めて)

オンライン診療は今後拡大されるべきであると考えます。高血圧など病態が安定している慢性疾患や、地域医療で通院手段などの問題があり定期通院が困難である症例が対象となるのはないでしょうか。前者は都会で忙しく働くビジネスパーソン、後者は地域での高齢者が多いと思います。

オンライン診療の危険性を回避するためには患者・医療者と信頼関係の確保が不可欠なので初診患者は避けるべきでしょう。本人確認や診断向上のため、電話ではなく画像での通信情報手段による診察が必要と考えます。

オンライン診療は大きな可能性を秘めた手段です。メリットを生かすための工夫でデメリットをカバーする努力をすべきだと思います。